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Society of Toxicology 43rd Annual Meeting & TOXEXPO (Baltimore, Maryland, USA ; 3月 21日 〜 25日)参加報告

 

第43回 SOT Annual Meeting参加報告

環境生命医学講座四年 佐藤浩二

 私は3月21日〜25日に米メリーランド州ボルチモアにて開催された第43回Society of Toxicology(SOT)年会に参加してきました。ボルチモアは首都ワシントンDCから約60kmに位置する人口約65万人の都市であり、インナーハーバーという美しく整備された港とカニなどの海産物で有名です。また、ジョンズ・ホプキンス大学などもあり、日本から留学する研究者も少なくありません。
 学会はインナーハーバーからほど近い、ボルチモアコンベンションセンターにて行われました。例年約6000人の科学者が参加するとのことですが、今年もそのくらいの人数が参加しているように見受けられました。2000以上の演題と200以上の企業展示があり、外の寒さとは裏腹に、会場は熱気に包まれていました。
 世界最大の毒性学会というだけあって内容は非常に多岐にわたっており、全てをフォローすることはとても出来ませんでしたが、私たちの研究室が取り組んでいるテーマに関する発表だけを見てみても、大いに参考になりました。
 マイクロアレイを用いたトキシコゲノミクスは、2、3年前に見られたような、発現変化した遺伝子の単なる羅列ではなく、その変化が意味するところを調べたり、創薬における毒性評価などの実際的な利用を志向したりと、研究がレベルアップしているように感じました。マイクロアレイをやってみれば、すぐに生命現象や毒性メカニズムが明らかになるのではないか、という幻想を抱いていた時代はとっくに過ぎ、出てきたデータをいかに解釈していくかに重点が置かれてきていると思います。
 また、私が行っているエピジェネティクスの分野でも、いくつか興味深い発表がありました。そのメカニズムはほとんど明らかになっていませんが、化学物質によってDNAメチル化が変化する、という事実は多く見出されてきており、これからのホットスポットになるであろうことを予感させました。私のポスター発表にも何人かの人に質問をしていただき、とても興味深いというコメントをして下さった方もいました。
 今回この学会に参加して、世界の最新情報に触れることができ、また国際学会で発表するという貴重な経験をすることが出来ました。この経験をこれからの研究に生かしていきたいと思います。

 

Society of Toxicology 43rd annual meeting in Baltimoreに参加して

環境生命医学講座三年 高島杏佳

 2004年3月22-25日に米国Baltimoreにて開かれたSOT 43rd annual meetingに参加してきました。大変大きな学会で、TOXEXPOも同時に開催されていたため大変な参加人数でした。従って企業展示並びに企業サイドの発表が数多く見られ、安全性試験の面から見た毒性や変異原性に関する発表が多かったです。学会に参加することの利点は、普段自分で論文検索しないような分野にも目を通せること、自分の研究が違う分野からどう見えるのかを知ることができること、および様々な人と知り合いになれることだと思っていますが、本学会ではいくつもの口頭発表やポスター発表が同時刻で行われていたため、前者の利点は生かせず、自分があらかじめチェックしていた内容を確認するのが精一杯でした。そのため得た知識もおそらく分野が偏っているとは思いますが、毒性の研究では遺伝子発現の変化を捉えることで影響を評価することが主流になっており、遺伝子発現をDNAアレイ後real-time RT-PCRで確認し、次にWestern blotなどでタンパク発現まで確認するというのが定着してきていました(当たり前とも言えますが…)。なかでも生殖発生毒性の研究は、PCBや農薬類を曝露させる実験または薬剤の安全性試験的な曝露実験が多く、エンドポイントは催奇形性および変異原性の有無、代謝酵素の遺伝子およびタンパクの発現変化などが多かったです。私の研究している植物エストロゲンについては、成獣投与系で乳癌抑制に関する研究が多く、直接的に関係する発表は少なかったものの、作用機序等が参考になりました。また、私が多数引用させて頂いているNIEHSのNewboldらのグループが三演題発表しており、なかでも若手のW. Jeffersonと直接話ができたことは大変嬉しく、勉強になりました。今回のポスター発表は、未熟な点が多いながら、準備に際し先生方の多大な御指導を戴きましたお陰様でStudent travel awardを戴くことができました(写真にあります名札下のオレンジ色のリボンがその印です)。今後の自信へと繋がる良い経験でした。
 Baltimoreという街はあまり治安が良くないため、観光がほとんどできませんでしたが、名産のシーフードを味わうことができました。また当研究室の社会人大学院生のうち二名が参加していたため、彼らとの交流も持つことができ、有意義な旅であったと思います。

 

第43回SOT参加記

環境生命医学講座三年 山崎康司

 2004年の3月21日から25日の5日間にかけて行われたアメリカで最も大きい毒性学会、Society of Toxicology学会(メリーランド州ボルチモア)に参加して来ました。この学会はアメリカの学会ですが、参加者数や企業のブースの数をとっても他の大きな学会に負けないぐらい大きな学会で、毒性の分野で言えば世界で一番大きい学会と言えるのではないのでしょうか。また、その内容ですが薬物・毒物の影響はもちろんのこと、新しい研究方法の開発応用や動物福祉など様々な分野の発表がありました、なかでも学生向けのセッションが活発に行われていることに驚きました。それらの発表が同時並行で行われていたので、すべてを聞くことができずに残念でしたが、その内容と感想についてお話したいと思います。
 毒性の学会ですので、そのほとんどが発癌物質の毒性研究と思いがちですが、基礎的研究から豆などに代表される植物エストロゲンの影響の研究までと幅広い研究成果が発表させていました。特に自分が目を引いたのでダイオキシンやPCBに代表されるダイオキシン類の研究発表でした。ダイオキシン類の影響だけでなく誘導酵素群(チトクロームP450)、受容体(AhR)などを入れると一番の多いセッションだったのではないのでしょうか。これは世界的にもダイオキシン類の影響とそのメカニズムが注目されている証拠の一つかもしれません。また自分が取り組んでいる雄性生殖器については、薬物・毒物の影響だけでなく、精巣において精子の産生や分化、他の因子からの防御に重要な役割を果たすセルトリ細胞のトランスポーターに注目した解析など面白い研究発表がなされていました。それによると精巣には、Organic anion transporterなどの今まで報告されていなかったトランスポーターが発現しているとのことです。
 初めての国際学会ということで、色々と苦労がありましたが、この学会は世界で一番大きな毒性の学会ですので、この分野の流れが分かったような気がしました。今後はこの経験を自分の研究に活かしたいと思います。英語は本当に大切ですね。
 また、ボルチモアはクラブケーキというカニの切り身をハンバーグ状にして焼いたものが有名で私も食べてきました。なかなかのものなので、ボルチモアに行ったさいには話しのネタの一つに食べてはいかがでしょうか。

 

SOT参加のレポート:ポスター発表の形式と最近の遺伝子を用いた網羅的研究について

環境生命医学講座二年 穴原玲子

 今回、SOTの学会では、教授を始めたくさんの方々の助言のおかげで幸運にもトラベルアウォードという賞をいただくことができた。それ故、ポスター発表では恥ずかしくない発表態度と、見に来て頂く方々と、有意義なディスカッションをもてるように、ポスター作成では以下の点に気を配った。
 1.細かい英文にしない
 2.図をできるだけ多く入れる
 3.カラーをふんだんに使う
 4.ポイントで説明ができるように、Figure1枚完結型で作成する
 5.Conclusionをもうけ、簡潔に発表内容を要約する(4行くらい)
(興味のあるタイトルを見て、数行の要約を読み、はじめて内容を確認というパターンが多いと思う)
 当たり前のことだが、コンタクトをとる時は、相手の目を見ながら話すというのも大事だと感じていたので、発表内容の部分的な説明はスラスラ英語が出てくるように事前に検討しました。
 今回、様々な国から参加している研究者のポスターを拝見しながら感じたことを以下にあげると、
 1.ポスターの大きさの企画に見合うような大判の紙1枚に、すべてを入れて貼っているものが、大半を占めていた
 2.人だかりができているポスターは、(内容はもちろん)色の配色が美しく、ぱっと目にとまるようなものだった
 3.文字が少なく、なおかつ大きかった(見やすいフォントだった)
 4.ポスターに関する論文、協力研究の宣伝、ポスター全体を縮小したものを、配っていることが多かった
 5.ポスター前にプレゼンターがいなくても、名刺入れ(あとで質問あり等の)が設置されていた
というように、それぞれ工夫がされていて、今後の自分の発表の参考にしたいものばかりだった。
 また、マイクロアレイやPCR等の分子生物学的な手法で遺伝子を網羅的に解析する研究の、さらなるスピードアップが今回の学会発表、シンポジウム等で目立っていた。つい2年前くらいでは、マイクロアレイなどの技術を用い、多数の遺伝子の増減を観察し、それぞれの遺伝子を大きく分けることが主流だったが、現在、さらに研究レベルはあがり、たとえば、遺伝子のいくつかをピックアップし、それがどうして減るのか?といった機序(pathway)まで詳細に解析を行う方法が主流となっていた。1遺伝子=1現象という簡単なものにおさまることなく、その遺伝子を巡って、さまざまな環境遺伝子が変化し、なおかつそれに影響を与えるという機序の解明こそが、今後のトキシコゲノミクスとしてふさわしいとされ、その解明を迅速に行えるような研究方法が強く望まれていた。
 今回の学会参加によって、研究のレベルが急激にあがっていることを実感し、今後はもっといい内容の研究をしていかねばいけないと強く感じました。スピードと結果ですべてが決まってしまうこの世界に遅れないように、常に目を光らせ、状況を把握していこうと考えています。