1. 生命情報解析学
生命情報解析学は,遺伝子の配列情報を基に,タンパク質・細胞・個体レベルにいたるまでの幅広い生命現象を,計算機の情報処理を利用して取り扱う総合的な研究分野です. 当研究室では,次世代シークエンサー等を用いた遺伝子発現解析手法によるテーラーメイド医療の創生に取り組んでいます. これまでの研究により,DNAマイクロアレイ等によって患者さんの遺伝子発現を解析することで,病気への適切な治療方針を立てることが可能になってきました. 今後も,様々な角度から研究を推進して行きます.


2. 構造生命科学
構造生命科学は,生体高分子(核酸,タンパク質,糖質,脂質)の構造と機能の相関によって織りなされる生命現象を,構造解析技術(X線回折・電子顕微鏡・NMR等)と計算化学の手法を駆使して解明しようとする研究分野です. 当研究室では,コンピュータ・シミュレーション(分子動力学計算・静電的相補性計算・形状相補性計算・量子化学計算)を用いることで,生命現象の解明にアプローチしています. これまでに,細胞運命決定において重要な役割を果たしているNotchシグナルに関する転写活性化機構や真菌の細胞周期調整機構等を明らかにしてきました. 今後も,一つ一つの生命現象をコツコツと解明することにより,"生命とは何か?”という命題に迫って行きます.  


3. 分子標的薬の創生
従来の医薬品開発は,限られた専門家の勘と経験に頼って行われてきた感があります.そのため開発の効率が極めて悪く,一つの医薬品を開発するに当たり,平均15年の期間と約500億円のコストが必要であるといわれています. 当研究室では,コンピュータを使った医療創薬,いわゆるIT創薬により,論理的かつ効率的に医薬品を創出することを目指した取り組みを推進しています.
A. 抗体医薬
  遺伝子の配列情報と構造情報を基に,悪性黒色腫治療用の抗体医薬(IL-10R1の細胞外領域と抗体の不変領域を融合)を創生しました.
B. ペプチド医薬
遺伝子工学的な手法である「ファージディスプレイ法」(in vitro 分子進化法)をコンピュータ上で実行する「in silico 分子進化法」を開発し,脊髄損傷の治療に有用なペプチド医薬を創生しました.
C. 低分子医薬
  大規模高速計算システムを用いたハイスループット・スクリーニングを活用することで,小児癌治療薬として有望な機能制御分子を探索しました.
現在は,“千葉大学オリジナル化合物ライブラリー”に登録されている約500の化合物(平成26年10月現在)に関して,分子標的治療薬としての可能性を検討しています. 今後も,コンピュータ・シミュレーション(分子動力学計算・静電的相補性計算・形状相補性計算・量子化学計算)を駆使することで,新たな分子標的薬の創生に取り組んで行きます.
   


4. 光免疫誘導による非侵襲性医療の創生
より安全・安心な医療技術の実現を目指して,ナノデバイスである医薬品と光デバイスである医療機器を融合したコンビネーションプロダクトを開発すると共に,患者さんのQOL向上に資する治療法の開発を目指した取り組みを推進しています. 既に,ナノデバイスとしてリポソーム製剤に光増感剤であるインドシアニングリーン(ICG)を導入したリポソーム製剤(LP-iDOPE)を構築し,EPR効果(癌組織周辺の未成熟な血管組織から20〜200nmの粒子が漏れる現象)による腫瘍組織への特異的集積を確認すると共に,光デバイスとして近赤外光を発生するLED治療装置を開発しました.今後は,ICGの光吸収特性を利用した光免疫誘導による非侵襲性治療のトランスレーショナルリサーチを推進して行きます.

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