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| 図1:胚性幹細胞(ES細胞) |
再生医療は失われた正常臓器を補充することにより機能を回復させる根治的な治療方法で、医学専門誌のみならず一般向けメディアにも頻繁に取り上げられるようになり、骨、軟骨、歯などでは臨床応用も開始されて広く注目されています。特に、胚性幹細胞(ES細胞)(図1)や多能性幹細胞(図2)
の発見は科学の分野だけではなく社会的にも大きなインパクトを与え、たびたびマスコミで報道されています。循環病態医科学講座ではこのような再生医療を心臓に応用することを目指しています。
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図2:多能性幹細胞 |
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骨格筋、肝臓、皮膚などとは異なり、心臓は心筋梗塞、心筋炎、心筋症などにより傷害が起こると、組織を再生することができないために機能が低下して心不全へと移行します。これは心臓の収縮力の源である心筋細胞が、生後まもなく分裂増殖することができなくなり、心臓は個々の細胞が肥大することにより発育するからです。重症心不全は内科的薬物療法、外科手術、補助循環装置が発達した現代でも3年生存率30%と予後不良です。心臓移植は根治的治療ですが、慢性的なドナ−不足という問題があります。したがって、失われた心筋細胞を補充することにより心機能を回復させる心筋再生医療は、従来の治療方法とは異なる新しい根治的治療法です。 |
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| 図3 |
心筋再生には基本的に2種類の方法が考えられています。ひとつは、外部から心筋細胞への分化が期待される、またはすでに心筋細胞に分化した幹細胞を補充する細胞移植療法と、内在する幹細胞の動員、増殖、分化を誘導する細胞分化誘導療法です(図3)。
分化誘導療法はサイトカイン治療の項で解説されていますので、ここでは細胞移植治療による心筋再生(図4)について解説します。
| 図4 |
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ES細胞 |
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| 図5 |
1998年に樹立されたヒトES細胞はin vitroで心筋細胞に分化することが報告されています1)。私たちは、ヒトに近いサルのES細胞が心筋細胞に分化することを確認しています2)(図5)。しかし、ES細胞には移植に伴う拒絶反応や、残存する未分化な細胞による奇形種が形成される可能性、倫理的な問題が指摘されています。
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骨格筋は旺盛な再生能力と虚血耐性を持っています。2001年、Menasche等が ヒト自家骨格筋細胞移植を完全血行再建不可能な心筋梗塞痂皮部位に移植して以来3)、欧米で臨床試験が行われていて、移植後のNYHA機能分類と駆出率の双方に改善が認められたと報告されています4)。しかし、骨格筋細胞は移植されても心筋には分化しない代用心筋であり、周囲の心筋と電気的結合を形成しないため、心筋収縮への寄与には限界があります。また、致死的不整脈が発症したとの報告もありました。 |
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体性幹細胞 |
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| 図6 |
成人の様々な臓器には体性幹細胞が存在していて、これまでに、骨髄細胞、骨格筋、脂肪、神経、肝臓などに由来する幹細胞の一部がそれぞれ他の組織の細胞に分化することが報告されています5)。私たちは、マウスの骨格筋に由来する幹細胞が新生仔ラット心筋細胞と共培養することにより、その一部が心筋細胞に分化することを報告しました6)(図6)。また、骨髄細胞、脂肪組織由来の細胞の一部が心筋細胞に分化することも報告され、重症虚血性心疾患患者に対する自家骨髄細胞移植治療の臨床試験も開始されています。体性幹細胞は自己の皮膚、骨格筋、骨髄などから採取することが可能であり、幹細胞のまま、あるいは心筋細胞に分化させて移植できれば、拒絶反応や倫理的問題は回避できます。しかし、体性幹細胞は成体内では数が少なく、採取した幹細胞を増殖させることも困難であります。また、心臓に移植した体性幹細胞が心筋細胞に分化する頻度は失われた心筋の収縮力を補うには非常に低頻度であり、虚血性心疾患における骨髄細胞移植の効果は主に血管新生によると考えられています。そこで私たちは、幹細胞を心筋細胞に高率に分化させるためには、分化の
詳細な分子機序と分化を促進する因子を解明する必要があると考え、心臓の幹細胞に注目しました。私たちは、成体マウスの心臓から、下垂体後葉ホルモンであるオキシトシンを作用させることにより、自律拍動する成熟した心筋細胞に分化する心筋幹細胞を世界で初めて同定しました7)(図7)。私たちは、オキシトシンが心筋細胞を心筋細胞に分化させる機序や心筋細胞への分化の過程の詳細を明らかにし、自己の心筋幹細胞を分化誘導する薬物の開発、体性幹細胞を心筋細胞へより高率に分化する方法の確立することをテーマの一つとして研究しています。
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1) |
Thomson JA, Itskovitz-Eldor J, Shapiro SS, et al: Embryonic stem cells lines derived from human balastocysts. Science 282: 1145~1147, 1998. |
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2) |
サルES |
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3) |
Menasche P, Hagege AA, Scorsin M, et al: Myoblast transplantation for heart failure. Lancet 357: 279~280, 2001. |
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4) |
Menasche P, Hagege AA, Vilquin JT, et al: Autologous skeletal myoblast transplantation for severe postinfarction left ventricular dysfunction. J Am Coll Cardiol 41: 1078~83, 2003. |
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5) |
Blau H,Brazelton T, and Weimann J. The Evolving Concept Review of a Stem Cell: Entity or Function? Cell. 105: 829?841, 2001. |
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6) |
Iijima, Y., Nagai, T., Mizukami, M., et al: Beating is necessary for transdifferentiation of skeletal muscle-derived cells into cardiomyocytes. FASEB J. 17: 1361-1363, 2003. |
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7) |
Matsuura K, Nagai, T, Nishigaki N et al. Adult cardiac Sca-1-positive cells differentiate into beating cardiomyocytes. J Biol Chem 279: 11384?11391, 2004 |
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