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留学体験記

サンフランシスコ留学:ジェネンテック研究所
森谷 純治 (基礎研究)

2011年5月より、米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコにあるジェネンテック研究所のNapoleone Ferrara研究室にvisiting scientist(客員研究員)として留学しております。まだ渡米して半年ほどですが、この場をお借りしてこれまでに経験したことや現地での生活についてご紹介させていただきます。

研究室

私は2000年に千葉大学を卒業し、2005年より循環病態医科学教室に大学院生として入学しました。大学院在学中は、小室一成先生、南野徹先生の指導の下、当初より興味を持っていた血管新生の研究をさせていただきました。またそれと同時に千葉大学循環器内科で先進医療として行われている末梢血単核球細胞移植にも関わらせていただき、基礎・臨床ともに多くを学ばせていただきました。大学院卒業後、血管新生についてさらに深く研究したいと考え、幸運にも現在の研究室にて留学する機会を得ました。 ジェネンテック社はアメリカのバイオベンチャー企業のパイオニアとして知られており、血管内皮増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(商品名アバスチン)の開発、販売が特に有名です。血管新生の抑制作用がある同薬剤は、分子標的薬の一つであり、抗癌薬として現在日本でも使用されています。ジェネンテック研究所はその社内にある研究所です。留学というと多くの方は大学等、公的研究機関が留学先となると思いますが、私の所属している場所は完全に民間の企業内の研究所です。Napoleone Ferrara博士は1988年よりこのジェネンテック研究所に所属し、VEGFを世界で初めて同定し、前述のアバスチンの開発にも深く関わった、血管新生の分野では世界的に著名な研究者です。

研究棟と筆者Ferrara研究室では現在、主にアバスチン抵抗性腫瘍に対する新たな治療標的の探索、VEGF非依存性の血管新生メカニズムの解明などの研究が行われています。メンバーはポスドク、シニアリサーチャー含め14人と、比較的大きな研究室です。メンバー一人ひとりが個別の独自のプロジェクトを持っており、プロジェクトの発案・遂行のかなりの部分を任される点が特徴的です。他のアメリカの研究室の多くもそうだと思いますが、特に当研究所は分業が徹底しています。試薬作成部門、細胞部門、動物施設部門など、実験するにあたって必要な部門に細かく分かれており、必要なときに各研究者はその各部門から必要なものを調達できます。さらに日本ではある程度特殊だと思われるような実験系も、サンプルさえ持っていけば担当部門がやってくれます。また、それぞれの部門がそのメンテナンスを一手に担ってくれるので、研究者自身が行う作業は少なくて済みます。 しかし楽なことばかりではありません。例えばマウスなどの実験動物の扱いに関してはかなり規則が厳しく、実験計画や必要な実験動物の数などには十分な論理的根拠が必要です。また侵襲的な処置を行う際は動物愛護の観点から特に慎重なフォローアップと苦痛除去の最大限の努力が求められます。普段はメンテナンスを動物施設の人が行ってくれる分、実験動物に触れる機会は少なくなりますが、その代わりに実験を計画する際に先に述べたことが十分行われていないと、実験を始めることができません。
週に一回、全体のラボミーティングが開かれ、各回一人ずつ持ち回りで自分の研究を1時間程度でプレゼンテーションをします。正直1時間の英語のプレゼンテーションは自分自身にとってストレスであり、自分が担当の際はへとへとでした。しかし私の拙い英語で、しかも専門外(自分の研究は主として循環器系の血管新生ですが、他のメンバーはすべて腫瘍血管新生の研究を専門としています)の発表に対してもメンバーの皆は熱心に耳を傾け、多くの質問や提案をしてくれました。そのことを非常に嬉しく思うと同時に、もっと英語力を身につけ、彼らの疑問によりはっきりと答えられるようになりたいと思いました。また自分以外のメンバーの研究内容の多くは自分の専門外ということもあって、初めて知ることばかりであり、毎日彼らに勉強させてもらっています。新しい事柄を吸収しつつ、自分の研究を少し違った観点から見つめ直すことができるのは貴重な経験と考えています。

生活について

研究所のあるサウスサンフランシスコはサンフランシスコを中心としたベイエリアの一帯にあります。アメリカでありながらこの地域は地中海性気候であり、1年を通して温暖で、夏は涼しく、冬は暖かいとされています。実際今年の夏も涼しく、気温は25度を超えることがほとんどありません。むしろ風が冷たく、長袖で生活することがほとんどです。それに対し日射しはかなり強く、サングラスと帽子が必要です。雨はほとんど降らず、雪とも無縁です。周辺には世界的に有名なスタンフォード大学があるほか、IT関連の企業も非常に多く、先日亡くなったスティーブ・ジョブズ氏がCEOであったアップルを始め、ヤフー・グーグル・インテルといったもはや知らない人はいないであろう会社の本社がひしめいています。また日系企業も多く進出しており、その駐在員や研究者含め、日本人が多く在住している地域でもあります。
そのため、日系のスーパーや100円ショップ(値段は1.5ドルですが)さらには日本の本屋と、生活に必要な日本の商品はほとんど手に入ります。またこの一帯の日本食レストランは数が多いこともさることながら味のレベルも高く、寿司や麺類など日本の味を楽しめます。ここは本当にアメリカなのかと思うほどです。
その一方で、アメリカ西海岸はアメリカならではの見所が数多くあります。世界的な観光地であるサンフランシスコはもはや説明するまでもないかもしれません。ゴールデンゲートブリッジやアルカトラズ島、フィッシャーマンズワーフ、ケーブルカーと急な坂…など挙げればきりがありませんが、非常にエキサイティングかつ美しい街だと思います。また車でゴールデンゲートブリッジを渡ってしばらく走ると、レッドウッドのうっそうとした森やどこまでも続く海岸線を見ることができます。世界遺産で知られるヨセミテ国立公園も近くにあります。大都市と大自然がすぐそばにあるのも、大きな魅力のひとつです。

おわりに

同門の特に比較的若い先生方の中には、基礎・臨床問わず海外留学を希望されている方もいらっしゃるかと思います。私自身は、正直最初から楽しいことばかりというわけではなく、特に最初の数ヶ月は生活のセットアップやら文化の違い、言葉の壁に戸惑うことも多々ありました。しかしそれも徐々に慣れてくるもので、今では私も家族もここでしかできないいろいろなことを毎日体験させてもらっています。海外留学に多少なりとも興味を持っている方は"しないで後悔するよりして後悔(後悔することはないと思いますが)"です。是非チャレンジしてみることをお勧めします。
最後になりましたが、今回の私の留学に際して多大なご助力をいただきました南野徹先生、小室一成先生、小林欣夫教授をはじめ、医局長宮内先生他医局・同門の諸先生方ならびにスタッフの方々に対し、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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