後期研修医の日常(2009年2月)

外来での業務

1.初診の患者さんのアナムネ(予診)をとります。

千葉大学皮膚科の特徴として,人口600万人を抱える千葉全域からあらゆる患者さんが紹介されてきます(実際には,千葉市よりも東京近郊の患者さんは東京の病院への紹介を希望される方が多いのが実情ですが,それでも多くの人々が温暖な気候を誇る房総半島には暮らしています)ので,疾患の偏りがなく,幅広い疾患を診察することができます。

 予診の際には,症状経過の詳細や既往歴などを聞くのみならず,皮疹をよく見て,場合によっては触り,その形態を現症としてカルテに記載します。この作業が皮膚科医として最も重要です。白癬を疑う際には,その場で真菌鏡検を行ない,すぐに診断をつけるとともに,顕鏡で陽性であった症例に対しては培養をとる習慣をつけています。色素性の腫瘍などではダーモスコピーで拡大して観察し,良悪の判断やおおよその診断をする習慣をつけています。患者さん一人ひとりにあまり時間をかけずに効率よくカルテをまとめることも,臨床現場では重要な訓練です。

 自分なりの診断をつけた上で,隣の診察室で初診医がどのように考え診断・治療を行うかを目の当たりにすることが,何よりもとても重要な学習の機会となります。

2.外来処置を行います。

診察医からの指示箋にしたがい,写真の撮影を行う他,液体窒素療法や切開・ガーゼ交換などの処置を行うことも,実際の診療や診断技術を高めることになります。

 診断のついた状態で皮疹を観察し,一目でそれと分かる構図を考え一枚の写真に収めるのは難しい面がありますが,慣れてくればそのままカラーアトラスに使用できるような写真を撮影できる様になります。良い臨床写真を撮る技術は,その疾患で何が重要なサインであるかを見抜くことにつながりますので,その人の臨床力を何よりも物語るのです。何故そこに皮疹があるのか?,何故そこにはないのか? 目の前の皮疹が全て話しかけているのです。

 処置は繰り返し業務として行っているうちにプロとしての技術が自然と身に付きます。慣れない処置は一人で行うことなく,上級医に確認の上で安全に行っています。

3.午後からは皮膚生検や小手術を行っています。

当科には皮膚腫瘍や診断の困難な炎症性疾患の方が紹介状を持参して大勢来院されます。皮膚生検からできるだけ多くの情報を得るためには,どの疾患ではどういった部位をどのように生検し,どのように検体を処理すれば診断ができるのかを考えながら行なう必要がありますが,これが皮膚科医のスキルをさらに飛躍させるのです。

 病理診断という皮膚科医の最も強みである診断技術は,良い検体を得ることが最も重要なのです。それには日々の研鑽が必要ですが,当科の研修では,日々の仕事の中で自然に身についていきます。

 また,日本皮膚科学会が認定する専門医の取得には,植皮を含めた最低3件の手術経験が必要とされていますが,加療に訪れる患者さんに比して手術室で施行できる手術件数が限られている現状では,日常業務の一貫として植皮術を外来処置室で行うこともあります。このため,当科においては研修一年目であっても,植皮を含めた基本的な手術手技を身につけ執刃医として自ら行えることを目標としています。

4.撮影した写真を診断名とともに見直し整理します。

ここでは,忙しくて日中診察できなかった稀な疾患も,ゆっくり皮疹をみることができます。また,写真の撮影の仕方が正しかったかもチェックすることができます。一日の最後に今日の症例を振り返る大切な時間と仕事になっています。

5.病理組織を学習します。

木曜に病理組織のカンファレンスをおこなっていますが,毎週数例づつ担当の患者さんが割り当てられます。日中の仕事を終えた後に,教科書を眺めながら組織の勉強をしてプレゼンに備えます。どうしてもわからない点は上級医にその場や翌日に確認します。各疾患で,どの時期にどのような病理組織が得られるのかを考えることがエキスパートへの近道です。

 如何に目的意識をもって日々の業務に臨むことができるかが,研修の成否に繋がっていることは,研修制度が変わった今も昔も変わらない事実です。まずは診断,そして治療を考えるという皮膚科医の基本技術は,教科書の上での勉強ではなく,日常外来の業務によってはじめて自分のものとして身に付くのです。


外来担当医の日常

月曜日

午前中は処置係として,外来で予診をとります。

 大学病院を初めて受診される患者さんは紹介状を持参されるので,それを確認しつつ,実際に皮膚の症状を見て,初診医の診察がスムーズに行えるように必要な情報を引き出し,カルテに記載するのが仕事です。感染症を疑えば,検鏡検査や培養,採血検査などをオーダーし,手術が必要と思われる患者さんには,手術の際に問題になる併用薬や合併症などを忘れずに聴取することが求められます。薬疹を疑われる患者さんが,たくさん内服薬を服用していると,もう大変。これらの仕事を要領よくこなしていかないと,気がつけば診察を待つ患者さんのカルテが積み上げられてしまい,気持ちばかりが焦ってしまいます。隣の部屋で行われるその後の診察を見学して,自分が予診をとった患者さんがどのように診断され投薬がされていくか勉強できれば良いのですが,要領よく仕事をこなしていかなけいと,なかなかその余裕が持てません。

 業務に切れ目がないので,隙をみてさっと昼食を済ませます。午後はまず造影CT係りで点滴をいれます。そのあと外来で生検や処置をします。ここまでで夕方になって,病棟の夕回診まで病理標本を見たりできると理想的。

火曜日

火曜日は週に一回の病棟当番をしています。

 8時半からの朝の病棟回診に参加し,その後入院患者さんの包交や傷のチェックをします。また化学療法の患者さんに点滴をしたり採血や創培養なども行います。

 午後は他の日と同様に外来で手術や生検を行います。火曜日は後期研修医や若手の先生で手術をするので植皮や大きな腫瘍の切除などはなく,小さな腫瘍を切除したり診断のための皮膚生検をしたりします。また薬剤や金属アレルギーの検査のためのパッチテストや光線過敏症の検査のための光線テストもします。

水曜日

松江教授の(初診外来の)ベシュライバーの係りです。

 電子カルテへの打ち込み,薬のオーダー,紹介状や返信などが主な業務内容です。様々な知識と電子カルテのスムーズな使いこなし,マネージネント力などが要求されるのですが,なかなかそれに応えることができず毎週しっちゃかめっちゃかになってやってます。

 午後は処置係りで生検などをします。そのあと夕方の遅めの昼食で一息ついて,ベシュライバーの仕事の残りをします。

木曜日

朝8時から教授が勉強会をしてくださり,そのまま8時半から病棟カンファレンスが始まります。外来を担当している私たちもカンファレンスに参加し,病棟の患者さんの病態や治療方針を勉強します。

 木曜は一般外来がなく,10時半からクリニカルカンファレンスという特殊な外来が始まります。診断に難渋する患者さんや手術が必要になる患者さんに来ていただき皮膚科医全員で診察します。全員で治療方針を決定し(この際担当の医師がプレゼンします),その後受け持ちの患者さんにゆっくり説明をします。その後皆で分担し予定の手術や当日決まった生検をします。

 午後3時からは医局(外来や病棟からは少し離れた医学部の中にあります)に移動し,手術や生検をした患者さんの病理を検討します。前もって担当が決められているので自分の当たっている病理をプレゼンし,皆で検討します。

 その後は一週間の外来で撮った臨床写真をみます。診断に迷った症例では上級医の先生から思わぬ意見を聞くことができ,また珍しい皮疹を見ることもできるのでとても勉強になります。

 カンファが終わった後は学会の予演会やミニレクチャーがあることもあります。最後は和気藹々と皆でお弁当を食べて,長い一日が終わります。

金曜日

午前中は外病院で外来診察します。患者さんとの距離が近くなり緊張しますが,目の前の患者さんのために何ができるのかよく考えた分だけ,「ありがとう」の一言がとても嬉しかったりします。

午後は大学病院に戻って来て処置や生検をしたりします。あとは写真整理したり。標本整理したり。

週末

土曜日の午前中は,育児などの事情があって宿直のできない医師が交代で日直(9時から15時)をしています。平均すると月に2回ほどです。

 仕事の内容は入院中の患者さんの包交,救急外来へ来た皮膚科患者の診察,電話対応などです。大学病院は3次救急のため救急外来へ呼ばれることは少ないですが,かかりつけの患者さんが来ることがあります。慣れないうちはオーベンの先生が待機として控えていてくださるので安心です。

 ハプニングが無ければお昼過ぎには仕事が終わり,その後はゆっくりお昼を食べたり普段家ではなかなか進まない学会の準備や論文を書いたりすることもできます。

 保育園へのお迎えを考慮して貰い,午後3時に宿直の医師に交代し一週間が終わります。