後期研修医の日常(2012年8月)

月曜日

眠い目を擦りながら愛しの枕に別れを告げ,今日からまた始まる1週間にむけて「よっしゃっ」と気合いをいれます。お化粧もそこそこに,いざ病院へ。月曜日は局所麻酔での手術日です。
「おはようございます」。
手術前の患者さんを,全力の笑顔で緊張をほぐしてあげるのも私の仕事。回診前に担当患者さんの点滴を入れておかなければ。よし,入ったぞ,さぁさぁ急げ急げ。朝8時半には病棟回診が始まります。ここでは今年から本格的に導入された「クライオ」と呼ばれる電子カルテが活躍します。患者さんの皮膚状態の写真をアップデートしておき,これを全員で見ながら経過を把握します。

 病室を回って包交を終わらせたら,いよいよ手術室へ。月曜日は平均3~4件の手術が行われます。局所麻酔のOPEの半数以上を担っているのは,普段はちょっと猫背な敏腕先生。手術になると背筋をしゃきっと伸ばし,テキパキこなしていく姿はさすがです。私もがんばるぞ。

 月曜日は手術だけではありません。地下1階の外来では,診察も並行して行われています。手術に入らない場合には,朝の包交が終わり次第外来へ向かいます。月曜日の外来担当先生は,だいぶ猫背な敏腕先生。千葉大におけるダーモスコピーの権威です。研修医の私は,新患の病歴聴取,皮膚の状態を記録するための写真撮り,紫外線療法や液体窒素などの処置を行うのが主な仕事です。なるべく患者さんをお待たせしないように,バタバタと駆け回っています。

 濃厚な午前中の業務が終わったら,午後はこども病院へ。かわいいこども達の笑顔に癒され,ちょっとHP回復。しかし,それもつかの間,再び大学へ。夕方には,病棟カンファレンスと病理カンファレンスが行われます。病理カンファでは,自分が手術や生検を担当した患者さんの病理結果をプレゼンします。カンファが終わったら,残りのHPをふりしぼって病棟患者のカルテ記載や写真整理を行い,長かった1日が終了です。まだ月9(ドラマ)に間に合う? さぁさぁ急げ急げ。

火曜日

月曜日同様,朝はまず病棟回診・包交を行います。ここまでをいかに手際よく終わらせられるかが,火曜日攻略ポイント【1】。テキパキと仕事を終わらせ,いざ外来へ。失敗すると,普段は優しい外来クラークさんから容赦なく呼び出しの電話がかかってきます。

 火曜日は腫瘍外来の日です。担当するのは真っ白なケイシーに青いクロックスでおなじみの先生。皮膚科の全麻手術を一手に担っていらっしゃいます。さぁここで火曜日攻略ポイント【2】。次から次へと押し寄せてくる患者さんを前にして心が折れそうになる先生を支えてあげましょう。いかに先生のやる気を持続させるかで,昼食にありつける時間が変わります。それには自らのゲシュライバー・テクニックを鍛えることがとても大切です。

 さて,火曜日の午後はいわゆる地域の老人ホームの入所者さんをみる仕事に出かけています。この仕事を譲ってくれた先輩の先生からは,皮膚科の原点ともいえる,「白癬」「カンジダ」「疥癬」をみる目が養われるよと言われ,とても有意義なお仕事です。

 その間,大学では何をしているのかと言いますと,午後も午前同様に外来業務に心が折れそうになる先生を支え続け‥‥そして夕方からは,RI検査を行うチームと病棟の包交をするチームとに分かれます。RIチームは,次の日センチネルリンパ節生検が予定されている患者さんに核種を注射し,集積を確認します。包交チームは,病棟で水疱症や紅皮症の患者さんの外用を行っています。

 火曜日は,この2チームと外勤組が合流したら夕回診。とりあえずはこれで業務終了なのですが,その後は今年も去年に引き続き,Lever(英語で書かれた分厚ーい病理の本)の勉強会! ここで火曜日攻略ポイント【3】。大学内のタリーズで甘いコーヒーを購入し血糖値を上げます。まぁ,もはや攻略ではなく,自分へのご褒美ですね。ワイワイきゃっきゃ,ダラダラぺちゃくちゃ‥‥30分程度の勉強会という名前の楽しいひとときを過ごしてから,家路へと向かいます。

水曜日

週も半ばにさしかかり,軽い疲れがボサボサ頭となって表れてきます。でも,いいのです。水曜日は全身麻酔での手術日ですから。水曜日の手術では,悪性黒色腫,有棘細胞癌,乳房外パジェット病など,腫瘍の切除と一緒にセンチネルリンパ節生検が予定されたり,あるいはリンパ節郭清を行うような,比較的大がかりな手術が平均2件行われています。
 私は,手術患者さんの点滴を入れたら急いで手術室へ。8時15分の入室に間に合うためには,エレベーターの待ち時間などのちょっとしたタイムロスにも気を配らないといけません。
 手術は,火曜日の紹介で登場した青いクロックスの先生が執刀されます。研修医の私には,それがリンパ節なのか単なる脂肪組織なのかまだまだ区別がつかない中,先生はさくさくとリンパ節を摘出していきます。その手際の良さは,火曜日の外来からは想像できない緊張感と爽快感を感じさせます。さすがです! そんな先生のサポートにまわり,昼食以外はずーっと手術室にいりびたっているのが手術チームの1日です。

 月曜日同様,水曜日も並行して外来が行われています。手術に入らない場合には,通常通り朝回診を行い,そのまま外来へ。水曜日の外来担当先生は,指導熱心な准教授。お忙しい先生は日本全国を飛び回っています。その恩恵といいますか,臨研にはたびたび日本各地のお土産が並びます。お土産をほおばってエネルギーをつけたら,新患の病歴聴取に,処置にと駆け回ります。
「急いで」と言われる前に急ぐ。それが大切です。

 さて,このあたりで皮膚生検についてご紹介いたしましょう。 毎日午後には外来の診察室の片隅にある外来手術室にて皮膚生検が行われています。1日平均2~3件。いつの日か手術執刀医になる日を夢見ながら,研修医はこの日々の生検で腕を磨くのです。ありがたいことに,手術でも生検でも実際に自分が手技に加わることが多く,また先生方がコツを細かく指導して下さるので,1年経った頃には自然と,植皮をこなせるようになっています。つまり,昨年の前期研修で11ヶ月の間ここで皮膚科を研修した私は,自然と植皮がこなせていることに‥‥先輩,どうですか?

 夕方からは,外来での診察が終わった准教授による「本日の復習」があります。新患の患者さんについて,病歴聴取のポイントや皮疹の特徴などを復習する時間です。自分がアナムネをとった患者さん以外のことも同時に学べるため,とても勉強になります。

 そして,水曜日の最後は,手術チームと外来チームが合流して夕回診を行い,明日のカンファの準備を終わらせたら業務終了です。

木曜日

木曜日は教授にはじまり,教授に終わる,とても濃厚な1日です。教授との週に1度の触れ合いを,特別に‥‥余すことなくご紹介いたしましょう。

 まずは朝8時。病棟のあるひがし棟9階のカンファレンス室で,軽食のドーナッツやコーヒーを片手に教授のありがたぁーい講義を聞くことから1日が始まります。「西山アトラス」を軸として,様々な教科書・文献をパワポにまとめてくださっており(なお,教授のパワポで魅せるテクニックはまだまだ向上中です),とっても勉強になります。

 8時半からは,教授回診を前に,病棟患者さんの1週間の経過をまとめてプレゼンします。さぁいざ,教授回診へ!白い巨塔の如く,医局員全員を引き連れて,ぞろぞろと病室を回っていきます。ただし実際はTVドラマほど医局員がいないのが現実。「白っぽい巨塔」となっています。

 回診が終わったら,急いで包交を終わらせます‥‥が,その間にも外来に患者さんが到着するため,容赦なく外来クラークさんからの呼び出し。
「はーい。今,いきまーす」と元気よく電話に応対しますが‥‥,でも,「今」=10分ぐらいってことをクラークさんもうすうす気づいています。だって,病棟から外来まで,少し離れているのですから。そう,単に距離の問題です。

 さて,木曜日の外来はちょっと特殊です。
「クリニカル・カンファレンス」,通称CCと呼ばれるもので,入院加療や手術予定となりそうな患者さんに来て頂いて教授をはじめ全員で診察し,診断が適切か,他にもっと良い治療法はないかを確認し,治療方針や日程を決定しています。そして,CCの開始時間である10時半までに,研修医は,その日紹介状を持参して初めて受診された患者さん達のアナムネとらなければなりません。

 CCは午前中いっぱいで終わることはまずなく,お昼ごはんも早々に,いつも定刻より10分早く始まる午後からの教授外来へと突入します。それでも以前,「今は,お昼ご飯を食べられるようになっただけ,ありがたいと思え」と先輩先生に叱られました。 13時からの教授外来では,ゲシュライバーは患者さんの病名や現在の治療を即座に電カルから読み取り,教授にプチプレゼンをします。2時間弱の外来も,ちょっとした緊張感から半日程度に感じられます。

 夕方からは,病理カンファ。月曜日の夕方に行っているカンファレンスの中から症例を厳選して教授にプレゼンしています。続いて,写真カンファ。1週間に撮影した写真を閲覧して,みんなで情報の共有をしています.最後に,次週手術予定の患者さんのプレゼンを行い,長い1日が終わります。教授,お疲れ様でした。

金曜日

「金曜日」という響きだけで頑張れる‥‥それが金曜日。8時半から始まる病棟回診を終えたら,今日も外来へと向かいます。

 金曜日の外来担当は,優しい物腰から,ちょっとやっかいな患者さんにも好かれちゃう素晴らしい先生です。乾癬が専門でいらっしゃいます。曜日のせいか,先生の人柄か,はたまた先生の運の問題なのか,金曜日はなぜか新患患者さんが大量に訪れます。研修医は例の如く,病歴聴取に処置にとバタバタ駆け回ります。

 さて,ここで初めて書きますが,皮膚科は毎日みんな揃って3Fの職員食堂で昼食を食べています。午前中にこんなことがあったとか,個人的に経験した最近の面白話とか‥‥,昼食の時間を使って親交を深めています。昼食を食べ終わったらそのまま臨研に直行し,ここでもワイワイとおしゃべりが続きます。そして,最近購入したふかふかソファーに腰掛け,しばしの休息‥‥でも,これはちょっと危険‥‥zzz

zzz‥‥ピロリロ~ピロリロ~♪ 外来クラークさんからの電話で起床。「はーい。今,いきまーす(でも‥‥あと10分)」。
午後は外来のゲシュライバーについたり皮膚生検をしたりして過ごします。そして合間をぬって,月曜日のカンファの準備も欠かしません。そうして,外勤の先生方が戻ってきたら,みんなで病棟患者さんの包交をし,夕回診を終わらせたら,業務終了となります。ふぅ,1週間お疲れ様でした。

週末

土曜日が日当直の場合には,朝は8時半までに出勤。病棟患者の包交を済ませたら,あとは当直ピッチが鳴らないことをひたすら祈ります。 日曜日が当番(待機)の場合には,同じく朝8時半までに出勤し,日当直だった先生と一緒に包交を行い,あとは自宅に帰って携帯が鳴らないことをひたすら祈ります。

 とにかく土日は休む,休め,休もう!! 週が明ければ,また長ーい1週間が始まるのですから。