千葉大学大学院医学研究院 生殖機能病態学(千葉大学産婦人科)
研修医の皆さんへ 婦人科腫瘍外科 アドバンストコース
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婦人科腫瘍外科アドバンストコース
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“婦人科腫瘍外科 アドバンストコース” “婦人科腫瘍外科研修コース” 参加者を募集します
はじめに
 千葉大学医学部附属病院婦人科では、進行卵巣癌や子宮頚部バルキー腫瘍など難易度の高い手術を要する患者さんに最高の医療を提供するために、手術専門医によるチームを形成しています。
 この手術チームの実施するアドバンスト研修コースへの2010年度の参加者を今回募集します。2009年春からトレーニングシステムを開始しました。手術チームスタッフの指導のもとで、豊富な症例を生かし今年度参加者のトレーニングが始まっています。手術手技、検査診断手技、さらに周術期の全身管理能力を身に付けるべく研鑽を積んでいます。
 あなたも、われわれの手術チームに参加し、婦人科癌に対する手術手技をより洗練されたものとすべく、一緒になって取り組んでみませんか。

アドバンストコースの目的
 われわれの手術チームは、日本の婦人科癌の手術成績とQOLのさらなる向上を目指しています。そのために、以下の2つの活動を行います。
1. “腕のたつ”婦人科腫瘍外科医を育成する
 
進行卵巣癌にoptimal debulking surgeryを実施するためには、婦人科臓器以外の消化器や泌尿器の合併切除が不可欠です。婦人科腫瘍手術に必要な外科手技を、従来の婦人科や外科の枠にとらわれずに習得し、進行卵巣癌における他臓器合併切除を術者として完遂できるようになることが、この研修コースの第一の目標です。そして、手術手技に加えて重要なことは、術野に拡がる腫瘍をその場で評価しつつ、どのように切除・再建していくか術中に頭で組み立てながら手術を進めることであると考えます(実際のわれわれの手術においても、術前に症例カンファレンスなどで計画されたものと異なることが多々あります)。そのような修練の場を提供し、育った医師とともに目標とする医療を実践することがわれわれの目指すところです。
 骨盤自律神経を温存して広汎子宮全摘術を実施するには、骨盤内の膜解剖の理解が必要です。われわれは、骨盤内の膜構造をふまえ、切除すべき組織と温存すべき骨盤自律神経を明確に切り分ける広汎子宮全摘術を施行しています。本コースでは、この術式を修得することが可能です。
2. 新たな術式の開発に取り組み、その成果を世界に向けて発信する
 新たな手術手技の開発に取り組み、手術成績の向上を目指します。婦人科腫瘍外科医療の進むべき方向を常に意識しながら、その成果を世界に向けて発信していきます。

本コースの理念と特長
1. 卓越した技倆を持つ指導者のもとで、数多くの症例を経験することができます。
2. 研修開始時には、各人の経験年数や技倆にあわせて個別化したプログラムからスタートすることが出来ます。様々な施設からの参加を想定していますので、研修開始にあたり調整を行います。
3. 医員としての身分・待遇が確保出来ます。
4. 研修終了後は、自由に進路を決めることができます。出身大学やもとの所属施設に帰って、あるいは広く日本各地の施設で、手術チームの中心として活躍していただくのもよいと思います。われわれと切磋琢磨しながら、日本の治療成績の向上をはかることができれば嬉しく思います。また、千葉大学あるいは関連の施設でスタッフとして残っていただく道もあります。
5. 研修終了後、ともに難治症例の診療にあたった仲間として、情報交換などさまざまな形でコンタクトを持ち続けます。必要があれば、治療上の相談などにも応じます。

進行卵巣癌に対する手術療法について
 
卵巣癌に対する手術では可能な限り腫瘍を摘出するoptimal debulking surgeryが行われます。Optimalと一口にいっても、実際にどれくらいの切除が行われるかは、施設や医師個人により大きな違いがあります。卵巣癌の50%以上が進行期III 期・IV期の予後の悪い進行癌ですが、これらの症例でもoptimal debulking surgery が行われることにより予後が改善することが示されています。そして、熟練した婦人科腫瘍専門外科医が進行卵巣癌に対する手術を完遂した場合が最も予後がよいことがわかっています。
 Optimal debulking surgeryを目指すのならば、婦人科臓器以外に消化管・膀胱や尿管・横隔膜・腹膜などの合併切除が必須です。婦人科手術の名手といわれる人でも、肝表面は危険だからとほんの少しのところで完全切除をあきらめてしまう、骨盤腔に嵌り込んで周囲に浸潤増殖した卵巣腫瘍を敢えて2分割して(バルキーな卵巣癌においては分離不可能である場合がほとんどですが)、子宮付属器側と直腸側に分け、それぞれ婦人科と外科とに分けて切除する、そのような治療が行われてきました。分割などせずに、直腸・卵巣腫瘍・子宮付属器・周囲組織等を一塊にして切除したほうが、出血が少なく所要時間も短く安全性の面で、また確実性の面で有利なはずです。そして、骨盤腔に嵌り込むようなバルキー腫瘍に頻繁に遭遇し、その取り扱いに最も慣れているのが、われわれ婦人科腫瘍外科医であることは確かです。そこで、この合併切除を婦人科腫瘍外科の標準術式の一つとすることにより、より安全にかつ確実にoptimal debulking surgeryを完遂できることになります。
 われわれの手術チームでは、III期・IV期の進行卵巣癌の初回手術では60%以上に消化器合併切除を実施しており、optimal debulking surgery率が恒常的に80%を越えています(他施設の多くが10-40%と報告しています)。

2008年4月(婦人科腫瘍外科アドバンストコース研修プログラム開始時)から2009年9月までの1年半の間の千葉大学婦人科の手術成績
 
Stage III-IV Mullerian carcinoma 29例(卵巣癌22例、卵管癌1例、腹膜癌6例)に対する初回手術について

また、8例の再発卵巣癌に対してsecondary dubulking surgeryを施行し、7例に消化器合併切除が行われ、7例で術後肉眼的残存腫瘍なしの状態に成し得ました。

婦人科腫瘍外科 アドバンストコース研修プログラム
 
千葉大学での手術チームでの研修期間は3年を基本としますが、研修の進み具合により、延長や短縮も可能です。実際のプログラム内容は個別に相談しながら策定します。
 下記に示した「プログラム例」のように、半年間から1年間、消化器外科や泌尿器科などで研修を受けることも可能ですが、参加される先生の経験によっては、千葉大学婦人科の手術チーム内でトレーニングを受けることで、消化器・泌尿器外科手術手技などを十分に習得出来ると考えます。実際に現在、婦人科腫瘍外科アドバンスト研修コースに参加されている先生方は、研修参加後半年くらいから、横隔膜ストリッピングや低位前方切除術を含めた進行卵巣癌手術を術者として執刀し完遂しています。

1. 研修項目
A. 周術期管理
消化器手術を前提とした腸管処置、栄養管理、血栓対策など。内科的合併症のある患者にも手術の機会を提供するための全身管理。
B. 処置手技
中心静脈カテーテル挿入、中心静脈ポート留置、胸腔ドレーン挿入、イレウス管挿入など。
C. 手術手技
人工肛門造設、小腸・結腸部分切除術、尿管部分切除、前方切除術、横隔膜ストリッピング、膵尾部脾臓切除術、骨盤内臓全摘術、骨盤自律神経温存広汎子宮全摘術など。

2. プログラム例
■1年目
千葉大学病院において、手術チームの一員として診療に参加し、術前診断、手術手技、術後管理などについて研修を行います。
中心静脈カテーテル挿入、胸腔ドレーン挿入、イレウス管挿入などの手技に慣れていなければスタッフの指導のもとに習得します。
人工肛門造設や小腸・結腸部分切除などより消化管手術を開始し、基本的な消化管吻合などの手術手技を習得します。また、尿管部分切除・再吻合などの手術手技を習得します。

■2年目
1年目での経験をふまえ更なるスキルアップを図ります。症例数が多く優れた指導者がいるしかるべき基幹病院であり、なおかつ婦人科医がローテーションするのに相応しい病院の消化器外科や泌尿器科などで、集中的にトレーニングを受けることも可能です。この期間については、半年間でも1年間でも、自分で決められます。
半年間のローテーションを選択した場合、残りの半年間は千葉大学病院において手術チームの一員として診療に参加することになります。

■3年目
千葉大学病院において、再び手術チームの一員として診療に参加します。能力に応じて、各種手術に際して執刀することが可能です。これまでの研修で得た知識と技術を活かして指導的能力を発揮し、手術チーム1年目の医師や研修医など後進の指導も行います。

研修期間全般を通して、臨床医学に根差した、実地診療にフィードバック出来るような研究を行うことを求められます(純粋な臨床研究でも、基礎医学と連携した臨床研究でも構わない)。研究成果をまとめ国内での主要学会、国際学会での発表を行い、また学術誌に報告することを求められます。

婦人科腫瘍外科 短期研修プログラム
 
千葉大学婦人科の手術チームが実施する短期研修プログラムも提供しています。主として臨床研修医の先生方を対象としていますが、われわれの「婦人科腫瘍外科アドバンストコース」に興味を持たれているシニアの先生方の「どんな手術をしているのか覗いてみよう」という試みの研修も歓迎しています。
 研修期間は1ヶ月から6ヶ月まで自分で決めることができ、延長や短縮も可能です。研修期間中は千葉大学婦人科の手術チームの一員として勤務します。

■婦人科腫瘍手術
手術には助手として参加します。実際に手術を遂行する一員に加わることで、われわれの手術チームが行う手術手技を間近で見学し、流れを学び取ることにより、婦人科腫瘍外科手術に興味を持ってもらえたらと考えています。
われわれは、重篤な合併症を有する患者さんや進行癌患者さんに対して手術を行うことが多く、その場合は患者さんの呼吸・循環動態などに注意を払った全身管理を心がけています。手術チームの一員として周術期管理を学びます。

■処置手技
中心静脈カテーテル挿入、皮下埋め込み型中心静脈ポート留置、腹腔ドレーン挿入や透視下での腹腔ドレーンの入れ替え、胸腔ドレーン挿入などの処置に当初は助手として付き、CVシミュレーター(鎖骨下静脈・内頸静脈穿刺を練習する人形モデル)などを利用して感覚をつかみ、婦人科手術チームスタッフの指導のもとに術者として手技を習得することが可能です。
中心静脈カテーテル挿入は、循環動態を経時的に把握する全身管理が求められる症例が多い産婦人科領域(婦人科腫瘍分野だけでなく、大量出血→出血性ショック等循環動態が急激に変化する可能性がある出産を取り扱う産科分野においても)では身に付けておきたい診療手技であるとわれわれは考えており、平成20年度以降の千葉大学産婦人科入局者の全員が経験を積んでいます。

また、医学部生を対象とした、われわれの手術チームの見学も受け付けています。

婦人科腫瘍外科アドバンストコース担当
三橋 暁・加藤 一喜・楯 真一

連絡先
加藤 一喜
千葉大学医学部 産科婦人科学
〒260-8677 千葉市中央区亥鼻1-8-1
Tel: 043-222-7171 内線6582
Fax: 043-226-2342
E-mail: kkato@faculty.chiba-u.jp

Figure 1A
S状結腸・直腸合併、子宮・両側付属器切除。直腸背側を切離し、全体を授動。

Figure 1B
骨盤腔を大きく占め、内診上全く可動性のない腫瘍に対する、S状結腸・直腸合併、子宮・両側付属器切除。

Figure 1C
S状結腸・直腸合併、子宮・両側付属器切除後、結腸と直腸を手縫いにて端々吻合。

Figure 2
胃・横隔膜部分合併、脾臓大網切除. 脾門部への播種腫瘍が胃大弯に浸潤していたため、一部を合併切除。脾膵間をステープラーにて切離。

Figure 3A
右横隔膜播種腫瘍に対する、横隔膜ストリッピング。

Figure 3B
右横隔膜播種腫瘍に対する、横隔膜ストリッピング。横隔膜への播種巣(白矢印)が、横隔膜筋層・胸膜まで浸潤しており、一部を全層切除。

Figure 4A
右尿管の一部が腫瘍に巻き込まれていたため部分切除後、吻合中。切除部位より頭側の尿管が水尿管となっていたため、太くなっている。

Figure 4B
右尿管部分切除後、吻合。同時に、S状結腸・直腸合併、子宮・両側付属器切除を施行しており、結腸と直腸を端々吻合している。


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