千葉大学大学院医学研究院 生殖医学講座 (旧生殖機能病態学 千葉大学産婦人科)
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子宮筋腫及び子宮内膜症に対する保存療法の研究
重症免疫不全マウスを用いたヒト子宮筋腫の異種移植モデル
 当研究室では、婦人科のcommon diseaseである、子宮筋腫の病態解明を目的としたトランスレーショナルリサーチを行っています。

 子宮筋腫の動物疾患モデルとして、異種移植(xenograft)モデルを作製し、その作製方法を確立しました(Wang et al. Fertil Steril 2014)。このモデルは、2010年にIshikawaらが報告した超免疫不全マウスを用いたヒト子宮筋腫xenograftのモデルの改良型です(Ishikawa et al. Endocrinology 2010)。


実験方法

1. 子宮筋腫初代培養細胞の作成
 子宮筋腫摘出検体から筋腫核の一部を切除し、メスで細切します。コラーゲン等の細胞外マトリックスを大量に含む筋腫では、この細切操作に時間を要します。組織を十分に細切(破砕片が1mm程度を目安とします)した後、DNase1, Collagenaseを入れたHanks’ Balanced Salt Solution内に移し、37℃で5時間程度、組織を消化します。
 酵素による消化後、消化液をろ過して回収された細胞を子宮筋腫初代培養細胞として血清入り培養液にて3〜4日培養します。すると、紡錘形に伸びた子宮筋腫細胞を確認することができます(図1)。
図1:初代培養子宮筋腫細胞

2. 異種移植片の作成
 初代培養細胞がviableであることを確認して、トリプシン処理にて細胞を浮遊させた後、濃縮コラーゲンと一定数の初代培養細胞を混合し、コラーゲンゲルを作製し、異種移植片(xenograft)とします。コラーゲンゲルが固まったのを確認した後、細胞培養用の培養液にてさらにこのxenograftを1〜2日培養します。この間、ゲルは凝縮して、小さくなります。

3. Xenograftの重症免疫不全マウス腎被膜下移植
 麻酔をかけた重症免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)の背部に切開を入れ、左右の腎臓の位置を確認し、腎直下の筋膜を切開します。腎と卵巣は近い位置にあるので、腎を体外に誘導すると、ほとんどの場合、まず卵巣が表れます(図2〜4)。
図2:麻酔薬の腹腔内投与
図3:マウスの背部皮下切開
図4:背部圧出による腎の体外誘導
 その卵巣を摘除した後、顕微鏡下に腎被膜に数mmの切開を入れ、腎被膜下のスペースを先端が鈍なパスツールピペットで拡大していきます(図5〜7)。
図5:卵巣摘除
図6:ハサミによる腎被膜切開
図7:ピペットによる腎被膜下スペースの拡大
 この時、腎実質表面は易出血性であり、ピペット先端で表面を損傷しないように心がけます。一旦出血が始まると、顕微鏡下での視野確保が困難となり、その後の移植手技に大きな支障をきたします。
 腎被膜下に十分なスペースを確保することができたら、xenograftを腎表面に載せ、顕微鏡下にそのスペースに押し込んでいきます。移植操作中は腎被膜が乾燥しないように心がけます。Xenograftはできるだけ奥に押し込むことが肝要ですが、腎被膜を引っ張りすぎると簡単に裂けていくので注意が必要です(図8〜11)。
図8:Xenograftの腎表面への移動
図9:腎表面に置かれたxenograft
図10:ピペットによるxenograftの腎被膜下への挿入
図11:腎被膜下移植完了
 Xenograftを腎被膜下に挿入した後、腎をマウス体内に還納し、筋膜と皮膚を縫合します(図12)。
図12:筋膜縫合
 皮膚はクリップで留めてもかまいません。最後にマウスの肩にエストロゲン、プロゲステロンのデポー剤を注射して、移植操作は終了です。マウスが麻酔から覚醒するまで保温しながら経過を観察します。

4. Xenograftの評価
 このxenograftはエストロゲン・プロゲステロンを同時に投与して初めて腎被膜下で発育します。本研究では、エストロゲン、プロゲステロンデポー剤を毎週マウスに皮下注射し、4週から8週間後にマウスの腎被膜下からxenograftを回収し、その評価を行いました。


実験結果

1. NOD/SCIDマウス腎被膜下で増大した子宮筋腫xenograft
 子宮筋腫xenograftはエストロゲン・プロゲステロンの投与によりホルモン依存性に増大しました(図13)。ただし、すべてのxenograftが増大したわけではなく、ホルモンに反応して増大したxenograftは全体のおよそ5割で、残りは移植時とあまり変化がありませんでした。Xenograftとして初代培養細胞を用いていることから、個体差によるものが大きな原因と考えられます。
(a) 移植直後 (b) ホルモン投与なし
(c) 2週間に1回の投与 (d) 毎週投与
図13:Xenograftのホルモン依存性増殖(移植後8週目での検討)

2. Xenograftの組織学的評価
 エストロゲン・プロゲステロン注射に反応して増大したxenograftは、ヒト子宮筋腫組織の再構築が起こり、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体の発現も見られました(図14〜16)。
図14:HE染色によるxenograft組織像
図15:免疫組織化学染色によるxenograft エストロゲン受容体発現
図16:免疫組織化学染色によるxenograftプロゲステロン受容体発現

3. Xenograftの遺伝子発現
 Xenograftの遺伝子発現を検討したところ、子宮筋に対して子宮筋腫で特徴的な発現パターンを示した遺伝子群は、子宮筋腫xenograftで子宮筋xenograftに対して、ほぼ同じ発現パターンを示しました。

今後の展望
 このxenograftモデルは、ヒト子宮筋腫をそのまま用いており、初代培養細胞に遺伝子変異、形質転換が起こっていないことから、生体内環境を模倣したモデルと言えます。このモデルを用いて子宮筋腫の病態解明、新規治療薬の開発を行っていきたいと考えています。


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