腺癌

腺癌は腺管への分化を示すもの、あるいは粘液産生が認められる悪性腫瘍と定義されます。

第2版

第3版および2004年版

第3版では、腺房型、乳頭型、細気管支肺胞上皮癌、粘液産生充実型が混在するものを混合型腺癌としました。

細気管支肺胞上皮癌
腫瘍細胞が肺胞構造に沿って、lepidic growth、すなわち、うろこ状に広がったもので、間質、血管、胸膜に浸潤を認めないものをいいます。亜型として、粘液非産生性、粘液産生性、混合型あるいは不確定型に分けられます。

粘液非産生型細気管支肺胞上皮癌

肺胞構造が保たれ、立方型のN/C比の大きい細胞が、肺胞壁に沿って増殖しています。

粘液産生性細気管支肺胞上皮癌

粘液を入れた腫瘍細胞が肺胞壁に沿って増殖しています。 肺胞腔内には粘液が充満しています。

乳頭型腺癌
乳頭型腺癌には2通りあります。


ひとつは、スライドのように、腫瘍細胞が、肺胞壁を置換していますが、更に2次性あるいは3次性の乳頭構造を示すものです。

乳頭型腺癌のもう1つの型は、癌細胞は肺胞壁とは無関係に、固有の基質を有して、乳頭状に増殖しているものです。

腺房型

癌細胞は胞巣を形成して増殖していますが、管腔を形成しています。

粘液産生充実型腺癌

腫瘍細胞が充実性に増殖しており、大細胞癌との鑑別が必要です。 右はalcian blue染色です。腫瘍細胞の細胞質にalcian blue陽性の粘液を多数認めます。 大細胞癌の中に、少数の腫瘍細胞に粘液を認めることがありますが、粘液産生充実型とするには、2高倍視野で5個以上の腫瘍細胞に粘液を入れる必要があります。

混合型腺癌
腺房型、乳頭型、細気管支肺胞上皮癌、粘液産生充実型が混在する腫瘍です。

腺癌の特殊型として

  1. 胎児型腺癌
  2. 膠様腺癌
  3. 粘液嚢胞腺癌
  4. 印環細胞癌
  5. 淡明細胞腺癌
をあげています

胎児型腺癌

胎児肺に類似した構造を示す腫瘍は、第3版では高分化胎児型腺癌 となっていいますが、2004年版では胎児型腺癌 となっています。 特徴は、核の下あるいは上に、グリコーゲンを入れた空胞を認め、複雑に分岐した管腔を認めます。 多角形細胞よりなる好酸性のmoruleを認めます。 この腫瘍は、肺芽腫に類似していますが、間質性分に悪性所見は見られません。 予後は肺芽腫に比べると良好です。 30才代をピークに、やや女性優位に発生します[2,3]。


膠様腺癌
消化管の癌にみられる粘液癌に類似し、多量の粘液の中に腫瘍細胞が散在性に認められる腺癌です。

粘液嚢胞腺癌
粘液を入れる嚢胞を形成し、腫瘍細胞が肺胞壁に沿って増殖している腺癌です。

印環細胞癌

胃癌にみられる印環細胞癌と同様な、細胞質に豊富な粘液を入れる腫瘍細胞からなります。 この所見がみられても、すぐに胃癌の転移と考えることはできません。 他の組織亜型の一部にみられることがあります。

淡明細胞腺癌

この腫瘍は気管支内腔に発育した腫瘍です。腫瘍細胞は淡明で、PAS染色でグリコーゲンが存在することがわかります。 わずかに管腔を認めるため、淡明細胞腺癌と診断しました。

電子顕微鏡で観察すると、核周囲に多量のグリコーゲンの蓄積を認めました[4]。

腺癌の問題点
大半の腺癌は混合型に分類され、2004年版には約80%の腺癌が混合型であると記載されています。
異型腺腫様過形成と細気管支肺胞上皮癌を鑑別する客観的基準がありません。
細気管支肺胞上皮癌は肺胞壁に沿ってlepidic growthを示すとされ、乳頭型腺癌のうち、固有の基質を有さないものは、鑑別する客観的基準がありません。
細気管支肺胞上皮癌は浸潤のない腫瘍と定義していますが、間質浸潤を客観的に判断する基準がありません。