前浸潤性病変

第2版

第3版および2004年版

第2版では、異形成と上皮内癌が良性上皮性腫瘍と悪性上皮性腫瘍とは別に、分類されていました。 第3版では、扁平上皮癌のprecursorとして異形成と上皮内癌をあげています。更に、細気管支肺胞上皮癌のprecursorとして、異型腺腫様過形成をあげています。また、肺の神経内分泌細胞が過形成をおこしたものとして、びまん性特発性肺神経内分泌細胞過形成 をあげています。

異形成と上皮内癌

左に異形成を示します。異形成は上皮内に異型細胞が出現しているもので、細胞異型や構造異型から程度を軽度、中等度、高度にわけています。異形成には上皮内に毛細血管(矢印)を認めることがあります。異形成においては毛細血管の新生が起きており、連続切片を観察することにより、蛇行した基底膜直下の毛細血管が、標本の切れ方により上皮の中に存在するように見えることがわかります[1]。 右の写真は、左の症例を1年間follow upしたところ、扁平上皮癌が発生し、手術により摘出した標本です。異型のより高度な細胞により、上皮の全層が置換されていますが、基底膜を超えて浸潤をしていないため、上皮内癌と診断します。

異型腺腫様過形成

異型腺腫様過形成の大きさは、5mm以下ですが、まれに10mm以上のこともあります。細胞の形は、円形、立方形、低円柱形、ペグ状です。線毛上皮細胞や粘液を入れる細胞は見られません。 異型の軽度な細胞が非連続的に肺胞壁をおおっています。

びまん性特発性肺神経内分泌細胞過形成
細気管支の全周性に、線毛円柱上皮の基底膜側に、神経内分泌細胞が増生したり、細気管支上皮内や、周囲に胞巣を形成します。

問題点
扁平上皮癌の前浸潤性病変として、異形成と上皮内癌をあげています。細気管支肺胞上皮癌の前浸潤性病変として、異型腺腫様過形成をあげています。後で、説明しますが、腺癌の亜型である細気管支肺胞上皮癌も浸潤のないものと定義されています。しかし、前浸潤性病変には含まれていません。統一性の面から、問題があると思います。