肉腫様癌

第2版 第3版 2004年版 「多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌」は第3版より新しく加わった分類です。2004年版では、「肉腫様癌」と簡単な名称に変更され、「紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌」も削除されました。第2版では、紡錘細胞癌は扁平上皮癌に含まれていましたが、その後、腺癌にも紡錘細胞よりなる癌がみられることが報告されました[11]。巨細胞癌は大細胞癌に含まれていました。 また、癌肉腫、肺芽腫は上皮性腫瘍と考えられておらず、悪性黒色腫や悪性リンパ腫とともに、その他の腫瘍に含まれていました。 その後の検討により、肉腫様癌は癌腫をもとに間葉系細胞の形質を獲得した結果であることが判明したため、第3版では、これらは上皮性悪性腫瘍に含まれています。

多形癌

紡錘細胞あるいは巨細胞を認めますが、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌もみられるものです。すなわち、非小細胞癌の中に肉腫様成分を認めるものです。 紡錘細胞と巨細胞からだけなるものも多形癌と診断します。写真左は紡錐形細胞よりなり、一部に写真右のように管腔を形成する腺癌を認めるため、多形癌と診断しました。

紡錘細胞癌

腫瘍細胞が紡錘細胞からのみなるものをいいます。

巨細胞癌

腫瘍が、多核あるいは単核の巨細胞よりなるものをいいます。

癌肉腫
癌腫と肉腫とが混在する腫瘍です。肉腫として、軟骨肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫などがみられます。

明らかな乳頭状構造を示す腺癌成分と角化を伴う扁平上皮癌成分を認め、また、これに接して骨への分化を示す骨肉腫を認めます。癌腫成分と肉腫成分が混在しており、癌肉腫と診断します。

肺芽腫

肺芽腫は、胎児肺に類似した所見を示します。 核上あるいは核下にグリコーゲンを認める無線毛円柱上皮よりなる管腔とprimitiveな間質からなり、上皮成分は胎児型腺癌に類似します。 胎児型腺癌と同様にmoruleがみられる 骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫が混在することがあります
βカテニンの発現を免疫染色で検討すると肺芽腫では、上皮細胞の細胞質と核が染色されます。また、間質細胞の核も染色されます。 癌肉腫では、核は染色されず、主に細胞膜に染色されています。 また、肺芽腫ではβカテニンの遺伝子異常があることがわかりました。 その他の臓器に発生するmoruleを形成する腫瘍もβカテニンの遺伝子異常を呈することが報告されています。 したがって、moruleを形成する腫瘍においてβカテニンの遺伝子異常がその発生に関与していることが推測されます[3,12]。