中皮腫

中皮とは胸腔、心嚢、腹腔などの内面を被覆する細胞をいい,発生学的に中胚葉に由来します.中皮腫とは中皮由来の原発性腫瘍で胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜に発生します.

厚生労働省の人口動態統計によると我が国における中皮腫による死亡者数は,過去10年間で約2倍に増加し,2006年は1,050人(男性807人,女性243人)です.発生部位は,胸膜が最も多く86%で,腹膜は11%です.中皮腫は2025年頃まで増加し,その死亡者数は今後40年間で10万人以上に達すると推測されています.

中皮腫の診断は,臨床経過,画像所見,胸腔鏡所見,胸腹水細胞診,病理診断などを総合して行われますが,病理診断は最も重要です.

悪性中皮腫の初期の症状は,胸膜中皮腫は呼吸困難や胸痛,腹膜中皮腫は腹部膨満感や腹痛などです.また,確定診断をつけることが難しく,診断までに時間がかかると,その間に病気が進行します.現時点では,早期の中皮腫に対して外科的手術(胸膜肺全摘術)と化学療法や放射線療法を組み合わせる治療法が最良です.