概要

目標

幹細胞研究は、再生医療への展開が期待されるとともに、癌や加齢に伴う各種疾患などにも密接に関連し、生命科学全般へ重要な意義を有します。また、疾患iPS細胞を用いた研究は、新規治療法や治療薬の開発に有用な技術として大きな注目を集めています。本研究グループにおいては、このような幹細胞研究の進歩を基盤に、本グループ独自の幹細胞生物学や再生医学の研究アプローチを用いて、再生医療と疾患研究を推進し、世界レベルの「再生システムと疾患の統合的研究拠点の形成」を目指します。

方向性

「再生システムと疾患の統合的研究拠点の形成」の目的の達成には、幹細胞・再生・疾患など多様な分野の研究者によるチームの結成と実質的な共同研究が不可欠です。そのために、研究班1 組織幹細胞と疾患研究、研究班2 臓器再生と細胞療法研究、研究班3 疾患iPS細胞と疾患研究の3グループを構成しました。それぞれ、組織幹細胞、臓器再生、疾患iPS細胞の観点から再生医療や疾患研究を推進するとともに、得られた知見をグループ間で横断的に共有しながら共同研究の成果をフィードバックすることで、領域全体の研究を発展させていきます。また、岩間がセンター長を務める再生治療学研究センターをはじめとして、医学薬学府の各研究室や附属病院の各臨床部門、未来開拓センター、臨床試験部との連携を図りながら、領域研究の充実・拡大を進めていきます。特に、再生治療学研究センターで整備を進める疾患iPS細胞研究部門との連携は重要であります。また、附属病院臨床部門、未来開拓センター、臨床試験部との連携も再生医療・疾患治療への展開の観点から極めて重要といえます。

特色・強み

本グループで推進する再生治療学研究は、これまで不可能であった疾患の病因解明や治療法・治療薬の開発を新しい視点から推進する上できわめて有用といえます。特に、患者由来のiPS細胞を用いる研究は、病因解明のみならず、薬剤スクリーニングによる創薬に有効なツールとなるでしょう。さらに心筋再生の研究や新規造血幹細胞移植治療法の開発は、重症心不全や難治性造血・免疫・代謝性疾患の抜本的な治療に向けて大きく貢献することが期待されます。本計画の下、部局横断的な研究体制と世界的なネットワークを確立することにより、疾患研究とその治療法・治療薬開発の連携体制が強化され、企業との創薬における共同研究も活性化されるものと期待されます。

班構成

研究班1:組織幹細胞と疾患研究 岩間 高山 室山
研究班2:臓器再生と細胞療法研究 松宮 三木 中世古
研究班3:疾患iPS細胞と疾患研究 江藤 横手 田中 降幡

研究班1 組織幹細胞と疾患研究

組織幹細胞研究を通して幹細胞研究を推進するとともに、幹細胞の制御機構の破綻に起因する疾患(癌や加齢関連疾患)を幹細胞生物学の観点から理解する疾患研究を推進します。

岩間高山は、造血幹細胞の自己複製や分化の制御機構の研究を進めるとともに、その制御機構の破綻がどの様に造血器腫瘍の発症に関与するのかを明らかにしていきます。特に、エピジェネティックな観点を中心に研究を推進します。
室山は、初期の神経幹細胞を維持する新規核内因子の発見をアドバンテージとして、初期の神経幹細胞に固有の性質を担う分子機構とその核内ダイナミクスを解明していきます。さらに、神経幹細胞から神経回路形成への道筋を示すことにより、新しい視点で神経幹細胞の制御機構を理解することを目指します。

研究班2 臓器再生と細胞療法研究

幹細胞・前駆細胞からの臓器再生研究を通して再生医学研究を推進するとともに、幹細胞あるいは幹細胞・前駆細胞から分化誘導した機能細胞を用いた新しい細胞移植療法の開発と実施を目指します。

松宮は、心不全に対する再生型治療の臨床応用研究を目指します。特に、脂肪組織由来多能性幹細胞から分化誘導した心筋細胞シートの虚血性心筋症への応用研究とともに、左室機能回復をもたらす心筋再生因子の探索研究を推進します。
三木は、インスリン産生細胞である膵β細胞の再生に関わる膵β前駆細胞の実態解明を通して、膵島再生のメカニズムを理解し、糖尿病の再生治療の可能性を探索します。
中世古は、形質細胞の腫瘍であるPOEMS症候群の移植治療の実施を通して、POEMS症候群の病態解明を推進するとともに、岩間と連携して、低分子化合物による臍帯血造血幹細胞の体外増幅法を用いた造血幹細胞移植法の開発など、新しい造血幹細胞再生療法の可能性を検証します。

研究班3 疾患iPS細胞と疾患研究

疾患iPS細胞研究を通して、疾患の発症メカニズムの解明、ならびに疾患iPS細胞を用いた低分子化合物のスクリーニングなどの創薬に向けた活動を通して、疾患研究を推進します。

江藤は、iPS細胞を用いて血液細胞分化、特に機能的な血小板と赤血球の分化誘導の技術開発を産学連携で行うとともに、細胞治療に向けた研究も進めていきます。
横手は、遺伝的早老症Werner 症候群のiPS細胞を用いて、本疾患のin vitroでの病態解析を行うとともに、Werner 症候群由来のiPS細胞から誘導した線維芽細胞の早期老化現象を抑制する薬剤のスクリーニングを行い、治療薬の開発を目指します。
田中は、ES/iPS細胞などの多能性幹細胞からの内分泌細胞(下垂体・甲状腺など)の分化誘導法の確立を試みるとともに、多能性幹細胞特異的な細胞内代謝調節機構を解明し、その維持・分化誘導への応用を目指します。
降幡は、専門である薬物動態学・薬理学・毒性学の観点から、各研究グループと連携して疾患iPS細胞における創薬標的探索や薬剤スクリーニングを行い、得られた候補薬剤の薬理学的機序解明など非臨床創薬研究を実施します。さらに、それら結果からの臨床試験データ予測、および臨床試験における適切な投与量設計や副作用回避への方策の設定を担当します。

ネットワーク

本研究グループでは、世界の幹細胞研究を牽引する3グループ、I.幹細胞・再生医学研究(熊本大学国際先端医学研究拠点施設・シンガポール大学がん研究所、須田年生教授)、II.再生医療実現化(東京大学医科学研究所・スタンフォード大学、中内啓光教授)、III.疾患iPS細胞研究(京都大学iPS研究所)と、国際的なネットワークを構築し、世界レベルの共同研究の推進とともに技術支援も受ける体制をとっています。