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研究活動

H29年度 H28年度 H27年度 H26年度
H29年度の業績のトピック
川上班員の骨芽前駆細胞の同定と細胞系譜に関する研究がDevelopmental Cellに掲載されました。

 今回、本領域公募班代表者の川上班員のグループは、ゼブラフィッシュをモデルとした細胞系譜の解析により,骨芽細胞が再生・維持される仕組みを明らかにしました。骨は、常に新陳代謝を繰り返すことで恒常性を維持するとともに、骨折や傷害の際には大規模な修復を行います。骨芽細胞は骨組織を作る上で中心的な働きをする細胞ですが,哺乳類では骨髄間葉幹細胞から分化することが示唆されてきた一方で、それらの発生における起源や,生体内で骨芽細胞を供給する仕組みは不明でした。
 ゼブラフィッシュなどの魚類では、鰭(ひれ)の大部分を失っても再形成できます。川上グループは、ゼブラフィッシュを用いて、鰭を支える骨の再生過程について解析し、ニッチに局在する骨芽前駆細胞が傷害に応答して移動・分裂し骨芽細胞へ分化すること、この骨芽前駆細胞は発生期の体節から生じ、骨芽前駆細胞となって骨組織のニッチにリザーブされることを明らかにしました。
 今回の発見は、脊椎動物における石灰化骨を作る細胞が胚から成体に至るまで連続した系譜であること、これら骨芽前駆細胞の維持が骨の老化と深く関わっている可能性を示唆しています。

Ando K., Shibata E., Hans S., Brand M. and Kawakami, A. Osteoblast production by reserved progenitor cells in zebrafish bone regeneration and maintenance. Developmental Cell 43: 1-8, 2017

https://doi.org/10.1016/j.devcel.2017.10.015
豊島班員の皮膚拡張時における表皮幹細胞制御に関する研究がNature Communicationsに掲載されました。

 今回、本領域公募班代表者の豊島班員のグループは、体形変化に伴って皮膚が拡張する仕組みを明らかにしました。皮膚は、常に新陳代謝を繰り返すことで恒常性を維持しています。近年、新陳代謝における表皮幹細胞のダイナミクスが明らかとなってきました。一方、皮膚は、生理的な体形変化に伴って表面積を柔軟に変化させますが、その仕組みは不明でした。
 妊娠期には、胎児の成長に伴って母体の腹部皮膚が急速に拡張します。豊島グループは、マウスを用いて妊娠期における表皮幹細胞制御について解析し、真皮から分泌されるWnt阻害因子がシグナルとなって、表皮幹細胞から高い増殖能を持つ細胞が産生されること、この増殖性細胞が更に水平分裂を繰り返すことで表皮が拡張することを明らかにしました。
 今回の発見は、表皮幹細胞とは異なる性質を持つ増殖性の表皮細胞群が、皮膚に存在することを示しており、加齢に伴う皮膚の老化の理解につながる重要な知見です。

Ichijo R, Kobayashi H, Yoneda S, Iizuka Y, Kubo H, Matsumura S, Kitano S, Miyachi H, Honda T, and Toyoshima F. Tbx3-dependent amplifying stem cell progeny drives interfollicular epidermal expansion during pregnancy and regeneration. Nat Commun 8: 508, 2017.

https://www.nature.com/articles/s41467-017-00433-7
滝澤班員の細菌感染による造血幹細胞ストレスに関する研究がCell Stem Cell誌に掲載されました。

 今回、本領域公募班代表者の滝澤班員のグループは、血液をつくる幹細胞である造血幹細胞が細菌感染に対してどのように応答するのかについて検証を行い、その分子機序を明らかにしました。
 細菌感染時には、免疫系が反応して体内で感染がさらに拡散するのを防いだり、最終的には感染を抑えたりする役割を担います。その際に、免疫を担う免疫細胞が防御線として働くと考えられていましたが、最近の研究から血液を造る非免疫細胞である造血幹細胞も感染に対して反応することが明らかになりつつあります。
 滝澤グループは、チューリッヒ大学病院血液内科のグループとの国際共同研究のもと、細菌感染に際して一部の細菌由来分子が骨髄にいる造血幹細胞を刺激し、強制的に増殖を誘導すること、その増殖ストレスにより血液を産生する能力を著しく低下させることを見出しました。
 今回の発見は、細菌感染が引き金となり造血不良や白血病化が起きる可能性を示しており、それらの血液疾患に対する新たな予防法を考える上で重要な知見となります。また、感染による造血幹細胞の機能変容は老化との類似性が多く、感染や炎症などによるストレスが幹細胞老化の一つの機序である可能性を示唆しています。

Takizawa H, Fritsch K, Kovtonyuk LV, Saito Y, Yakkala C, Jacobs K, Ahuja AK, Lopes M, Hausmann A, Hardt WD, Gomariz Á, Nombela-Arrieta C, Manz MG, Cell Stem Cell 2017 Jul 19. pii: S1934-5909(17)30239-4. doi: 10.1016/j.stem.2017.06.013.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1934590917302394?via%3Dihub
眞鍋公募班は、心臓のストレスへの適切な応答が、心臓−脳−腎臓のネットワークによって制御されていることを明らかにしました。

 高齢化とともに心不全はパンデミック(大流行)と言われるほどに急増しています。特に従来の薬物療法が効果を示さない心不全が増加しており医療上の重大な問題になっています。今回の成果は、心臓へのストレスが、心臓だけで対処されているのではなく、臓器をつないだネットワークによって適切に応答されていることを示しました。慢性腎臓病は心臓病のリスクを大きく増大させることから、心腎連関という心臓病と腎臓病の相互への作用が注目されています。今回の成果は、心腎連関の全く新しいメカニズムの一端を明らかにしました。心不全とともに慢性腎臓病も高齢者に多い病気です。高齢化は、今回明らかにした臓器間ネットワークの不調を通して、心臓や腎臓の病気を引き起こしている可能性があります。
また、心臓や腎臓では、組織に常在するマクロファージが大事な働きをすることを見いだしました。マクロファージは様々な加齢関連疾患に関わります。今回見いだしたマクロファージの新しい機能は、加齢関連疾患の機序の理解にも貢献することが期待されます。

Fujiu K, Shibata M, Nakayama Y, Ogata F, Matsumoto S, Noshita K, Iwami S, Nakae S, Komuro I, Nagai R, Manabe I. A heart-brain-kidney network controls adaptation to cardiac stress through tissue macrophage activation. Nat Med 23:611-622, 2017.

https://www.nature.com/nm/journal/v23/n5/full/nm.4326.html