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研究活動

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H30年度の業績のトピック
平尾班員の高脂肪食によるストレスと造血幹細胞制御に関する研究がCell Stem Cell誌に掲載されました。

 金沢大学がん進展制御研究所の田所優子助教と平尾敦教授の研究グループは、高脂肪食摂取によって引き起こされる造血幹細胞の機能低下や白血病化を防ぐ仕組みがあることを発見しました。これまでの疫学的研究から、肥満と白血病との因果関係が考えられてきましたが、実際、脂肪の摂り過ぎなど肥満を引き起こす食習慣が白血病の原因になるのかどうかについて不明でした。
 研究グループは、造血幹細胞において様々なストレスに応答するSpred1に着目して研究を行ってきました。造血幹細胞におけるSpred1の役割を調べるためにSpred1欠損マウスの造血幹細胞を解析したところ、Spred1欠損造血幹細胞は加齢や細菌感染に対して抵抗性を示すものの、高脂肪食摂取に対しては造血幹細胞の機能低下と白血病化を引き起こすことが明らかとなりました。この結果は、Spred1は高脂肪食摂取によるストレスに対して特異的に、造血幹細胞を維持するために必須であることを示しています。またこの血液異常は、腸内細菌の除去によって回避されたことから、高脂肪食摂取による腸内細菌叢の変化が関与していることが明らかとなりました。
 今回の発見は、食餌による腸内でのイベントが遠く離れた造血幹細胞に影響を及ぼしていることを示しており、幹細胞制御の理解に新たな視点を与えます。またSpred1調節機構の解明は、加齢に伴う造血機能低下や白血病発症メカニズムの理解、新規の予防法・治療法の開発につながることが期待されます。

Tadokoro Y, Hoshii T, Yamazaki S, Eto K, Ema H, Kobayashi M, Ueno M, Ohta K, Arai Y, Hara E, Harada K, Oshima M, Oshima H, Arai F, Yoshimura A, Nakauchi H, Hirao A. Spred1 safeguards hematopoietic homeostasis against diet-induced systemic stress. Cell Stem Cell, 22, 713-725.e8, 2018. DOI: https://doi.org/10.1016/j.stem.2018.04.002

https://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(18)30164-4
川上班員の皮膚再生に関する研究がDevelopmentに掲載されました。

 今回、本領域公募班代表者の川上班員のグループは、細胞系譜の解析により,皮膚が再生・維持される仕組みを明らかにしました。哺乳類では,大きな損傷を受けると瘢痕を形成しますが,ゼブラフィッシュなどの魚類では、鰭(ひれ)の大部分を失っても,正常な皮膚を再形成できます。これまで,どのような過程を経て皮膚が完全に再生されるのか不明でした。
 川上グループは,ゼブラフィッシュの完全な組織再生の過程を解析した結果,幹細胞への脱分化などの特殊なプロセスによるのではなく,幹細胞や表層の細胞がそれぞれ増殖して皮膚を再生し,さらに,皮膚の広範囲で細胞増殖が活性化して細胞を供給することで,新たな皮膚がダイナミックに再構成される(若返る)ことが判明しました。
 今回の発見は,幹細胞の複製や活性化が,完全な皮膚再生へのカギであることを示しており,皮膚の老化メカニズムの解明,哺乳類での瘢痕のない皮膚の完全再生の実現,さらに皮膚の若返りへの可能性を示唆しています。

Shibata,E., Ando, K., Murase, E. and Kawakami, A. Heterogeneous fates and dynamic rearrangement of wound epidermis-derived cells during zebrafish fin regeneration. Development 145: dev162016. 2018.

https://doi.org/10.1242/dev.162016