Environment alters epigenome and causes cancer 当講座は千葉大学医学部で昭和42年に開設された生化学第二講座に端を発します。
平成25年に分子腫瘍学と改称し、癌エピゲノム研究を遂行しています。
研究詳細

癌防御機構である早期細胞老化におけるエピジェネティック制御機構の解明

 大腸癌など多くの癌でRas, Rafなど癌遺伝子の活性化変異が認められますが、正常細胞では癌遺伝子変異が起きても、細胞は癌化を防ぐために細胞老化と呼ぶ不可逆的な増殖停止機構を持つため癌化しないことが知られています。もし細胞老化の重要な機構に異常が起きてしまうと、癌遺伝子変異による細胞老化を回避して癌化すると考えられます。細胞老化における遺伝子制御機構を理解することは癌を理解する上で極めて重要です。
 例えばRas遺伝子変異による細胞老化では、活性化ヒストン修飾H3K4me3、不活化ヒストン修飾H3K27me3がダイナミックに変化します。発現とエピゲノム変化の統合解析により、Bmp2-Smad1シグナルにおける分泌蛋白Bmp2の発現上昇、阻害因子Smad6Nogの不活化が重要であることが浮かび上がりました(図)。Bmp2がH3K4me3獲得・H3K27me3消失により発現上昇する中、Bmp2-Smad1シグナルの阻害因子は反対にH3K4me3消失・H3K27me3獲得などにより不活化されるため、Bmp2-Smad1シグナルはoffの状態からonにスイッチされ、細胞の増殖停止に貢献します。

図.Ras-/Raf-誘導性早期細胞老化におけるエピゲノム変化


 調和されたエピゲノム変化により癌化を防ぐ機構が制御されており、Raf遺伝子変異による細胞老化でもSmad6のプロモーターにおけるH3K27me3獲得がないなど少しの違いはありますが、Ras-/Raf-誘導性早期細胞老化において、重要なシグナルが調和的なエピゲノム変化により制御されて癌化防御機構が働いています。

図.調和的エピゲノム変化によるBmp2-Smad1シグナルの制御