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クロウ・フカセ症候群は、形質細胞増殖と血管内皮増殖因子(VEGF)の異常高値を基盤に多発ニューロパチー、臓器腫大等の多彩な症状を呈する稀な疾患です。日本国内の患者数は約300-400人と推定されています。主要症状である、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changesの頭文字をとってPOEMS症候群とも呼ばれています。複数の臓器・器官にわたる多彩な症状を呈するため、診断が非常に難しい疾患です。患者さんの多くは急速な進行を来すため、重症化しやすいことも特徴のひとつです。病態に不明な点が多く、患者数も少ないため、標準的な質の高い治療指針はまだ十分に確立されているとは言えません。しかし、治療法は少しずつ進歩しています。

多発性骨髄腫は、クロウ・フカセ症候群と同じ形質細胞の腫瘍性疾患です。クロウ・フカセ症候群と比較すると10倍近くの患者さんがいるため、治療が非常に進歩しています。クロウ・フカセ症候群の治療は多発性骨髄腫の治療を応用することによりこれまで進歩してきました。クロウ・フカセ症候群においても有効性が高い新規治療として注目されているのは、自己末梢血幹細胞移植を伴う高用量化学療法とサリドマイド療法です。末梢血幹細胞移植は非常に効果の高い治療法です。しかし、大量の抗ガン剤を使用するリスクがあるため、状態の悪い患者さん、高齢の患者さんでは行えません。

サリドマイドは骨髄腫治療薬としての有効性は確立されており、クロウ・フカセ症候群に対する長期間の維持療法としての有効性も報告されています。サリドマイドによる改善は移植療法と比較すると緩やかですが、状態の悪い患者さんや高齢の患者さんにも、比較的安全に使用できる利点があります。また、サリドマイドを移植前に投与することにより全身状態が改善し移植療法のリスクが減少する可能性もあります。しかし、サリドマイドは日本国内では骨髄腫の適応しかなく、過去の薬害の歴史から適応外使用が厳格に制限されている薬剤でもあり、現時点では、クロウ・フカセ症候群の患者さんに使用することはできません。そこで私達は、骨髄腫治療薬であるサリドマイドの適応をクロウ・フカセ症候群に拡大することを目的とした医師主導治験(J-POST trial)を企画しました。

J-POST trialは、長期投与試験・移植前投与試験の2試験で構成されます。前者はクロウ・フカセ症候群に対する長期間の維持療法としてのサリドマイド療法の有効性・安全性を示すための試験です。後者は移植療法前治療としての短期間投与の有効性・安全性を示すための試験です。クロウ・フカセ症候群は重篤な疾患であるため、質の高い臨床試験の試みは国際的に見ても現時点ではありません。また、患者数が少ないために、薬剤の有効性・安全性を証明する臨床試験を製薬企業に期待することもできません。

私たちはこれまで多くのクロウ・フカセ症候群の患者さんを診療し、患者さんの痛みを肌で感じ、生の声を聞いてきました。私たちは、J-POST trialをクロウ・フカセ症候群治療の質向上の第一歩とすることを最大の目的としています。ぜひ、皆様のお力をお貸しくださいますよう心よりお願い申し上げます。

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