千葉大学大学院医学研究院 神経内科学
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研究グループ
神経免疫学(GBS) 多発性硬化症グループ(MS)
重症筋無力症(MG) 臨床神経生理学
神経遺伝学 自律神経グループ
泌尿神経学グループ パーキンソン病グループ
神経放射線グループ(MRI) 神経放射線グループ(核医学)

神経免疫学(GBS)
責任者 メンバー
研究の理念・目標 研究の軌跡・業績
責任者
森 雅裕 (講師)
メンバー
森 雅裕 (講師)
三澤 園子 (助教)
金井 数明 (助教)
澤井 摂 (助教)
磯瀬 沙希里 (医員、大学院生)
谷口 順子 (医員、大学院生)
澁谷 和幹 (医員、大学院生)
関口 縁 (医員、大学院生)
那須 彩子 (医員、大学院生)
藤巻 由美 (医員、大学院生)
能登 祐一 (医員、大学院生)
研究の理念・目標
患者さんに基づいた研究、患者さんに還元できる研究を目標とし、現在、上記のメンバーで、日夜がんばっています。
研究の軌跡・業績
1.Guillain-Barré症候群(GBS)
 Guillain-Barré症候群の病態の解明をめざし電気生理学的アプローチを中心とした研究を継続しています。これまで、軸索型Guillain-Barré症候群では運動神経終末で伝導ブロックが生じておりその機序はNaチャネル機能障害によること、伝導ブロックの解消に対応して臨床的に急速な回復がみられることを示してきました(Kuwabara et al., Ann Neurol 2002; Hiraga et al., Neurology 2003, 2005)。また、GM1、GM1b、GD1a、GaNAc-GD1aの4種のガングリオシドが軸索障害と強く相関し、軸索型GBSの標的分子であることをほぼ確立しました(Ogawara et al., Ann Neurol 2001; Kuwabara, Drugs 2004)。現在は、Guillain-Barré症候群の新たな電気診断基準の作成を目標としイタリアと共同研究を進めています。

2.慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)
 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に関しても、電気生理学的アプローチを中心に研究を進めています。これまで、CIDPが電気生理学的亜型に分類され、臨床的特徴・治療反応性が異なることを示しました(Misawa et al., Neurology 2000; Kuwabara et al., JNNP 2002、2006)。また、CIDPは通常予後良好の疾患ですが、一部に治療抵抗性かつ筋萎縮を伴い、非常に神経学的予後の不良な方々がいらっしゃいます。当グループにおけるラット後根神経節を用いた検討により、CIDPの血清が軸索伸展を阻害することが初めて示されました(Taniguchi et al., 2009)。今後は、血清中の軸索伸展阻害因子の探索及び治療へと研究を発展させる予定です。
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多発性硬化症グループ(MS)
責任者 メンバー
共同研究者 研究の理念・目標
研究の軌跡・業績
責任者
森 雅裕 (講師)
メンバー
森 雅裕 (講師)
鵜沢 顕之 (助教)
増田 冴子 (医員、大学院生)
武藤 真弓 (医員、大学院生)
内田 智彦 (医員、大学院生)
共同研究者
千葉大学大学院医学研究院 遺伝子生化学教室、千葉大学大学院医学研究院 病態解析学教室など
研究の理念・目標
多発性硬化症・視神経脊髄炎を中心とした神経免疫疾患の再発・診断マーカーの探索、病態解明、ひいては新規治療法の開発を目指して研究を続けています。同時に疫学的研究や症候学的検討など臨床的な検討も行い、日常臨床に根ざした研究になるよう心がけています。
研究の軌跡・業績
1) 近年、多発性硬化症から視神経脊髄炎が分離独立した疾患概念と考えられるようになりつつあります。この視神経脊髄炎は主にアメリカのグループにより患者血清中に水分子のチャンネルであるアクアポリンに対する抗体が認められることが発見されたことを契機に、研究がめざましいスピードで進行しています。我々はこのアクアポリン抗体を客観的かつ経済的に測定できるELISAという測定法の開発に世界で初めて成功し、これを報告しています。今後、さらによりよい測定法の開発や同抗体が病態とどう関わっているかなどの研究を推し進めていきたいと考えています。
2) サイトカインという免疫系の情報伝達物質に注目し、視神経脊髄炎で髄液IL-6が著明高値であることを世界で初めて報告しました。またIL-6は抗アクアポリン抗体を生み出すのを促す重要なサイトカインであることが他のグループから報告され、視神経脊髄炎の病気のメカニズムの中で重要な役割を果たすことが認識されています。今後ともサイトカインに注目し、新たな治療戦略を描きたいと考えています。
3) 当グループは従来より、再発マーカーの探査に力を注いでいます。これは、再発を早期、あるいは事前に察知できれば、早期治療、ひいては予後改善に結びつくと考えているからです。患者さんにすぐに利益を還元できる点で極めて有益な研究であり、さらにマーカーが見つかることにより病態の解明に大きく結びつく可能性を秘めている点でも重要な研究と考えています。
4) 神経免疫疾患の多くに感染症が深く関わっており、軸索型ギラン・バレー症候群など病気の直接の原因になっていると考えられているものも存在します。多発性硬化症も長年、感染症との関連は調べられてきたものの完全には解明されておらず、新しい発見が続いています。病態解明や新規治療法の開発にとって重要な側面があり、今後とも研究を続けていきたいと考えています。
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重症筋無力症(MG)
責任者 メンバー
研究の理念・目標 研究の軌跡・業績
責任者
川口 直樹 (講師)
メンバー
川口 直樹 (講師)
根本 有子 (千葉医療センター 神経内科)
宗像 紳
高橋 宏和
氷室 圭一 (川鉄千葉病院 神経内科)
研究の理念・目標
重症筋無力症(Myasthenia gravis: MG)治療の発展に寄与し、最適な治療を提供したいと考えている。免疫治療の積極的な導入によりMGの治療成績は改善しているが、今なおMG患者の1割以上が呼吸筋クリ―ゼを経験することが知られている。これら大変な苦痛を伴う球症状や呼吸筋クリ―ゼなどの病初期の症状不安定さをコントロールし、長期的な症状改善を目指しており、発症早期からの胸腺摘除を含む免疫治療導入について検討している。治療に伴う副作用などの不利益の軽減も重要な課題として検討している。さらに高齢発症、眼筋型などの臨床的特徴に合わせた治療戦略や抗MuSK抗体陽性、抗アセチルコリン受容体抗体陰性抗MuSK抗体陰性などの免疫学的背景に着目しての病態解析・治療戦略について検討している。
研究の軌跡・業績
日本におけるMG治療の現況を解析し、胸腺摘除・ステロイドを中心とした免疫治療が広く行われておりMGの治療成績が向上していることを示した。さらにサブ解析を行い、胸腺腫を合併しない高齢発症MGに対して胸腺摘除が有効である可能性を示した。
病初期に球症状や呼吸症状が存在したり、病状が不安定な場合に胸腺摘除に先んじてステロイドを使用することにより早期に筋無力症状を安定させることができ、手術侵襲に伴う呼吸筋クリ―ゼの発生を抑制できる可能性を示した。
難治例に対するカルシニューリン阻害薬やガンマグロブリン大量静注療法の有効性を示した。
抗MuSK抗体陽性MGを中心に、電気生理学的手法を用いた病態解析を行った。
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臨床神経生理学
責任者 メンバー
共同研究者 研究の理念・目標
研究の軌跡・業績
責任者
三澤 園子 (助教)
メンバー
三澤 園子 (助教)
金井 数明 (助教)
澤井 摂 (助教)
磯瀬 沙希里 (医員、大学院生)
谷口 順子 (大学院生)
澁谷 和幹 (医員、大学院生)
関口 縁 (医員、大学院生)
那須 彩子 (医員、大学院生)
藤巻 由美
能登 祐一
共同研究者
Hugh Bostock教授 (英国国立神経研究所)
David Burke教授 (シドニー大学生命科学)
研究の理念・目標
患者さんに基づいた研究、患者さんに還元できる研究を目標とし、現在、上記のメンバーで、日夜がんばっています。
研究の軌跡・業績
1. ヒト軸索イオンチャネル機能のin vivo解析
 閾値追跡法を用いた末梢神経軸索のイオンチャネル機能のin vivo解析は、非侵襲的に末梢神経のイオンチャネルレベルの病態を検討できる非常に画期的な手法であり、当グループの主要研究テーマの一つです。英国国立神経研究所のHugh Bostock教授、シドニー大学生命科学のDavid Burke教授のグループと共同し研究を進めています。これまで、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、ギラン・バレー症候群などにおいて、イオンチャネルレベルでの病態解析などの研究成果をあげてきました。現在は、球脊髄性筋萎縮症、神経原性疼痛(Misawa et al., JPNS 2009; Isose et al., 2009)などにおけるイオンチャネルレベルでの病態解析およびイオンチャネル作用薬の客観的治療効果判定などの試みを継続して行っています。

2. Crow Fukase症候群に対する新規治療法の開発
 Crow Fukase症候群は、形質細胞腫に伴い、末梢神経障害をはじめとする多彩な症状を呈する予後不良の疾患です。全国の推定患者数は約300-400例である稀少疾患であるため、現在まで、標準的な治療は確立されていません。当グループでは2003年より、当院血液内科と共同し、自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法(Kuwabara et al., Neurology 2006,2008)、サリドマイド療法(Kuwabara et al., JNNP 2008)、抗VEGFモノクローナル抗体療法(Kanai et al., Intern Med 2007)などの新規治療を行いこれまで良好な治療成績をあげてきました。現在では全国から治療を目的に多くの本症候群患者さんが紹介されてきており、全国有数の症例数をもとに、各治療法の有効性、安全性、有用性について系統的な検討を行っています。昨年度はこれまでの治療経験をもとに、国際的治療ガイドラインを発表することができました(Kuwabara et al., Cochrane Database Systematic Review 2008)。
 今年度はサリドマイドの本症候群への適応拡大を目指し、医師主導治験の実施を計画しています。

3. ビタミンB12超大量静注療法による軸索再生、神経再支配促進
 末梢神経疾患、脊髄前角疾患において、軸索再生及び萎縮筋への再支配の実現は、患者さんのQOLを向上させる上で非常に重要です。中枢神経においてはFGFやHGFによる神経保護、軸索再生促進が髄腔内持続投与により行われていますが、運動ニューロン軸索や末梢神経に対してはこれらの活性物質が血液神経関門を通過しないことにより、軸索再生の試みは進展していません。このデリバリーの問題が解決するまでの過渡期の治療の試みとして、2008年1月より、徳島大学神経内科、鹿児島大学神経内科、北神経内科平山記念クリニック、得丸医院のご支援を受け、若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)、脊髄性筋萎縮症、軸索変性型ニューロパチーを対象に、ビタミンB12超大量静注療法の末梢神経の軸索再生、神経再支配促進の有用性を検討する臨床試験を行っています。

4. 超音波による末梢神経・筋疾患診断の試み
 神経伝導検査、筋電図検査は、神経・筋疾患の診断に非常に有用ですが、検査に際し疼痛を伴うことが、一番の難点です。現在、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、Charcot-Marie-Tooth病、手根管症候群、糖尿病性ニューロパチー、筋炎、一部の不随意運動(Misawa et al., 2009)などに対し、超音波検査による痛みのない診断法の確立を目指しています。

5. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)における運動神経軸索のイオンチャネルの組織学的評価
 ALSにおけるこれまでの当グループの研究により、運動神経軸索のイオンチャネルの障害(興奮性Na電流の増大、抑制性K電流の低下)による過剰な興奮性増大が運動ニューロン死を加速させる可能性が指摘されています(Kanai et al., Brain 2006)。現在、この知見を組織学的に裏付けるために、ヒトALS剖検例の下位運動神経軸索のイオンチャネルの免疫染色を行っています。また、ALSモデルマウスにおけるイオンチャネル作用薬の神経保護効果の評価を行い、ALSの新たな治療作用点を見出す研究も進行中です。
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神経遺伝学
責任者 メンバー
共同研究者 研究の理念・目標
責任者
金井 数明 (助教)
メンバー
金井 数明 (助教)
澤井 摂 (助教)
澁谷 正幹 (医員・大学院生)
共同研究者
脊髄小脳変性症
安井 建一
中島 健二 (鳥取大)
JAMSAC(多施設共同研究)
野村 文夫(千葉大分子病態解析学)
てんかん
吉田 秀一
兼子 直(弘前大精神科)

神経遺伝学では、脊髄小脳変性症や多系統萎縮症などの神経変性疾患やてんかんなどの機能性神経疾患の遺伝学的側面を中心に研究を行っている。
研究の理念・目標
脊髄小脳変性症
遺伝性脊髄小脳変性症では日本で最も頻度の高いMachado-Joseph病とSCA6について、その疾患自然史の解明を中心に鳥取大などと多施設共同研究を行っている。このほか脊髄小脳変性症の新薬開発の臨床試験(治験)にも積極的に参加している。
また、脊髄小脳変性症を中心とした遺伝性神経疾患の遺伝カウンセリングについて、分子病態解析学と共同して推進している。
多系統萎縮症(MSA)については、東京大を中心とした多系統萎縮症の多施設共同研究グループ(JAMSAC)に参加し、MSAの分子遺伝学的研究及び自然史解明研究に協力している。

運動ニューロン疾患
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)について自主臨床試験を行い、現在他にも医師主導治験が進行中のLH-RHアナログ療法による治療の下位運動ニューロンに対する生理学的効果についての研究を行っている。

てんかん
遺伝性てんかん症候群として頻度の高い、電位依存性Naチャネル遺伝子SCN1Aが関与するてんかん症候群のgenotype-phenotype correlationなどを中心に、イオンチャネル遺伝子変異による遺伝性てんかん症候群などについて弘前大精神科などと共同研究を行っている。

その他遺伝性神経疾患
その他、遺伝性パーキンソン症候群・ミトコンドリア病・家族性痙性対麻痺などについて、主にその臨床的側面を中心に研究を行っている。
また遺伝性神経疾患全般に関し、その遺伝カウンセリングについての研究と教育を行っている。
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自律神経グループ
責任者 メンバー
共同研究者 研究の理念・目標
研究の軌跡・業績
責任者
朝比奈 正人 (准教授)
メンバー
朝比奈 正人 (准教授)
朝比奈 真由美 (講師)
平野 成樹(助教)
山中 義崇 (特任助教)
福島 剛志 (松戸市立病院 神経内科)
藤沼 好克 (君津中央病院 神経内科)
片桐 明 (君津中央病院 神経内科)
榊原 優美 (千葉県済生会習志野病院 神経内科)
児山 遊 (栗山中央病院 神経内科)
赤荻 悠一 (千葉県循環器病センター 神経内科)
Anupama Poudel (大学院生)
共同研究者
CJ Mathias (ロンドン大学、教授)
村田 淳 (千葉大学リハビリテーション部、診療教授)
榊原 隆次 (東邦大学医療センター佐倉病院、准教授)
本間 甲一 (千葉県循環器病センター、神経内科部長)
篠遠 仁 (旭神経内科リハビリテーション病院、副院長)
島田 斉 (放射線医学総合研究所)
研究の理念・目標
 自律神経は全ての臓器・器官の制御を行う生存に必須の神経です。神経疾患ではしばしば自律神経が障害され、その評価は神経疾患の診断、重症度評価、生命予後評価に役立ちます。我々は神経疾患の診断法および臨床評価法の発展を目的に、新しい自律神経検査法を開発し、神経疾患における自律神経障害についての臨床研究をしています。

 また、自律神経は情動・意識・記憶といった高次機能と密接な関係にあり、「手に汗握る(緊張に伴う手掌部の発汗)」、「目を輝かせる(気持ちの高揚に伴う瞳孔の散大)」、「胸の高まり(興奮に伴う頻拍)」など情動と関係する表現がたくさんあります。解剖・生理学的にも自律神経と辺縁系は密接な関係にあります。我々は、自律神経機能評価が、認知機能や情動の評価に応用できると考え、認知症や辺縁系脳炎などにおける自律神経機能の研究を行っています。

 さらに、自律神経症状の病体機序を明らかにするために、自律神経機能と関連する神経ペプチドに関する研究も行っています。
研究の軌跡・業績
1. 手のひらの汗
 手に汗握る、額に汗して働く、冷汗をかくなど汗に関する表現はたくさんあります。汗の重要な役割のひとつは体温調節で、「額に汗して働く」時の汗はbrain coolingに重要です。一方、手のひらにかく汗には滑り止めの役割があり、ものをしっかり握る時や、本のページをめくるなどの細かな作業に必要です。猫や犬も足の裏に汗をかきますが、猫の足の裏の汗を出ないようにすると、うまく木を登れなくなると言われています。手のひらの汗を調節しているのは自律神経です。私たちは自律神経機能の評価を目的に手のひらの汗を測定し、新しい検査法として確立させるための研究を行ってきました。検査方法は日本自律神経学会編の「自律神経系脳検査」のp243-248(文光堂、2007年)を参照ください。手のひらの汗に関する解説は総説「手掌・足底の発汗」(自律神経2007;44:368-374)をご参照ください。

2.皮膚血流の調節機能
 皮膚の血流は様々な刺激で変化します。例えば手のひらの血流は深呼吸や精神的負荷で一過性に低下します。この反応は皮膚血管運動反射または交感神経性皮膚血流反応と呼ばれています。私たちはこの反応の測定を自律神経機能評価に応用し、研究を進めてきました。この検査により非侵襲的かつ簡便にヒトの自律神経機能を評価することが可能で、神経疾患の診断・評価に役立っています。検査法は検査方法は日本自律神経学会編の「自律神経系脳検査」のp249-252(文光堂、2007年)を参照ください。
 また、新しい検査法として皮膚の局所加温に対する皮膚血流反応を測定しています。この反応は日常的には熱いお湯に体の一部を浸けると、お湯に入っていた部分の皮膚だけが赤くなる現象として知られています。ごくありふれた生理現象ですが、その機序は案外分かっていません。主に末梢感覚神経と血管内皮からのNOが関与していると考えられていますが、我々はこの反応に自律神経も関与していると考えています。この仮説が正しければ簡便な自律神経機能検査法として応用できます。私たちはすでに自律神経障害を持つ複数の神経疾患でこの反応が障害されることを報告しています。

3.認知症の自律神経障害
 なぜ認知症の自律神経機能を研究するのか疑問に思うかもしれません。認知症で障害される記憶力には海馬と呼ばれる部分が重要です。この海馬は辺縁系と呼ばれるシステムの一部です。私たちはこの辺縁系が障害される辺縁系脳炎という病気で手のひらの発汗が障害されることを報告しました。辺縁系が障害される認知症では自律神経機能に異常が出る可能性があり、私たちは自律神経機能の評価が認知症の診断・鑑別に役立つと考えて研究を進めています。

4.パーキンソン病における自律神経障害
 パーキンソン病は手がふるえたり、動作が遅くなったり、筋の緊張が高くなる病気で、社会の高齢化とともに増加しています。その病態に関する研究の発展には目覚ましいものがあり、根本的治療開発のきざしが見えてきました。もし根本的治療をするならば発症してからでは遅いので、発症前から治療を開始したいと誰もが考えます。このため、パーキンソン病の発症前診断に関心が集まっています。そこで注目をあびたのはドイツ、ゲーテ大学のBraak教授が提唱した仮説です。この仮説ではパーキンソン病の病変が自律神経系から始まることになり、自律神経機能の評価がパーキンソン病の発病前診断に役立つ可能性があります。私たちは発病前診断の観点からパーキンソン病の心循環系、皮膚交感神経系、消化管系の自律神経機能の研究を進めてきました。

5.自律神経障害の治療
 自律神経は生存に必須です。自律神経障害に適切に対応しないと生命予後は悪くなります。私たちは自律神経障害の新しい治療法についても研究をしています。

追記
 イギリスのロンドンにQueen Squareという小さな公園(広場)があります。Queenとはアン女王(1665-1714)のことで、この公園にはアン女王の像が立っています。そして、ふたつの病院といくつかの神経医学・科学関連の施設が公園をとりまいています。そのふたつの病院のひとつがthe National Hospital for Neurology and Neurosurgery (NHNN)で日本語にすると国立神経内科・神経外科病院となります。この病院をQueen Square Hospitalと呼んでいる人もいるようです。1859年に設立されたこの病院は多くの著名な神経学者を輩出した神経学の聖地のひとつで、千葉大学神経内科からも多くの人が留学しています。千葉大学自律神経グループが共同研究をしているMathias教授は、NHNN自律神経ユニットの責任者で、臨床自律神経学領域で多くのすぐれた業績を残しています。また、Mathias先生の恩師であるBannister卿は臨床自律神経学の権威であるばかりでなく、学生時代に1マイル走の世界記録を出し、英国のスポーツ大臣も務めた国民的英雄です。アメリカとは違う、ちょっとウェットでウイットに富んだ研究に興味がある方は、Queen Squareへの留学はいかがでしょうか。
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泌尿神経学グループ
責任者 顧問
メンバー メンバー(他科)
研究の理念・目標 研究の軌跡と業績
責任者
内山 智之 (助教)
顧問
服部 孝道 (名誉教授)
榊原 隆次 (東邦大学医療センター佐倉病院 准教授)
メンバー

山本 達也 (助教)
伊藤 敬志 (ポスドク、現在は松戸市立病院神経内科勤務)

メンバー(他科)
山口千晴 (医学部修士、検査部検査技師(排尿機能検査士))
阿波裕輔 (泌尿器科元助教)
矢野 仁 (泌尿器科助教)
柳澤 充 (泌尿器科医員、大学院生)
看護師さん有志 (泌尿器科、消化器内科、婦人科、手術部から)
研究の理念・目標
 当グループは、先々代の服部先生(神経内科名誉教授)と安田先生(元泌尿器科准教授/現独協医科大学泌尿器科教授)が設立し、先代の榊原先生(東邦大学医療センター佐倉病院神経内科准教授)と山西先生(獨協医科大学越谷病院泌尿器科准教授)が発展させた本邦初の神経泌尿器学(泌尿神経学)の研究グループです。本研究領域は、神経内科と泌尿器科の境界であるため、国内外ともに専門家がまだ少ないのが現状ですが、神経内科、泌尿器科のほか、婦人科、脳外科、精神科、整形外科、消化器内科などの各科において、診療上非常に重要な分野であるとともに、高齢者社会化に向けて需要が増大し、今後さらに注目と関心が高まる分野であると考えています。実際、頻尿や尿失禁、過活動膀胱、male LUTSなどの言葉をCMや広告などで見聞きする機会が最近非常に増えています。そのほか、従来から、排尿機能と関連の深い排便機能や性機能といった仙髄領域の自律神経機能および排尿機能などと関連しうるさまざまな神経機能の研究にも携わっています。
 本グループでは、診療(各施設から多数のコンサルテーションを含む)・啓蒙活動のほか、研究(臨床・基礎)・発表を積極的に行うようにしています。その結果、国内だけでなく海外の幾つもの教科書・総説の執筆を担当するなど国際的にも多大な貢献を行っているほか、実際の診療ではよりよい医療の提供を実現させています。現在は、泌尿器科の市川教授のもと阿波先生、矢野先生、柳澤先生ら、検査部の野村教授のもと山口さんらとともに、従来の「千葉大学方式」を継承し、神経泌尿器学をさらに発展させ、得られた成果を日常診療に還元すべく、日々努力しています。
研究の軌跡と業績
1.排尿機能検査・骨盤内臓器機能検査外来
 毎週月曜日に、泌尿器科、検査部と共同で、学内からの予約、学外からの紹介を受け、排尿機能検査(尿流検査、残尿検査、膀胱内圧検査、内圧尿流検査、括約筋筋電図、尿道内圧検査など)を、平均6-8人 / 日、年に約300人程度(検査件数としては1500件以上)行っています。リジスキャンを用いた勃起不全の検査、排便機能検査(大腸通過時間測定、直腸肛門機能検査)、磁気刺激を用いた特殊検査なども行っています。
排尿機能検査室の面々

2.研究テーマ
 月に一度の勉強会/症例検討会等で研究テーマについて討論を行い、切磋琢磨しながら同時にいくつもの研究を進めています。
<臨床>
(神経疾患の)排尿障害、骨盤内臓器機能障害の実態および病態解明
千葉県下の過活動膀胱診療における一般医家の意識調査 (学外共同研究)
千葉県下における過活動膀胱患者の実態調査と指南 (学外共同研究)
各科における過活動膀胱患者の実態とその原因について (学内共同研究)
神経・泌尿器科疾患の排尿、骨盤内臓器機能障害の特徴についての再考
排尿障害とその他の神経・精神機能との関連について

神経疾患の排尿障害に対する適切な治療法または新規治療法の開発
女性の排出障害に対する新規治療法の開発 (自主臨床試験)
排尿障害に対する会陰部連続磁気刺激療法の開発 (治験)
排尿障害改善薬の他の神経機能への影響について (学外共同研究)
レーザーを用いた新規治療法の開発 (産学連携)

排尿、骨盤内臓器機能の新しい評価法の考案、検査法の開発
ある手法を用いた尿意の評価法の開発 (学内共同研究)
排尿機能検査法の評価法の工夫と再考

<基礎>
(神経疾患の)排尿障害、骨盤内臓器機能障害の病態機序
パーキンソン病、認知症、脊髄損傷、膀胱炎など各病態モデルにおける排尿障害、骨盤内臓器機能障害の病態機序の解明 (学外共同研究)
 ・単一細胞外電位、電気刺激による高位中枢の同定
 ・マイクロダイアリーシス法による機能関連物質の同定
 ・バイオセンサー法による機能関連物質のリアルタイム測定
 ・c-Fosら遺伝子・蛋白発現解析による機能関連中枢の同定

排尿障害に対する適切な治療法または新規治療法の開発
排尿筋過活動に対する新規治療薬の開発
排尿機能に対する各種療法の影響と効果について
排尿障害改善薬の神経機能および神経の変性に対する影響について
レーザーを用いた新規治療法の開発 (産学連携)

動物実験における排尿、骨盤内臓器機能の新しい評価法の考案、検査法の開発
マウスの排尿機能の新規評価法の開発


3.学会・研究会活動
国内学会: 日本神経学会、日本自律神経学会、日本排尿機能学会、日本神経治療学会日本脊髄障害医学会、日本老年泌尿器学会、千葉県臨床検査学会
国内研究会: 千葉過活動膀胱研究会、関東排尿機能検査(Urodynamics Study)クラブ
国際学会: 国際尿禁制学会(International Continence Society: ICS)、国際運動障害学会(Movement Disorder Society: MDS)、Mental Dysfunctions & Other Non-Motor features in Parkinson’s Disease(PDMENT)、国際自律神経科学学会(International Society of Autonomic Neuroscience: ISAN)、米国自律神経学会(American Autonomic Society: AAS)
などで研究発表・討論(含シンポジウム)を行っています。

ICS2008(カイロ)にてFowler先生と

4.受賞
山口千晴さんが29回千葉県臨床検査学会 学術奨励賞(2008)を受賞しました。

5.特許
研究成果の一つを現在特許申請中(申請者 内山智之)です。

6.共同研究
学内では、検査部(真々田さん、山田さん)、脳神経外科(佐伯先生、樋口先生、小林先生)、消火器内科(新井先生、丸岡先生、新井先生)、呼吸器内科(巽先生)、代謝内科(横手先生)、放射線科(内田先生)、神経情報統合生理学(清水先生、中澤先生、松澤先生)、遺伝子生化学(滝口先生、岩瀬先生)、機能ゲノム学(関先生)、フロンティアメディカルセンター(五十嵐先生)。学外では、獨協医科大学越谷病院泌尿器科(山西先生)、山梨温泉リハビリテーション病院/山梨大学(芳山先生)、千葉東病院(吉山先生)の各先生方にご指導をいただいています。平成21年度もひきつづき研究協力をお願いしています。
産学連携:ミナト医科学、パラマ・テック、日本メドトロニックなどの企業から研究の技術的指導をいただいています。
(文責:内山智之)
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パーキンソン病グループ
責任者 メンバー(学内)
メンバー(学外) 脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)班
研究の理念・目標 研究の軌跡と業績
責任者
朝比奈 正人 (医師・講師)
メンバー(学内)
内山 智之 (医師・助教)
山本 達也 (医師・助教)
メンバー(学外)

篠遠 仁 (医師)
青墳 章代 (医師)
平野 成樹 (医師)
島田 斉 (医師)

脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)班
脳神経外科 佐伯 直勝 (医師・教授)
樋口 佳則 (医師・助教)
青柳 京子 (医師・研究生)
精神神経科 伊豫 雅臣 (医師・教授)
椎名 明大 (医師・助教)
リハビリテーション部 村田 淳 (医師・教授)
浅野 由美 (医師・助教)
山中 義崇 (医師・医員)
藤沼 好克 (医師・医員)
長谷川 啓子 (言語聴覚士)
宇治 百合子 (言語聴覚士)
古川 誠一郎 (理学療法士)
阿部 祐樹 (理学療法士)
白鳥 博之 (作業療法士)
消化器内科 横須賀 收 (医師・教授)
新井 誠人 (医師・助教)
丸岡 大介 (医師・医員)
新井 英二 (医師・医員)
呼吸器内科 巽 浩一郎 (医師・教授)
分子病態解析学 澤井 摂 (医師・助教)
救急部・集中治療部 高井 信幸 (医師・医員)
検査部 真々田 賢司
工学研究科 人工システム科学専攻 メディカルシステムコース
田村 俊世 (教授)
関根 正樹 (助教)
フロンティアメディカル工学研究開発センター 脳機能計測解析研究部門
下山 一郎 (医師・教授)
千葉県循環器病センター 脳神経外科
永野 修 (医師)
研究の理念・目標
 当グループは、篠遠先生、青墳先生、平野先生、島田(斉)先生達とともに、現在は、朝比奈先生を責任者とし、パーキンソン病および類縁疾患の病態解明、治療法の確立など、研究成果を日常診療に還元することを目標に、patient orientedな臨床研究およびdisease orientedな基礎研究を行なっています。
 また県内では数少ない脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)を行なう施設であることから、各分野の専門家でチームを形成し、術前の適応の是非や術後の状態・時期に応じた治療方針の決定・是正を、運動・非運動症状の詳細な評価に基づいて行なっています。
研究の軌跡と業績
1.パーキンソン病外来
 通常外来での診療のほか、H21年から水曜日午後にパーキンソン病外来を新たに開設し、診断困難例および難治性の運動・非運動症状に対する相談、また脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)の適応に関する相談などを行なっています。

2.臨床研究
 パーキンソン病症状、特に非運動症状に注目し、いくつかのテーマのもと研究を開始しています。

3.基礎研究
 パーキンソン病モデル動物などを用いて、病態解析や新規治療法の試み、さらには脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)の作用機序および安全性に関する研究を開始しています。

4.学会・研究会活動
国内学会: 日本神経学会、日本自律神経学会、日本排尿機能学会、日本神経治療学会、Movement Disorder Society Japan (MDSJ)、日本定位・機能神経外科学会、関東機能的脳外科カンファレンス
国際学会: 国際運動障害学会(Movement Disorder Society: MDS)、Mental Dysfunctions & Other Non-Motor features in Parkinson’s Disease(PDMENT)、国際自律神経科学学会(International Society of Autonomic Neuroscience: ISAN)、米国自律神経学会(American Autonomic Society: AAS)
などで研究発表・討論を行っています。

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神経放射線グループ(MRI)
責任者 メンバー
研究の理念・目標 研究の軌跡・業績
責任者
伊藤 彰一 (講師)
メンバー
伊藤 彰一 (講師)
牧野 隆宏 (医員、大学院生)
小川 喜胤 (医員、大学院生)
米津 禎宏 (医員、大学院生)
島田 斉
白井 和佳子
研究の理念・目標
脳・脊髄MRIは、神経内科診療で頻用される診断/評価ツールである。脳・脊髄に関する解剖学的、神経学的、放射線医学的な基本的知識を習得し、診療現場で活用することを目標とする。
神経変性疾患や神経免疫疾患などのMRI診断の精度を向上させるため、疾患特異的な新しいMRI所見を見いだすことを目標とする。使用する画像モダリティは、通常の神経内科臨床で用いられるもの(T2強調画像、T1強調画像、FLAIR画像など)が望ましい。
拡散テンソル画像、MRスペクトロスコピーなどを用いて、系統的な脳変性や、潜在性脳病変の非侵襲的な評価を行い、病態理解の向上に努める。
研究の軌跡・業績
① 多系統萎縮症のMRI診断
多系統萎縮症における被殻変性の簡易評価法として、被殻後外側部の線状化(平坦化)が有用であることを見いだした(Ito S, Shirai W, Hattori T. Mov Disord 2007;22:578-81)。また、被殻変性を示す各所見(T1高信号、T2高信号、T2低信号、萎縮)の中で、T1高信号がT2高信号と同等以上に有用であることをROC解析により証明した(Ito S, Shirai W, Hattori T. Am J Neuroradiol 2009;図1)。2009年4月現在、橋底部の十字徴候と縦走/横走線維の変性との関連について、拡散テンソル画像(トラクトグラフィー)を用いて検討中である。
図1 図1

② Machado-Joseph病のMRI診断
Machado-Joseph病の淡蒼球変性を表す所見として、淡蒼球内側の線状T2高信号病変が重要であることを検証し、かつ、その非特異性についても明らかにした(Shirai W, Ito S, Hattori T. Am J Neuroradiol. 2007;28:1993-5;図2)。また、Machado-Joseph病の橋被蓋萎縮を示す所見として、顔面神経丘の平坦が有用であることを証明した。
図2 図2

③ Neuromyelitis optica (NMO)のMRI診断
Neuromyelitis optica (NMO)と多発性硬化症の鑑別に有用な所見として、造影T1強調画像における“Cloud-like enhancement”を見いだした(図3)。また、NMOと多発性硬化症の病変分布や性状の異同についてもレビューを行った。
図3 図3

④ その他のMRI診断
以下の疾患についてMRI診断に関する報告を行った。
・アルツハイマー病
・進行性核上性麻痺
・ミトコンドリア脳筋症(MERRF)
・Wolfram(DIDMOAD)症候群
・神経サルコイドーシス
・抗VGKC抗体陽性脳炎
・高血圧性脳症
・脳幹梗塞
・脊髄炎
・後脊髄動脈症候群
・亜急性脊髄連合変性症アトピー性皮膚炎における頚椎変性
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神経放射線グループ(核医学)
責任者 メンバー
共同研究者 研究の理念・目標
研究の軌跡・業績
責任者
篠遠 仁 (旭神経内科リハビリテーション病院 副院長、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 上席研究員)
メンバー
篠遠 仁 (旭神経内科リハビリテーション病院 副院長、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 上席研究員)
平野 成樹 (JR東京総合病院 脳神経内科 医長、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 客員協力研究員)
島田 斉 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 博士研究員)
共同研究者
※順不同, 敬称略
David Eidelberg, MD (Department of Experimental Medicine, North Shore-Long Island Jewish Health System)
Zbigniew K. Wszolek MD (Department of Neurology, Mayo Clinic of Jacksonville)
須原 哲也 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ リーダー)
伊藤 浩 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ チームリーダー)
樋口 真人 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ チームリーダー)
江口 洋子 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 運営企画ユニット 臨床研究支援室 研究員、東京歯科大学 市川総合病院 精神科 客員研究員)
入江 俊章 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子認識研究グループ)
福士 清 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子認識研究グループ)
青木 伊知男 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 先端生体計測研究グループ 計測システム開発チーム チームリーダー)
小畠 隆行 (放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 先端生体計測研究グループ 機能融合研究チーム チームリーダー)
平野 好幸 (LFMI、NINDS、NIH、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 先端生体計測研究グループ 機能融合研究チーム)
黄田 常嘉 (順天堂大学医学部 精神医学教室 准教授、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 客員協力研究員)
佐藤 康一 (帝京大学ちば総合医療センター メンタルヘルス科 講師)
田中 典子 (東京女子医科大学 脳神経外科 講師、放射線医学総合)研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ 客員協力研究員
三好 美智恵 (広島大学大学院 脳神経内科学、放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ)
下山 一郎 (千葉大学フロンタルメディカル工学研究開発センター 副センター長、脳機能計測解析研究部門 教授)
青墳 章代 (千葉市立青葉病院 リハビリテーション科 部長)
朝比奈 正人 (千葉大学大学院 神経内科学 講師)
森 雅裕 (千葉大学大学院 神経内科学 講師)
早川省 (千葉東病院 神経内科、千葉大学大学院 遺伝子生化学 非常勤講師)
研究の理念・目標
 当研究グループでは、主に各種神経変性疾患を対象に、ポジトロンCT (PET)やシングルフォトンCT (SPECT)を用いた臨床研究を行っている。
 PETやSPECTは、脳血流や糖代謝・酸素代謝のみならず、神経伝達物質やその代謝酵素の状態を定量的に評価することが可能である。これらの情報とMRIによる形態評価や、Voxel-based morphometry (VBM)などの統計画像解析で得られた情報を統合する事で、神経疾患の病態解明や早期診断法、治療評価法の開発を目指す。
研究の軌跡・業績
1. PET
1-1. アミロイドイメージング
 現在最も注目を浴びている画像診断の一つに、アミロイドイメージングがある。アルツハイマー病(AD)を発症するよりはるか前の、脳萎縮、血流低下、糖代謝の低下などを認めるより以前の時期に、脳内におけるアミロイドの沈着を可視化する事が出来る。
 我々は[11C]PIBを用いて、ADの超早期診断、ADや軽度認知障害(MCI)の追跡研究、様々な認知症性神経変性疾患におけるアミロイド沈着のin vivo測定を行っている。また、MCIから初期ADに移行する際の客観的な指標と基準値を探るための多施設共同研究(J-ADNI)にも参加している。

Figure 1 [11C]PIB PETによるアルツハイマー病のアミロイドイメージング
 左図の上段は健常対照、下段はアルツハイマー病患者のアミロイドイメージングの結果である。健常者では大脳白質に非特異結合を認めるのみで、大脳皮質には明らかな集積を認めない。アルツハイマー病患者では広範な大脳皮質で、有意な集積(=アミロイドの沈着)を認める。
 右図は画像統計解析ソフト(SPM5)を用いて、健常対照に比して、アルツハイマー病患者で有意なアミロイド沈着を認める部位を示したものである。

1-2. 脳内アセチルコリン神経系機能評価
 脳内アセチルコリン神経系は認知機能、睡眠・覚醒、運動などに関与している。
 我々はアセチルコリンのアナログである[11C]MP4A、[11C]MP4Pを用いたPET検査を行い、様々な神経変性疾患における、脳内アセチルコリンエステラーゼ活性測定を行っている。

Figure 2 [11C]MP4P PETによるParkinson病の脳内アセチルコリン神経系の評価
 発症三年以内で未加療のパーキンソン病(de novo PD)5例と、健常対照26例の二群を比較し、de novo PD群で有意なコリンエステラーゼ活性の低下を認める部位を示したものである(FDR-cluster-corrected p < 0.05, extent threshold > 100)。パーキンソン病においては、発症早期より後頭葉優位のコリン神経系の障害を認める事が明らかとなった。

2.Voxel-based morphometry (VBM)
 近年用いられている頭部MRIの画像統計解析手法の一つに、voxel-based morphometry (VBM)がある。VBMを駆使する事により、従来肉眼では判別が困難であった、軽度な大脳皮質の委縮までをも、鋭敏に捉える事が可能であり、構造MRIからより多くの情報を引き出す事が出来る。
 現在各種神経変性疾患において、PETから得られた情報とも組み合わせた解析を行っている。

Figure 3a VBMの処理手順
 撮像した個人の構造MRIを、アフィン変換(線形変換)で傾きを修整した後、灰白質/白質抽出という処理を行い灰白質部分のみを抽出する。その後ガウスカーネルを重畳し、平滑化処理を行った画像を用いて、画像統計解析を行う。

3.others
 既述のもの以外にも、様々なトレーサ/プローブを用いたPET検査、PETの新しい解析手法の検討、主成分分析をはじめとする様々な技術を用いたPET画像や構造MRI画像の解析の他、高磁場MRI(7Tesla)を用いた神経疾患モデル動物の解析などを行っている。

Figure 3b VBMによる大脳皮質基底核変性症における大脳皮質萎縮の評価
 図はCBD7例と健常対象16例の二群を比較し、CBD群において有意な大脳皮質の萎縮を認める部位を示したものである。CBD群においては、症状優位側の対側が同一側になるよう、画像をflipしている。CBD群において、左右差のある特徴的な大脳皮質の萎縮が明らかとなっている。

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