千葉大学 メンタル・サポート医療人とプロの連携養成 Mental Health Excelsior Program/文部科学省 課題解決型高度医療人材養成プログラム(精神関連領域)


  (2018~2022年度)
  ◎2023年度以降募集はこちら

文部科学省の課題解決型高度医療人材養成プログラムとは

文部科学省の課題解決型高度医療人材養成プログラムは、「医療現場等で課題となっている事柄に貢献できる人材の養成を公募テーマに設定し、 これについて大学が新たに取組を開始することで、全国の大学・大学病院における人材養成機能を一層強化し、我が国が抱える医療現場の諸課題等に 対して、科学的根拠に基づいた医療を提供できる優れた医療人材を養成することを目的」として、平成26年度より実施されております。
平成30年度は、新たに「精神関連領域」のテーマで、「多様化かつ増大する精神医療に係るニーズへの対応や、患者・家族を支える医療・福祉等の 支援体制について、関係機関とのネットワークを構築し、職種を横断した体系化された新たな教育プログラムを確立することにより、精神医療及び 関連疾患に特化した知識・技能を有する医療人材の養成に継続的に取り組むとともに、これらの取組・成果等の普及を図る」プログラムが公募され、 千葉大学大学院医学研究院の「メンタル・サポート医療人とプロの連携養成」がその一つとして採択されました。

テーマに関する課題

最近15年間で、精神疾患の患者は200万人から390万人へと倍増しています(2014年、患者調査)。
一方、精神疾患を有する約4分の3の地域住民が未受診(2016年、世界精神保健日本調査)という、メンタルの問題に対応可能な医療体制が十分とは 言えない状況です。
このような中で、機能分担をし、精神科専門医は難治者用の高度な知識・スキルを、一般医療のかかりつけ医師、歯科医師、薬剤師、看護師等は 軽症者用の基本的な心の支援スキルを身につける必要があります。
また、薬物依存、ギャンブル依存の問題にも対応できる知識とスキルが必要とされます。

事業概要

一般日常診療の場で遭遇する軽症の不眠、不安、うつ、認知症、依存症等を持つ患者および家族が向精神薬依存にならないよう、医師、歯科医師、 看護師、薬剤師、コメディカル等がセルフヘルプをガイドする月1回30分計6回の簡易(低強度)認知行動療法的アプローチによる相談支援を行い メンタルサポート医療人(メンサポ:英国でのPsychological Wellbeing Practitionerに該当)養成をオンライン授業やネット教材を活用して行います。
同時に、精神科医が統合失調症や双極性障害等の難治性精神疾患や司法精神保健、ギャンブル依存に対して生物ー心理ー社会的観点からの適切な診断と 薬物治療を提供できるメンタルプロフェッショナル(メンプロ)養成を行います。
一般医療者と精神科医が共に学ぶ症例検討会を演習として行い、うつ不安尺度のデータを基にした軽症者と重症者の相互紹介ネットワークモデルを 推進し、全国に普及させたいと考えています。

大学・研究科等の教育理念・使命・人材養成目的との関係

千葉大学医学部および大学院医学研究院のミッションは、学習成果基盤型教育(Outcome Based Education)と医学部、薬学部、看護学部の3学部が 同じキャンパスの付属病院で行う多職種連携教育(InterProfessional Education)によるチーム医療人養成です。
司法精神保健学、社会精神医学、子どものこころの発達研究に関する人材養成の従来実績を踏まえ、医師、歯科医師、看護師、保健師、助産師、 薬剤師に加え、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、公認心理士、介護職等を対象にしたこころの支援に関する職種を横断した体系化された 新たな教育プログラムは地域ネットワークのチーム医療教育と強い関係を有します。
また、総合大学として教育学部や文学部心理学科と文理横断で連携することも重視しており、こころの支援を行う教育者、心理研究者等の養成にも つながると考えています。

連携体制

すでに、千葉大学は、地域医療機関との連携として千葉大学関連病院会議としての体制が2015年より構築されています。
また、精神科専門領域では、統合失調症の難治化の過程で現れるドパミン過感受性精神病の治療、精神科救急等に関する県内精神科病院との ネットワークが構築されています。
さらに、2010年から、精神科医、心理職等向けの強迫、不安、慢性うつ、自閉スペクトラム等の重症患者への高強度(週1回50分16週)の 認知行動療法士コースを立ち上げ、8年間で100人を超える医師、心理職、看護師、精神保健福祉士などの多職種の人材養成を行ってきており、 千葉県心理士会との連携もできています。
事業責任者の清水栄司教授は、千葉県自殺対策連絡会議の委員、柏市自殺対策連絡会議の委員、船橋市自作対策連絡会議の議長を務めており、 メンタルヘルス問題に関して、自治体との連携体制ができています。

これらの連携体制に加えて、今回、千葉県庁健康福祉部医療整備課医師確保・地域医療推進室と連携することで、精神保健福祉相談を実施する 自治体や保健センター(保健所)等と連携、協力を得ながら本事業の千葉県内の精神科専門医療機関および一般医療機関とのネットワークの展開に 努めます。
また、「子どもの心」相談医制度、プライマリ・ケア認定医制度、認定産業医制度、精神科専門医、精神科専門薬剤師、精神科専門看護師などの 既存の制度、医師会・歯科医師会・薬剤師会の三師会、看護協会、作業療法士会、言語聴覚士会等と職種を横断した連携体制を構築していきます。
一方で、患者や家族と連携体制をとるために、こころの問題を把握するための、うつや不安の自記式の症状評価質問紙への回答協力を依頼し、 本プログラムで養成した医療人の日常診療での客観的評価に参加してもらうだけでなく、さらに、外部評価委員会に参加してもうらう予定でいます。
今回の人材養成プログラムでは、地域包括ケアシステムの構築の中で、医療機関のみならず、障害福祉・介護の現場や、産業保健、学校教育の 現場でも、セルフヘルプ形式の低強度の認知行動療法は活用可能であるため、医師、歯科医師、看護師、薬剤師に加え、介護職、産業医、産業保健師、 学校医、養護教諭などとも連携していくものです。

キャリアパス教育・キャリア形成支援

精神科医向けの大学院本科コースでは、精神科専門医および精神保健指定医を取得する専門職としての方向性と医学博士を取得する教育職としての方向性、 さらに、精神科医としての知識とスキルを獲得する熟練者としての方向性をバランスよく勘案したキャリアパスについてリクルートする時に明示し、 そのキャリア形成を支援します。
科目等履修生を含むインテンシブコースでは、すでに常勤職として活躍している医師、歯科医師、薬剤師、看護師等が受講する場合と精神科医以外の 若手の大学院生が受講する場合が考えられます。
また、プライマリケア医、産業医、子どもの心相談医、精神科専門看護師、産業保健師、助産師、精神科専門薬剤師など、それぞれの医療資格の中の キャリア形成支援を行います。
さらに学びを深めたい場合、低強度の認知行動療法的アプローチ(英国では、Psychological Wellbeing Pracitionerと呼ばれる医療人に該当する) だけでなく、大学院課程で、高強度の認知行動療法を学ぶ千葉認知行動療法士(High Intensity Cognitive Behavioural Therapist)トレーニングコースへの 参加も可能であることをキャリア形成支援として提示します。
また、生涯教育として、一般医療の中で、メンタルヘルスサポート医療の重要性を周囲に広め、精神科専門医療との交流を進めるようなキャリア形成に ついても支援します。

「メンタルサポート医療人(低強度セラピスト)」の資格認定について

◎メンタルサポート医療人は、以下の要件を満たした者を認定する

  1. 医師,歯科医師、薬剤師、看護師,公認心理師,精神保健福祉士,作業療法士、学校教諭などメンタルヘルス支援の専門資格を持つ者
  2. 「メンタルヘルスサポート学特論」の講義2単位、「メンタルヘルスエクセルシオール(症例検討)演習」2単位を受講終了し、研修修了証を受けた者
  3. 最低1症例の低強度の認知行動療法(原則、月1回30分で連続6回程度)を行い、終了後にアウトカムデータ(介入効果指標)を含む症例報告を提出し、メンタルヘルスの専門家から評価を受けた者 (原則、開始時からスーパービジョンあるいはコンサルテーションを受けること)

*英国のImproving Access to Psychological Therapies (IAPT)のPsychological Wellbeing Practitioners (PWPs)(以前の名称はlow intensity therapist)に該当する

教育プログラムについて

  • メンタルプロフェッショナル養成コース
    (本科コース)フロンティア

    生物・心理・社会の観点から、難治性精神疾患(統合失調症、双極性障害等)、司法精神保健、ギャンブル依存等に関する幅広い知識・ スキルを有する精神科専門領域の医師を養成していきます。

  • メンタルサポート医療人養成コース
    (インテンシブコース)ボトムアップ

    一般医療の中で日常的に遭遇する軽症の不眠、不安、うつ、心身症、依存症、認知症等を持つ患者および家族が向精神薬依存にならないよう、内科、小児科等の医師、産業医、歯科医師、看護師、助産師、保健師、薬剤師、コメディカル、介護職などがメンタルの問題を把握(アセスメント)、評価の上、セルフヘルプをガイドする簡易認知行動療法的アプローチによる相談支援を提供し、半年間程度で再アセスメントをすることができるメンタルサポート医療者を養成していきます。