診療科紹介

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消化管グループ

メンバー

勝野達郎 准教授 附属病院 柏の葉診療所長
新井誠人 准教授(腫瘍内科)
中川倫夫 助教
松村倫明 助教
丸岡大介 特任助教(臨床試験部)
沖元謙一郎 特任助教(臨床腫瘍部)
對田 尚 医員
石神秀昭 大学院生兼医員
笠松伸吾 大学院生兼医員
濱中紳策 大学院生兼医員
太田祐樹 大学院生兼医員
吉濱小百合 非常勤講師

我々は消化管領域を中心に診療・研究を進めています。当グループの診療および研究の特徴をいくつか紹介させていただきます。

1.抗血栓薬服用患者に対するガイドラインに基づいた消化管腫瘍に対する内視鏡治療

 脳梗塞、狭心症、心筋梗塞の予防といった循環器、神経領域における抗血栓薬の重要性が明白なものとなり、多くの症例に対して投与されています。これまで、内視鏡検査、治療時には、出血のリスクを避けるために、薬剤を中止し処置を行ってきました。一方、これら薬剤の中止は、血栓の形成を引き起こすリスクがあります。平成24年7月に日本消化器内視鏡学会から、「抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」が刊行されました。これは、循環器、神経領域における抗血栓薬中止のリスクを重視し、必要な抗血栓薬は継続のまま、治療を行うことを勧めるものです。当科では、総合病院であるメリットを生かし、循環器、神経領域のエキスパートと協力し、抗血栓薬使用の適切な判断を行い、安全かつ確実な内視鏡治療を実施しております。

2.炎症性腸疾患の病態解明・新規治療の開発

 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)およびクローン病(Crohn's disease)は、欧米諸国において有病率が高い疾患ですが、本邦でも今後若年者層を中心に患者数の増加が予想され近年中に患者数が20万人を越える可能性があり、社会的にも対策が求められています。また、シルクロード病と呼ばれるシルクロードに沿って有病率が高いベーチェット病は、本邦においても患者数が多く、消化管に病変が及ぶ腸管型ベーチェット病(intestinal Beh?et's disease)が知られています。
 当科では、これら炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)に対して二十年来1000名以上の総合的診療実績を積み重ねている臨床経験を有しています。最近では白血球除去療法(GCAP、LCAP)、免疫抑制療法(Azathioprine/ 6-mercaptopurine、tacrolimus、cyclosporine)、抗TNFα抗体(infliximab、adalimumab)などの新規治療法・治療薬を活用し、我が国をリードする臨床成績を報告し、また、多くの新薬の開発治験に協力しています。この分野においても近隣施設と協力し、「IBD循環型地域医療連携体制」を構築し、患者数が増加する中でお一人お一人がきめ細かい診療を受けて頂ける工夫をしております。

3.十二指腸腫瘍の診断と内視鏡治療

 十二指腸乳頭部以外に腫瘍を認めることは稀であり、これまでは重視されていませんでした。しかし、近年、早期十二指腸癌が内視鏡検査で発見され、内視鏡による治療を受ける例が増えてきました。これは、内視鏡の画像技術の向上も関連があるかもしれません。十二指腸における内視鏡治療は、技術的に困難な例も多く、多くの症例の治療を行っている専門機関での治療が勧められます。当科では、十二指腸腫瘍の診断、治療法の確立を目指して、積極的に検査、治療を行っております。

4.新規デバイスを活用した小腸疾患の診断・治療

 カプセル小腸内視鏡(video capsule endoscopy: VCE)、バルーン小腸内視鏡(balloon endoscopy)など新規デバイスの開発により、以前は対応困難であった小腸出血・小腸腫瘍など小腸疾患の診断および治療が可能になりました。当科では、カプセル小腸内視鏡による小腸疾患の診断について近隣施設と協力し「カプセル小腸内視鏡診断ネットワーク」を構築し、当施設のみならず近隣施設における小腸疾患の診断にも積極的に協力し、小腸疾患の早期診断に努めています。また、ダブルバルーン小腸内視鏡(double-balloon endoscopy: DBE)を活用し、以前は内視鏡的には対応困難であった小腸出血・小腸腫瘍などの診断および治療に積極的に取り組んでおります。クローン病などによる小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilatation: EBD)の経験も豊富です。

5.難治性胃食道逆流症に対する食道内圧検査(High Resolution Manometry)、24時間胃食道pH・インピーダンス検査(MIIpH)を用いた診断・治療

 胸やけなどの症状を有する胃食道逆流症の患者さんは近年増加しております。一般的にPPI(プロトンポンプ阻害剤)の内服にて症状が改善するとされていますが、約半数の方で症状が改善しないと近年報告されております。そのような今までの診療では改善のみられなかった方を対象に、食道運動機能検査等を行い、症状の原因診断から治療までを一貫して行っております。

6.好酸球性食道炎の診断・治療

 消化管のアレルギー疾患である好酸球性胃腸症は今まで稀であるとされ、重視されておりませんでした。しかしながら、近年、好酸球性食道炎を初め、消化器症状を有する方に、好酸球性疾患が含まれていることが報告されております。現在、当院では、これら好酸球性胃腸症に関しても積極的に検査から治療までを行っております。

7.コンダクタンス測定による消化管粘膜障害の評価

 近年、電気生理学的手法を用いた粘膜バリア機能評価の技術が開発され、当院にも導入されました。原理的には全身に微弱な電流を帯電させ、内視鏡的に粘膜を観察した後に、内視鏡の先端から測定器を粘膜に接着させることで粘膜のコンダクタンス(電流の流れやすさ)を測定するという技術です。現在、消化管のコンダクタンス測定によるバリア機能評価だけでなく、その分子機構も明らかにすべく基礎研究も計画されております。

8.コールドポリペクトミーの安全性・有効性についての研究

 大腸のφ1cm未満のポリープに対しては、これまでは内視鏡的粘膜切除術(EMR)が主に行われてきました。EMRには通電が伴うため、一定の確率で合併症を生じ得、特に治療数日内に生じる後出血は珍しいことではありません。これらの背景から、近年通電を伴わないコールドポリペクトミーが欧米を中心に行われるようになってきております。ただ長期的成績などいまだはっきりしていない要素もあります。当院では大腸におけるコールドポリペクトミー後の局所再発率の検討などのほか、十二指腸におけるコールドポリペクトミーの安全性・有効性の研究も行っております。

9.消化管蠕動運動改善薬の糖代謝におよぼす影響の研究

 我々はこれまでに、ある種の消化管蠕動運動改善薬がマウス消化管L細胞上の甘味受容体発現を増加させ、健常人の食後血漿活性型GLP-1値を上昇させる効果があることを報告してまいりました。現在2型糖尿病患者における糖代謝改善効果についての臨床試験を進めています。

10.その他、診断・治療が困難な特殊な消化管疾患への対応

 当グループでは、上記の他にも、診断・治療が困難な特殊な消化管疾患に対する対応を行っております。これらの病態に対する対応や経験については、他施設の医師にも共有して頂く必要があり、当グループの経験は積極的に学会発表・論文発表しております。

11.基礎研究

 当グループでは、胃粘膜、大腸粘膜の再生メカニズム、側方発育型大腸腫瘍の病態、IBDにおける腸管上皮細胞の解析、小腸粘膜上皮の遺伝子発現と糖代謝との関連性などを臨床検体、培養細胞、疾患モデルマウス等を用いて、分子生物学的手法により解析を進めています。これらの研究を通じて得られた知見から新規治療薬の開発を目指した研究を進めています。また、内視鏡検査時に、消化管粘膜の脆弱性を客観的に評価し、病態との関連性を検討する検討を現在行っております。
 これら基礎研究の研究成果については、業績欄をご参照ください。