肝胆膵外科

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質量分析計を用いた肝胆膵術後ドレーン排液の早期菌同定に向けた研究

現在、肝胆膵外科では、「質量分析計を用いた肝胆膵術後ドレーン排液の早期菌同定に向けた研究」に関する研究を行っています。今後の治療に役立てることを目的に、この研究では2010-2012年に当院にて肝臓、膵臓手術を行った患者さんの診療情報などを利用させて頂きます。診療情報などがこの研究で何のために、どのように使われているのかについて詳しく知りたい方は、下記の窓口にご連絡ください。

2017年10月30日

1.研究課題名 質量分析計を用いた肝胆膵術後ドレーン排液の早期菌同定に向けた研究
2.研究の意義・目的

本研究の目的は手術後のドレーンからしみ出てくる液の中にどのような細菌がいるかをこれまで以上に早く検出するため、質量分析計という蛋白質を細かく同定するための機械を使って測定する方法を開発することです。
肝臓や膵臓の手術後には手術をした部位に細菌が繁殖し、膿瘍という膿の溜まりを作ってしまうことがしばしば起こります。このような膿瘍はそのままとしておくと、周囲の臓器にダメージを与え、術後の大量出血に結びついたり、菌が血液の中に入り込むことで全身に広がり、敗血症となって患者さんの生命に関わることもまれに起こります。最近、抗生物質が効かない薬剤耐性菌による感染も報告されており、特に手術による患者さんの負担が大きい、肝臓や膵臓の手術ではこのようなことが起こりやすいことが知られています。
このような合併症を防止するためには感染が起こっているかどうかを早急に知り、また、どのような菌が繁殖しているかを出来るだけ早く知ることが重要です。それによって、感染している菌を殺菌するのに最適な抗生物質を出来るだけ早い段階で投与することが可能となり、膿瘍の消退など早急な感染症の治療に役立つことが予想されます。
これまではこのような菌を同定するためには、まずは排液を培地という菌が育ちやすくなっている基質の上に散布し、菌が育ったのを見極めてその菌を顕微鏡や機械を用いて同定する方法がとられていました。
近年、質量分析計という機械が蛋白質の細かい種類を同定するために使われ、多くの検査などに用いられてきています。細菌も体の骨格は蛋白質で出来ているため、質量分析計で測定すれば、それぞれの細菌特有の蛋白質の発現パターンを観察することができ、早々にどのような菌が感染しているか、発見することができるようになる可能性があります。このような方法を使えば、検査当日には感染を起こしている菌がごく微量でも、また、患者さん本人には症状が起きる前にどのような菌が感染しているか、測定することが可能となり、早急な治療の開始が期待されます。
そこで、本研究では手術の際のドレーン排液を質量分析計にかけて得られた蛋白質発現パターンと通常の検査によって得られた検査結果がどの程度の割合で一致するのか、どの程度これまでの検査法と比較して早く細菌の同定ができるようになるかを検討していきます。

3.研究の方法

肝臓、胆道、膵臓の手術後は前述の様に感染を起こすことがしばしばおきますので、予防的に手術時にドレーンと言われるチューブを留置します。本研究ではこれらのチューブから出てくる液を採取して質病分析計によりその中の蛋白質の発現パターンを測定します。
2010-2012年までに当院にて手術を行った患者様については、当院における質量分析計の導入時にこのようなデータを既に検査しております。そこで、このような測定から得られた結果と通常の検査方法で得られた細菌の存在の有無、細菌の種類、発熱などの感染に伴う症状の有無などの臨床情報と対比し、どの程度の正確性および速さで質量分析計による細菌の同定が可能となるかを検討します。
この解析に用いたデータについてはすべて千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学の鍵のかかる部屋に置かれたパソコン内にパスワードを書けた上で保管されます。これらのデータはすべて匿名化された状態で保管されていますのであなたの個人情報がご本人である事が分かる状況のもと、直接解析で使われることはありません。

4.個人情報の取り扱いについて

本研究で得られた個人情報は、匿名化して管理し外部に洩れることのないように厳重に管理します。研究成果の発表にあたっては、患者さんの氏名などは一切公表しないこととします。データ等は、千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学教室の鍵のかかる棚で保管します。

5.研究に診療情報などを利用して欲しくない場合について

ご協力頂けない場合には、原則として結果の公開前であれば情報の削除などの対応をしますので、下記の窓口にご遠慮なくお申し出ください。

文部科学省・厚生労働省による「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいて掲示を行っています。

研究実施機関

千葉大学医学部附属病院 肝胆膵外科

本件のお問合せ先

医学部附属病院 肝胆膵外科
医師 吉富秀幸
043(222)7171 内線6731