挨 拶

令和4年度

 日本は長寿などの体の健康に関しては世界トップですが、心の健康に関しては低迷しているため、心の健康の向上が強く求められています。心の健康の向上には、うつ・不安の治療法として代表的な薬物療法に勝るとも劣らない効果を持つ心理療法、「認知行動療法」を必要な人全員が受けることができるようにすることが重要です。そのため、認知行動療法をコンピュータ・アプリとして提供するデジタルセラピューティックスの研究が世界中で進められています。
 本研究の目的は、睡眠、うつ・不安、疼痛、摂食、発達等の幅広い心身の問題に対処する認知行動療法を活用したデジタルヘルスケア技術を開発し、その効果を明らかにして、社会の皆さんに使ってもらうことです。
 不眠症の認知行動療法アプリは、スマホのAIアバターが利用者に4週間程度日記形式で眠れない不安についての考え方や行動のパターンを入力してもらうように話しかける医療機器プログラムです。利用者が入力したデータをもとに悪いパターンを良い習慣に変えるよう指導して、不眠を改善します。またウエアラブルな脳波計、加速度計、表情認知、音声言語処理等のセンシング・デバイスと組み合わせ、アプリの性能がどんどん良いものにアップデートされていきます。アプリだけで症状が改善しない利用者には、専門家がビデオ会議でオンライン認知行動療法を提供するシステムも開発します。
 不眠症だけでなく、パニック症、社交不安症、強迫症、うつ病、自閉スペクトラム症、過食症、肥満症、慢性疼痛などの様々な心と体の病気を対象とした認知行動療法アプリも開発し、その効果を調べて実用化します。
 また、人前での緊張がつらくて、学校や会社に行けなくなってしまう社交不安症(対人恐怖症)の治療用の視線トレーニング装置も開発しています。現実世界の人物とアイコンタクトができた時にポジティブにほめてくれる装置の開発により、自閉スペクトラム症の人も相手の目を見て楽しくコミュニケーションができるようになる社会を目指します。

令和4(2022)年4月吉日 清水栄司


令和3年度

 平成30(2018)年度から令和2年(2020)年度の3年間で、「心理精神科学(心理学・精神科学の文理横断橋渡し研究拠点)、Translational research program of psychiatry and psychology (TPAP)」として、 西千葉の(1)人文科学研究院の基礎心理学、実験心理学の研究、(2)教育学部の教育心理学、発達心理学の研究、(3)総合安全衛生管理機構の精神医学、亥鼻の(4)医学研究院、(5)社会精神保健教育研究センター、 (6)子どものこころの発達教育研究センター、(7)医学部附属病院の精神医学、児童精神医学、犯罪心理学、臨床心理学の研究を文理横断橋渡しする形での心理精神科学の研究拠点を形成し、 到達点として2020年度に複数の社会実装研究を開始することができました。
 第一に、本学フロンティア医工学センター(中口俊哉教授)及び大日本住友製薬株式会社(大阪市中央区)と共同で、視線トレーニング装置を開発し、2020年12月に社交不安症に対する臨床研究を開始することができました。
 第二に、脳MRI画像を用いて、強迫症、不安症等の精神疾患患者と健常者を鑑別するための機械学習を用いた神経回路マーカーの開発について、2020年度に試行開始しました。
 第三に、不眠症のインターネット認知行動療法アプリについては、臨床研究を推進しているところです。第四に、2020年度から、千葉大学「子どものこころを守る対人援助教育学による世界水準の次世代型人材育成」戦略により、  教育委員会と連携して、「WEBでの子どものストレスチェック制度」を立ち上げる体制を構築したところです。
 こういった到達点から、令和3(2021年)度から令和5(2023)年度までの3年間で、さらに、「心理精神科学(心理学・精神科学のデジタルメンタルヘルス研究拠点)、Digital mental health research program of psychiatry and psychology (DPAP)」の  構築を目指してまいります。

令和3(2021)年4月吉日 清水栄司


平成30年度

 平成30年度の千葉大学学内リーディング研究育成プログラムの1つとして、「心理学・精神科学の文理横断橋渡し研究拠点(心理精神科学)」プログラムが採択され、活動を開始いたしました。
現代人は、誕生から中年期までに何らかの精神的な問題を80%以上の人が経験すると報告されております。
不登校児童数が、小中学校で13万人、最近25年で約2倍となり、保育所待機児童の問題から、特に3歳未満児の利用率が増加し、就学前教育の質の確保が問題となっている昨今、子どもへの心理学的、精神医学課題を解決するための支援の確立が重要になっております。
精神疾患の患者数も、年間390万人で、15年で約2倍になっている一方、精神疾患を有する約4分の3の地域住民が未受診とされており、心理学的、精神医学的研究を進める必要があります。
これらの課題解決のため、千葉大学全学体制でメンタルヘルス研究を推進し、その成果を社会に還元する必要があります。
そこで、今年度から、当初3年間で、千葉大学の人文、教育、医学などの中堅・若手研究者のグループが核となって、心理学と精神医学に関する研究の先鋭化を目指し、4年目以降は、他の部局をも含めて、 全学的な推進のもとでの心理精神科学の世界的レベルの研究拠点化を目指してまいります。

平成30年7月1日 推進責任者 清水栄司


本研究の目標と概要

世界水準の研究を推進する、千葉大学の55歳以下の中堅・若手研究者グループによる本リーディング研究「心理精神科学」の目的は、西千葉キャンパスの (1)人文科学研究院の基礎心理学、実験心理学の研究、(2)教育学研究科の教育心理学、発達心理学の研究、(3)総合安全衛生管理機構の精神医学、亥鼻キャンパスの (4)医学研究院、(5)医学部附属病院、(6)社会精神保健教育研究センター、(7)子どものこころの発達教育研究センターの精神医学(精神神経科、こどものこころ診療部)、 認知行動生理学(認知行動療法センター)、臨床心理学、犯罪心理学の研究を7つの部局を文理横断橋渡しする形での研究拠点を形成することです。 健康人が有する知覚、認知、社会的ストレスの受け取り方の個人差(多様性)に関する基礎心理学的研究は、子どもから成人への成育段階における発達心理学的研究、または、 女性に多い不安うつ、男性に多い自閉スペクトラムや攻撃性などの臨床的な精神科学的研究へ橋渡しすることで、国内外でもユニークな世界レベルの研究拠点へと展開させていきます。

知覚心理学、認知心理学、社会心理学、発達心理学、教育心理学、犯罪心理学、臨床心理学、精神医学、児童精神医学という全領域の基礎から応用までの心理学・精神科学に関して統一的に行える研究手法を共有し、子どもから大人までの幅広い年代のヒトを対象とした心理的な測定データをデータベース化し、ビックデータとして、人工知能で解析し、ヒトの心の健康を維持、向上させるようなシステムを開発していくようにいたします。

お知らせ

2023.04.11 千葉大学こどものこころの発達教育研究センターの主催でZOOMウェビナーによるシンポジウムを開催いたします。
2021.05.11 心理精神科学のHPをリニューアルしました。
2021.02.11 『メンタルサポート医療人とプロの連携養成フォーラム』を開催いたしました。
2020.02.16 『メンタルサポート医療人とプロの連携養成フォーラム』を開催いたしました。
2020.02.20 千葉大学亥鼻キャンパスにて、『子どもみんなプロジェクト 報告会』を開催いたしました。
2019.12.13 『千葉大学GP研究基幹シンポジウム』にて、子どものこころの発達教育研究センター特任研究員の岩間由衣さんが研究発表をし、優秀発表賞を受賞しました。
2019.11.15 千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの主催で『第11回千葉こどもの心教育医療研究会』を開催いたしました。
2019.09.04 『メンタルサポート医療人とプロの連携養成フォーラム』と『第10回千葉こどもの心教育医療研究会』を合同で開催いたしました。
2019.07.25 千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの主催で『第9回千葉こどもの心教育医療研究会』を開催いたしました。
2019.06.05 千葉大学グローバルプロミネント研究基幹より発行された「CHIBA RESEARCH(日本語版)」にて、本プログラムが紹介されています。
2019.04.12 附属病院から「インターネット・セルフヘルプ(自助)認知行動療法プログラム臨床試験の研究成果」を報道発表しました。
2019.03.13 千葉大学こどものこころの発達教育研究センターの主催で『第8回千葉こどもの心教育医療研究会』を開催いたしました。
2019.02.17 千葉大学亥鼻キャンパス記念講堂にて、『千葉大学GP研究基幹心理精神科学(TPAP)国際シンポジウム』を開催いたしました。
2018.12.21 千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの主催で『第7回千葉こどもの心教育医療研究会』を開催いたしました。
2018.11.10-11 2018年清水栄司教授が大会長として『日本脳科学会千葉大会』を開催いたしました。
2018.11.06 『千葉大学GP研究基幹シンポジウム』にて、子どものこころの発達教育研究センター特任研究員の大平育世さんと沓澤夏菜さんが研究発表をし、大平育世さんが優秀発表賞を受賞しました。
2018.07.12 子どものこころの発達教育研究センターのMEETINGにて、心理精神科学の拠点構想を清水栄司教授がプレゼンテーションしました。
2018.07.09 千葉大学教育学部にて、清水栄司教授、大学院生の濱田伊沙名さんがプレゼンテーションを行いました。
2018.07.01 平成30年度学内リーディングプログラムとして、活動を開始いたしました。