研究テーマ

ページタイトル画像

病理

 肺悪性腫瘍の中で肺癌は最も多く、その組織像は腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌の4つの組織型を中心に、様々な形態がみられます。治療法も、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の非小細胞癌が外科療法を中心としているのに対して、小細胞癌は化学療法を中心とした治療法が主であり、組織型によりその治療戦略が大きく変わるために、肺癌を取り扱う場合は、細胞診断、病理診断が極めて重要なります。

 当科では、肺癌の細胞診断学を早くから研究し、数々の業績をあげ、日本国内のみならず、世界からも注目を集めてきました。肺癌の細胞診は日常業務において、すでに欠かせないものであります。術前診断においては、気管支鏡の発達とともに、捺印細胞診、吸引細胞診の診断技術の向上、経皮針生検においても千葉大肺研式生検針、千葉大式吸引ピストルと当科の名が付いた機器の開発が精力的に成されてきました。肺癌の細胞診・組織診断に関してはさらなる研究を進めております。

 1999年に、WHOが新しい肺癌組織分類を提示しましたが、その特徴の1つに、high grade neuroendocrine tumor(肺の神経内分泌腫瘍)が分類されました。そこには主に4 つの疾患(小細胞癌、大細胞神経内分泌癌、定型および異型カルチノイド腫瘍)が相当します。小細胞癌と同様に予後不良であるのが大細胞神経内分泌癌(Large cell neuroendocrine carcinoma: 以下、LCNEC)というカテゴリ-が存在することを明らかにしたことでした。当科では、LCNECを中心とした研究を進め、特に、LCNECを含む神経内分泌的特徴を有する大細胞癌に対して、術後補助化学療法の有用性を示唆することを、初めて報告しております。

 また、2011年に肺腺癌に対してInternational Association for the Study of Lung Cancer(IASLC),the American Thoracic Society(ATS)およびthe European Respiratory Society(ERS)が合同で新たな亜分類を提唱した(IASLC/ATS/ERS 分類)。非粘液性肺胞置換性(lepidic growth pattern, non-mucinous)、乳頭状 (papillary pattern)、微小乳頭状(micropapillary pattern)、腺房状(acinar pattern)、充実性(solid pattern)、粘液性肺胞置換性(lepidic growth pattern, mucinous)に分類されるが、微小乳頭状パターンは予後が悪い。当科においては微小乳糖状腺癌における画像解析、細胞診による診断、遺伝子解析的な診断について報告し、さらなる研究を進めている。