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「健康日本21」とCOPD

 「あなたはCOPDという病気ですよ」、といわれても、おそらくほとんどの方は何のことだかわからないと思います。 しかし、COPDは決して珍しい病気ではなく、40歳以上の人の8%以上、12人に1人はCOPDであることがわかっています。 また、COPDになる方の90%以上はたばこが原因であることが知られています。 たばこを吸うということは、一つの生活習慣です。 このような観点からみると、COPDは肺の生活習慣病と考えられます。
 生活習慣病とは、毎日のよくない生活習慣のつみ重ねによってひきおこされる病気です。 糖尿病、脳卒中、心臓病(心筋梗塞、虚血性心疾患)、高脂血症がこれに属します。 日本人の3分の2近くが、これら生活習慣病により命を落としたり、病的状態で一生を送ることを余儀なくされています。 このため、厚生労働省の主導による、「健康日本21」という健康づくり運動が平成12年より始まっています。
 たばこは、吸った煙が体の中に入り全身にまわるため、これら生活習慣病を悪化させるのみならず、たばこの煙は肺に直接はいるため、COPD・肺がんというような呼吸器の病気を起こしてきます。COPDでは、しつこい咳が続くとか、痰がよく出るというような症状が最初に出てくる人がいます。咳・痰という症状は、たばこを吸い続けるだけでも出現しますので、勿論それだけでCOPDになっているとはいえません。しかし、そのような方々の一部は、COPDになる、ないしはなっていると思われます。
 息が苦しいという症状は、痛みと共に、人間にとっては最もつらい症状の一つです。少し体を動かすだけでも息苦しいという症状で苦しむのがCOPDという病気です(図1)。

図1

COPDは、従来、「肺気腫」および「慢性気管支炎」と呼ばれていた病気を統合した言葉で、その両方の特徴を持っています。肺胞が破壊されると、息がスムースに出なくなり、酸素の取り込みがうまくいかなくなり、動いた時に息苦しくなります。比較的太い気管支の炎症が慢性的に生じると、咳嗽・喀痰がでてきます(図2)。

図2

 COPDの診断は呼吸機能検査、胸部CT検査などで行います。呼吸機能検査を行うと、どの程度息がはきづらいのかが判り、COPDかどうかの診断ができます。胸部CT検査では、どのくらい肺が壊れているのかが判ります(図3)。

図3

 COPDの診断が付いており、動く時に息苦しいという症状に対しては、適切な薬物療法を行います。この陰に隠れているのが「呼吸リハビリテーション」と全身併存症の管理です(図4)。薬物療法の効果は比較的すぐに得られますが、日常生活を心身にわたり良好な状態に改善することにより、病気による障害を軽減させうる「呼吸リハビリテーション」は生涯にわたり重要になります。呼吸器の病気以外にも、COPDと関係する他疾患(循環器関係の病気、骨粗鬆症など)の診断と治療も同時に必要になります。

図4