肝胆膵外科

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術前治療後膵癌切除例の予後予測因子に関する臨床病理組織学的 後ろ向き研究

研究課題名 術前治療後膵癌切除例の予後予測因子に関する臨床病理組織学的 後ろ向き研究
研究の対象 千葉大学医学部附属病院で、過去5年間(2011年12月1日~2016年11月30日)に術前治療(化学療法や放射線治療)の後に外科的切除が施行された膵癌症例を対象とします。
研究の目的

 膵癌に対する術前治療が広く行われるようになりました。しかし、切除しても期待したほどの長期成績が得られない症例も経験しているのが現状です。これはすなわち、一見切除可能とみえても実は全身多臓器に画像などではとらえられない微小な転移を有する症例が存在することを示しています。
 一般的には術前に切除の可否を評価する際に、NCCN(National Comprehensive Cancer Network; 世界の25の主要がんセンターのNPO団体で、癌に関わる世界的に著名な専門家たちが集まり、癌患者に提供されるケアの質および有効性の向上に尽力している)で定められた resectability (切除可能性の評価), RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors; 日本臨床腫瘍研究グループで統合された、化学療法による腫瘍縮小効果判定), PET SUV(PET検査による腫瘍部への放射性薬剤の集積の強さを示す簡易的な指標値), 腫瘍マーカーなどが広く用いられています。近年ではそのほかにもNL比(好中球リンパ球比)、PL比(血小板リンパ球比)、mGPS(Glasgow Prognostic Score; 全身の栄養状態や炎症状態の採血データをもとに割り出す値)なども切除後の治療成績を占う指標として用いられることがあります。また一方で、術後に切除した標本を検索することで得られる情報も重要です。すなわち切除断端、Evans分類(腫瘍崩壊度; 化学療法により顕微鏡的に癌がどの程度壊れているかの程度を表す指標)、TIL(Tumor infiltrating lymphocytes;癌の周囲に集まっているリンパ球の数), リンパ節転移度やその個数も切除後の治療成績を占う指標として使用されてきています。
 しかし現在までの報告の多くは単施設の研究であり、症例数に限界がありました。これらを明らかにする事は、術後に再発を予防する目的で行う補助化学療法の選択、あるいはこれからの臨床試験の計画にも利用出来る可能性があります。

研究の概要

 これまでの比較的少数例での検討によると、腫瘍因子としてはリンパ節転移の有無、腫瘍径、血管浸潤の有無、治療因子としては手術により完全に癌が取り除かれたかどうか、術前後補助治療(化学療法や放射線治療)の有無、さらに患者因子としてmGPS、NL比、PL比、リンパ球と単球(白血球の成分の1つ)の比や、PNI(Prognostic Nutritional Index; 採血の値から得られる栄養状態指標)といった免疫栄養関連因子の意義が報告されています。さらに、術前治療に特に関連したものとして、Evans分類が術前治療効果を予測し切除後の治療成績を反映するといわれています。
 我々も自験例における免疫組織学的検討によって腫瘍周囲浸潤リンパ球の分布に術前化学放射線療法が変化をもたらし、またCD8陽性リンパ球(リンパ球の種類の1つ)の集積が良好な予後を予測するマーカーとなりうることを報告してきました。
 ただし、これらを網羅的に、特に膵癌術前治療症例にターゲットを絞った多数例での検討はこれまで皆無であり、これらを明らかにする意義は大きいと考えています。

研究の方法 日本膵切研究会施設会員157施設から募った研究参加施設で、過去5年間に術前治療の後に外科的切除が施行された膵癌症例に対し、患者の特徴に関するデータ(年齢、性別など)、外科治療データ、化学療法データの収集を行い、手術から死亡までの時間、手術から再発までの時間、再発形式などについて、統計学的に解析を行っていきます。
研究期間 平成29年5月 許可日 ~ 平成29年12月31日
個人情報保護に関する配慮 本研究でえられた個人情報は匿名化されたのちに横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学にある事務局に送られ、外部に漏れることのないよう、厳重に管理致します。そして、横浜市立大学にてデータ解析が行われます。研究成果の発表に当たっては患者さんの氏名など、個人を特定できるようなデータは一斉公表しません。

本研究のために、患者さんにあらたな負担や危険が生じることはありません。患者さんもしくはご家族の方等がこの研究へのご参加を希望されない場合は、以下の連絡先までご連絡いただけましたら、その方の情報は本研究に利用しないようにいたします。本研究への参加をお断りになられたとしても、不利益になることは一切ございません。

お問い合わせ

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日本膵切研究会担当者:横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学 村上崇、藪下泰宏
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