DEPARTMENT OF IMMUNOLOGY
SHP-1 とTh2細胞分化・気道炎症
SHP1は、シグナル伝達経路を抑制的に調節する機能が知られているチロシンフォスファターゼで、N端に2つのSH2ドメインを持ち、SH2ドメイン結合配列を持つチロシンキナーゼをターゲットとしている。違った細胞で多くのターゲット分子(Syk, ZAP-70, CD19, CD22, CD72, Lck, PI3K,Grb2など)が報告されている。先天的にSHP-1を欠損するマウスとしてモスイートンマウス(motheaten mouse)が知られている。ホモのモスイートンマウス (me/me)は、多くは数週以内に全身性の炎症を起こして死亡する。そこで我々は、SHP1とTh2細胞分化、Th2依存性の気道炎症の関係を明らかにするために、ヘテロのモスイートンマウス (me/wt)を用いて解析を行った。me/wtは、T細胞やB細胞の分化をはじめとする免疫細胞は正常に存在し、特に自然発症の炎症は観察されない。しかし、末梢のT細胞のSHP1分子は量が約3分の1に減少している。ナイーブCD4T細胞でどのようなシグナルが変化しているかについて検討を行ったところ、抗原や抗TCR抗体によってナイーブT細胞に誘導されるシグナル伝達経路のうち、カルシウム反応は正常でRas/ERK MAPK経路も若干の反応性の上昇は見られるが、遷延反応はみられなかった。
Th2細胞の分化にはIL4レセプターからのシグナルが重要であることから、IL4添加で誘導されるSTAT6のリン酸化を調べたところ、活性化の亢進と明らかな遷延化が見られた。