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中枢神経系おけるSGLT2 阻害薬の摂食に対する作用の解明

研究概略

SGLT2阻害薬は体重減少作用のある糖尿病治療薬として知られていますが、一方で過去の臨床研究ではSGLT2阻害薬の投与はヒトの摂食量を増やすと報告されています。また、SGLT2阻害薬の開発のきっかけとなったフロリジンの脳室内投与は摂餌量を増やす事が報告されています。

そこでSGLT2阻害薬の摂食増加作用の原因が中枢神経系への作用ではないかと仮説を立て、実験を行いました。ラットの脳室に薬剤投与用のカニュラを留置し、SGLT2阻害薬を直接投与し摂食量を測定しました。すると、我々の仮説の通り脳室へのSGLT2阻害薬の投与は摂食量を顕著に増やし、摂食に関与することで知られる視床下部外側野のAMPKのリン酸化を亢進させました。SGLT2阻害薬とは反対にGLP-1受容体作動薬は摂食抑制作用のある糖尿病治療薬として知られています。そこで、脳室へSGLT2阻害薬を、腹腔内投与へGLP-1作動薬を同時に投与し、摂食量を測定しました。その結果、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬の摂食増加作用をキャンセルさせることが分りました。

以上よりSGLT2阻害薬の中枢神経系を介した摂食増加作用とSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用の有効性の可能性を報告しました。

この研究は2021年4月20日に BMJ Open Diabetes Research & Care に掲載されました。興味を持たれた方はリンクから詳細をご確認ください。