千葉大学大学院医学研究院
呼吸器病態外科学
千葉大学病院
呼吸器外科
自然気胸という病気は簡単にいうと肺のパンクです。肺は風船のようなものです。眼で見るとちょうどスポンジのような形をしています。そして肺の表面を胸膜或いは肋膜という薄い膜が覆っています。気胸というのはこの胸膜に何らかの理由で穴が開いてしまい、そこから吸った空気が胸の中に漏れてしまう病気です。パンクをしたので肺は縮んでしまいます。胸膜に穴が開く原因としては胸膜が一部弱くなってできた袋(嚢胞といいます)が挙げられます。
肺の病気の中ではもっとも軽い病気といえます。命に関わることは殆どありませんが、きちんと治療をしないとこじれて思わぬ余病を起こすことがあります。
年齢的には10代後半の若者から高齢者まで幅広く起こり、性別では圧倒的に男性が多い病気です。病気になる年齢によって少し特徴があります。10代の患者さんは、やせていて、背が高いことが多く、タバコとは関係ないようです。一方20代以降の患者さんの殆どはタバコが原因のようです。タバコを吸うことによって肺の組織が壊れて胸膜がもろくなったところに穴が開いてしまいます。高齢者の場合は肺気腫の患者さんがほとんどです。
(1)縮んだ肺を元の状態に戻すことと ②病気の原因である空気の漏れた穴をふさぐことが治療の原則です。
安静、穿刺脱気療法の方法は治っても50%以上の確率で再発します。持続吸引療法では30%前後、胸膜癒着療法では10%の確率で再発を起こします。従来の開胸手術では再発することは少ないですが約1%の患者さんでは再発することもあります。胸腔鏡手術の場合は開胸手術と比べると若干再発率が高いようです。原因としては肺嚢胞の新生、病変の見落としに加えて肺の癒着が軽度ですむことも挙げられます。胸腔鏡の普及に伴い見落としは殆どなくなりましたが、未だ肺嚢胞の新生は認めます。胸腔鏡手術の場合侵襲が少ない分胸膜の癒着なども少なくてすむので生理的には好都合なのですが、逆に癒着がないため気胸を再度起こすこともあります。当院では5%前後の再発率です。
一般的にどの治療法をとってもかまいませんが、当院では基本的に持続吸引療法ののち、必要に応じて相談のうえ外科的治療を行うようにしています。
肺気腫など他の肺病変を有する患者さんで難治性の気胸の場合、当院では局所麻酔下胸腔鏡手術を積極的に行っています。