研究内容

 
 
 

がん治療は、現代の医療の最重要課題の一つといえます。現在は、手術、放射線治療、抗がん剤治療を主軸とした治療が標準治療として行われています。薬剤の開発や手術方法の向上などにより、近年では、がんの治療成績は著明に改善している一方で、治療の継続が困難となるような強い副作用の出現や、完全に治癒することが困難な症例の存在など、問題点が多く残っています。当教室では、このような症例に対してNKT細胞免疫治療を中心とした新たな治療法の研究開発、臨床応用するための研究を行っています。

Natural killer T (NKT) 細胞は、自然免疫系に属するリンパ球分画であり、T細胞と異なり単一のCD1d上に提示された抗原を認識することから、invariant NKT細胞 (iNKT細胞) と呼ばれています。iNKT細胞は末梢血単核球中に占める割合はわずか0.01%〜0.1%以下と非常に少ない細胞集団ですが、iNKT細胞の特異的リガンドとしてα-ガラクトシルセラミド (α-GalCer)が1997年に報告されてから、活性化されたiNKT細胞の発揮する強力な抗腫瘍活性が注目されるようになりました。抗原提示細胞上のCD1dに提示されたα-GalCerにより活性化の刺激を受けたiNKT細胞は、自らパーフォリンなどの殺細胞誘導因子を分泌することにより直接細胞傷害を示すと同時に、速やかで多量のサイトカイン産生や樹状細胞の成熟化を介して、エフェクターT細胞、NK細胞などによる細胞傷害活性を増強する間接的な作用を有し、自然免疫系と獲得免疫系の橋渡し的な働きをすることで、非常に強力な抗腫瘍効果を発揮します(図1)。
このiNKT細胞の持つ強い抗腫瘍活性に注目し、肺がん患者さん、頭頸部がん患者さんを対象としてNKT細胞免疫療法の開発を行っています。 これまでに報告されたマウス癌転移モデルを用いた実験結果から、α-GalCer単独投与と比較して、α-GalCer を樹状細胞に提示させて投与する方が、より強い抗腫瘍活性を誘導できることが示されています。さらに、当院の呼吸器外科において手術治療を受けた肺がん患者さんの手術検体を用いた解析では、α-GalCer パルス樹状細胞投与群において肺癌局所に浸潤したiNKT細胞数のみではなく、T細胞数も有意に増加が認められました(図2)。
次に第I相試験としての、体外で活性化させたiNKT細胞を経静脈的投与する臨床試験では、重篤な有害事象を認めなかったと同時に、末梢血においてiNKT細胞特異的な免疫反応を検出することができました。さらに、2004年から施行した第I/II相試験としての、標準治療後の切除不能進行期または再発非小細胞癌に対するiNKT細胞免疫療法では、α-GalCer添加樹状細胞を投与した後に、iNKT細胞の免疫学的反応が増加した群で有意に全生存期間の延長が得られました(図3)。

 

図1
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図2
図2

 

図3
図3
図4
図4

 

また、千葉大学医学部附属病院未来開拓センター内には、高いレベルでの無菌状態を保った細胞調製が可能となる施設も備えられており、採血から細胞調製、治療用細胞の投与までを一貫して単一施設で行えることは、トランスレーショナル研究拠点として非常に重要と考えています(図4)。
これまでの基礎研究、臨床研究の結果から、進行・再発非小細胞肺がん患者さんに対するNKT細胞免疫療法は2011年に、進行頭頸部がん標準治療後完全寛解の患者さんに対するNKT細胞免疫療法は2012年に先進医療として承認されました。肺がん患者さんに対する臨床試験は予定症例数が終了し、現在は追跡調査を行っています。頭頸部がん患者さんに対する臨床試験は現在も遂行中です。

このようにNKT細胞免疫療法は、新しいがん治療として、非常に期待される治療法ではありますが、さらなる効果増強に向けて新たな研究が進められています。上述の如く、体外で活性化させたiNKT細胞を用いた養子免疫療法は、安全かつiNKT細胞に特異的な免疫反応を誘導することが可能であると示されましたが、がん患者さんの末梢血中のiNKT細胞数が非常に少ないため、患者さん自身のiNKT細胞を培養して増殖させることには限界があります。この問題を解決するために、我々は均一の機能を有した細胞を大量に製造することが可能になるiPS細胞の技術を利用した、iPS細胞由来iNKT細胞免疫療法の開発に理化学研究所と共同で取り組んでいます。
また、がん抗原に対するキメラ抗原受容体抗体 (CAR)をあらかじめ導入したiNKT細胞を樹立し、体内に投与する治療法 (CAR導入iNKT細胞療法)の研究も進めています。近年注目を集めている抗PD-1/PD-L1抗体との併用も含め、様々な角度からNKT細胞免疫療法の更なる発展に向けて研究を進めていきたいと考えています。

研究室について

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