研究
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研究内容

トランスポーター研究

当教室では主に以下のトランスポーターに関する研究を行っております。

1)尿酸トランスポーター

ヒトにおけるプリン代謝の最終代謝産物である尿酸は血中に蓄積することで痛風や尿路結石、高血圧および心血管疾患の発症に関与すると考えられております。この尿酸は水溶性であるため細胞内外の移動にはトランスポーターが必要で、特に腎尿細管上皮では尿酸トランスポーターによる再吸収過多が高尿酸血症発症につながります。

そこでトランスポーター機能を制御することで血中尿酸値を低下させる新規尿酸降下薬開発を目指しております。

2)有機酸・薬物トランスポーター

生体にとって「異物」である薬物は一般に「有機酸」の形をとって体内に存在するため、体内の代謝等で産生される代謝産物を含む有機酸のトランスポーターによって吸収・分布・代謝・排泄が担われております。有機酸トランスポーターの輸送機能の低下は薬物を初めとした様々な薬物の作用および副作用発現に影響するため、機能未知遺伝子の機能解析から輸送活性の制御機構の解明、さらに遺伝子多型による機能変化などに関する研究を行っております。

3)アミノ酸トランスポーター

アミノ酸はブドウ糖と並ぶ生体の生存にとって必須の栄養素です。消化管上皮細胞や免疫細胞、骨芽・破骨細胞などの生理的に細胞増殖の盛んな細胞のみならず、腫瘍細胞や刺激を受けた血管系細胞などにおいて、アミノ酸の取込みは増加していると考えられます。そこでそのような状態におけるアミノ酸取込みを担うアミノ酸トランスポーターの機能制御は、それら生理的および病理的状態の修飾を可能にすることが予想されます。そこでアミノ酸トランスポーター阻害による細胞増殖抑制を主な機序とする新規抗悪性腫瘍薬および新規抗免疫抑制薬、その他の生活習慣病・成人病治療薬の開発を目指しております。

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4)モノカルボン酸トランスポーター(平山担当)

モノカルボン酸トランスポーター(MCT)はモノカルボン酸(乳酸、酢酸、ケトン体など)を輸送するトランスポーターであり、現在14種類のサブタイプ(MCT1からMCT14)が確認されています。脳では、MCT1、MCT2、MCT4が発現しており、主に乳酸を細胞内外に輸送する役割を担っています。脳虚血時には、グリア細胞の一種であるアストロサイトで貯蔵されているグリコーゲンが分解され、大量の乳酸が産生されますが、脳虚血時におけるアストロサイトMCTの発現制御や乳酸放出メカニズム、細胞外へ放出された乳酸の脳虚血障害に対する影響については不明な点が多く残されています。そこで当教室では、マウス一過性脳虚血モデルである中大脳動脈閉塞(MCAO)を用いて、脳虚血障害におけるアストロサイトMCTの役割の解析を行っています。

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神経ペプチド研究

1)神経ペプチドの摂食および飲水行動における脳内調節機構(橋本担当)

 多くの種において、飲水と摂食の間には密接な関係があります。摂食調節機構は、視床下部に局在する満腹中枢と摂食中枢という2中枢説を基盤に発展し、研究が精力的に行われている一方、飲水調節機構はあまり解明されていません。強力な摂食促進ペプチドのグレリンが飲水抑制作用を持ち(Hashimoto et al., 2007; 2010), 、また、摂食抑制ペプチドのネスファチン1も飲水抑制作用を持っています。摂食では反対の作用をもつこの2つのペプチドが飲水行動においては同じ作用をもつことは、非常にユニークです。そこで、以下のような摂食抑制モデルや、グレリンおよびネスファチン1を始めとした神経ペプチドを用いて、摂食および飲水行動における脳内調節メカニズムを解明したいと考え、研究に取り組んでいます。
(1) 神経ペプチド投与による摂食および飲水調節メカニズム
(2) 抗癌剤による摂食抑制における神経ペプチドの役割
(3) ストレスによる摂食抑制における神経ペプチドの役割

2)摂食の脳内調節機構における嗅球の役割(橋本担当)

 これまでに、視索上核への求心性経路の1つである嗅球に抗利尿ホルモンとして知られるバソプレシン細胞が局在し、嗅上皮粘膜から入力される嗅覚情報が脳内のバソプレシン放出を介して高次脳機能に関与している可能性を示してきました(Tobin and Hashimoto et al., 2010)。視床下部の満腹中枢と摂食中枢という二中枢説以外にも、近年、延髄の傍小脳脚核が摂食抑制に重要な役割があることが明らかになり (Carter et al., 2013)、視床下部以外の新たな摂食調節部位の存在も注目されています。視床下部と同様に、嗅粘膜および嗅球にもバソプレシンを含めたペプチドおよびその受容体の存在が示され、嗅球が嗅覚の一次中枢としての機能以外にも、高次脳機能や摂食調節機構において重要な役割を担っている可能性があります。そこで、両側嗅球除去や、薬物投与による嗅球機能欠損による摂食抑制モデルを用いて、摂食調節機構における嗅球の役割を解明したいと考えています。

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