留学だより

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J.O.:平成9年卒 バンダービルト大学

Department of Molecular Physiology & Biophysics, Vanderbilt University Medical Center

 平成9年旧第二内科入局のJOと申します。私は平成17年に大学院を修了し、平成19年4月より米国南部のテネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト大学(Vanderbilt University)で研究を行っています。

 米国西海岸や東海岸と違い、日本人にとって南部の州はあまり馴染みのない地域だと思います。私もここに来る前は地図を見てもどこにあるのかはわかりませんでした。テネシー州は米国南東部内陸にあり、周囲を8州に囲まれた東西に長く広がる州です。ナッシュビルはテネシー州のほぼ真ん中に位置する州都で、州内ではメンフィスに次ぐ人口第二の都市です。東京とほぼ同じ緯度にあり、一年の気候も似通っていますが、春は新緑が美しく、長い夏の後に秋には紅葉が見られ、冬には数回雪が降ります。街中が自然に恵まれ、大学キャンパスや公園ではもちろん、アパート敷地内にも頻繁にリスが遊びに来ます。夏には蛍も見られ、車で30分も走れば放牧された牛や馬を見ることもできます。ゴルフ場やアパート近くの森では野生のシカやウサギが散歩している姿も見られます。またナッシュビルはカントリーミュージックの都とされ、ホリプロなどの音楽産業、カントリーミュージックにまつわる殿堂博物館やラジオ番組などがあり、別名「Music City」とも呼ばれています(写真)。他にプロフットボール・アイスホッケーチームの本拠地でもあり、それぞれの試合シーズンは大勢の人が観戦に行きます。ここ数年間で北米日産本社がロサンゼルスからナッシュビル近郊に移転したり、駐米日本国総領事館がニューオリンズからナッシュビルに移転したりと日本人にとっても以前より住みやすい環境になってきているのだと思います。治安についても、特に問題なく生活していますが、ある道路を隔てるとあまり治安が良くないなどあり、これは米国どこでもあることだと思います。大都市と違い規模は小さいですが、日本食材店や日本食レストランもあります。ある友人が寿司職人として働いていた日本食レストランには頻繁にナッシュビル在住のニコールキッドマンが御主人とディナーに来ていたそうです。

 現在留学しているバンダービルト大学は芸術科学、音楽、神学、工学、法学、医学、看護学、経営学、教育学、そして大学院の計10の主要専門教育領域を有する1873年創立の総合私立大学で、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副大統領も卒業生のひとりです。カレッジスポーツも盛んで、あまり強くはありませんが毎年9月から始まるフットボールはとても人気があります。大学付属の公共政策研究所には日米研究協力センターが併設されており、月一回の集会では日本企業や官公庁などからの日本人留学生の方も集まります。
 私の所属するMedical Center内のMolecular Physiology & Biophysicsは糖尿病、肥満、神経科学、内分泌、遺伝学などさまざまな領域の研究者が混在しています。お互いの研究分野を補足するような共同研究も多く、私もほかの研究室に実験方法を教わりに行ったり、逆に教えたりしたこともあり、お互いの風通しは良いほうだと思います。また多くの研究セミナーが毎日のように開催されており、米国内だけでなく世界からの招待講演を聴くことができます。
 現在のラボはprofessor、research assistant professor、大学院生3人、テクニシャン、ポスドクの計7名で構成されており、ある糖代謝酵素とそのホモログの転写調節について研究を行っています。こちらに来て感じた日本との違いの一つは研究環境です。研究室は2007年に新しいビルの8Fに引っ越し、窓からの景色はとても見晴らしがよく、各自に与えられたデスクも広く、とても恵まれていると思います。また「アメリカ人は働かない」と聞いたこともありましたが、実際は朝早く出勤し仕事をしてから夕方は早めに帰宅し、家族との時間を大切にしています。朝早く出勤すると交通渋滞も少ないですし、午前中に余裕を持って仕事をこなせるので、自分もほかのメンバーと仕事を合せる都合上、かなり朝早く出勤するようになりました。
 研究室ではおよそ週一回ラボミーティングがあり、結果を持ち回りに発表していきますが、私にとっては毎回のように英語との格闘です。自分が発する英語をよくぞ聞きとってくれているといった感じです。研究以外ではボスやラボメンバーの家でパーティーをしたり、洞穴探検、カヌー、ハイキング、あるいは研究室対抗リレーへ参加するなど仕事以外でもまとまりのある研究室です。

 ナッシュビルはアメリカの他の大都市に比べると、エキサイティングなものは多くなく、知名度もそれほどありません。しかし家族での生活にはこのような自然に恵まれ、ゆっくりとした雰囲気が以外と良いのではとも感じており、都会とは違った本当の意味でのアメリカ生活を体験できているような気がします。