留学だより

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坂本 憲一:平成21年卒 米国マウントサイナイ医科 Icahn School 大学

マウントサイナイ医科大学
5番街沿いにあり、セントラルパークの隣に位置しています。中央ビルの18階が研究室です。

 2018年春よりニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学のDiabetes, Obesity, and Metabolism Instituteに留学しております坂本と申します。早いもので渡米後1年半が過ぎました。渡米直後は日本と異なり、いっこうに進まない事務手続き、そして東海岸の早い英語、各国のアクセントのある英語に悩まされ、予想はしておりましたが苦難の連続でした。幸いラボメンバーにも恵まれ、また先に渡米していた北本先生夫妻、現地の日本人会の研究者達とのつながりに助けられ、生活のセットアップも進み、現在では家族皆で充実した時間を過ごしています。

 ラボメンバーはPIがドイツ人で、自分を含めて4人のポスドクとテクニシャン1人、学生2人がいます。抄読会やリサーチ発表はMetabolism instituteに属する7つの研究室合同で行っており、互いの研究交流も盛んに行われています。研究者の出身国も様々で、またアメリカ人の中でも中国系、韓国系、インド系、ユダヤ系、中東系など多種多様なアメリカ、ニューヨークの街をそのまま体現したようなメンバー構成になっています。

 昼食の時間には研究の話だけではなく、各国の食生活、文化、時には政治や歴史の問題などにも話が及びます。日本に関して多くの方が興味をもってくれており、時に自分以上に詳しい事もあり驚かされます。共同研究者のトルコ人とは、かつてイスタンブールに旅行した際に知ったトルコの歴史や簡単なトルコ語などの話題から一気に信頼関係が深まり、協力して仕事に取り組むことができました。良好な人間関係を築くには、研究の知識だけでなく、様々な経験、教養などが大きな力を持つことをあらためて実感させられます。

Keystone symposia @Banff, Canada
Prof. Buettnerと

 共同研究も盛んで、招待講演の演者が来た際には研究所の各PIとミーティングの時間が設けられており、私もしばしば参加してプレゼンテーションをしています。未発表データをディスカッションすることで、著名な研究者からの鋭い、異なる視点からコメントをいただいたり、その場で共同研究が決まることもあり、非常に有意義なシステムであると感じます。

 今年2月にはカナダで行われたKeystone symposiaで発表してきました。家族を連れてカナディアンロッキーの雪を楽しみつつ、1週間サイエンスに浸かる充実した時間を過ごしました。また大学の研究会では奨励賞を受賞することが出来、ニューヨーク近郊の大学で構成される地域の研究会でもoral presentationに選出され、まだまだ道半ばですが徐々に研究成果も出てきています。ニューヨークには多くの大学があり、他業種間の勉強会も盛んです。そのような機会を通じて、生命科学の分野だけでなく他分野の専門家ともできるだけ触れ合い、多方面で自分の考え方を高めていけるよう意識しています。

研究会にて

 生活に関してですが住居はアッパーイーストとイーストハーレムの境にある大学のハウジングを利用しています。治安は非常によく、日本人駐在者も多いエリアなので安心して生活できています。セントラルパークから徒歩5分という、とても恵まれた場所にありますので、散歩、仕事後のランニング、駐在の方と早朝テニスなども楽しんでいます。市内には美しい街並み(すべてがそうでは決してありませんが)、公園、博物館、美術館、動物園など多くの見所があり、また家族向けのイベントも多数行われており、子連れで生活するにも非常にいい環境です。5歳の娘は現地の幼稚園に通いながら言語だけでなく世界各国の分化に触れ、多くの刺激を受けているようです。

 この一年半で多くの帰国する日本人を送りだしました。自分もまだ来たばかりと思っていましたが、残された時間で何ができるのか、あらためて気を引き締めている次第です。この貴重な経験と知識を帰国後の医学研究に活かしていけるよう、残りの期間も努力していきます。

 最後にここに至るまで多くの先生方のお力添えをいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。特に医学生の頃より多くのご指導いただき、希望していた海外留学を後押ししていただいた横手幸太郎先生、大学院研究をご指導いただいた竹本稔先生に心より御礼申し上げます。また温かく送り出していただいたB4研究室の皆様、そして今回の海外渡航に助成をいただきました公益財団法人鈴木万平糖尿病財団の関係者の皆様に感謝申し上げます。