グルタミン代謝の生体内における役割およびその分子メカニズム解明

研究代表者 鈴木 佐和子  千葉大学 大学院医学研究院 助教

研究概略

グルタミン酸は非必須アミノ酸の一つですが、その影響と必要量から現在は必須アミノ酸と同程度に重要と考えられています。我々はゲノムの守護神p53がグルタミン代謝のmaster regulatorであるGlutaminase2 (GLS2)を転写活性化することを明らかとしました。

GLS2はグルタミンをグルタミン酸に変換する細胞内代謝酵素ですが、TCAサイクルを介して好気的エネルギーを産生したり抗酸化作用を発揮します。グルタミン代謝はTCAサイクルだけでなく、糖代謝、アミノ酸代謝ともクロストークする重要な代謝経路ですので各臓器において多彩な生理作用を発揮している可能性があります。

我々のグループではGLS2ノックアウトマウスや各種培養細胞を用いて生体内のグルタミン代謝の役割・疾患との関連性、そしてその作用分子メカニズムにつき研究を行っています。

p53によって制御されるグルタミン代謝調整遺伝子GLS2の同定

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本研究の展望 / 臨床応用に向けて

鈴木 佐和子(研究代表者)
代謝の変化は単に病態に伴う変化ではなく、病態を悪化・発症させる原因にもなることが徐々に明らかとなり、代謝研究は大きく進展しました。グルタミン代謝はアミノ酸代謝の一つとして出てきますが、糖代謝やTCAサイクルに比較するとあまり広く知られていない代謝経路であり生体内における役割はまだまだ未解明です。人と異なる視点で、新しいことを見つけることを目標に研究を行っています。

横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 教授)
鈴木先生は、日常診療の中から生じた疑問を解決すべく、基礎研究・臨床研究の手法を駆使してこれに取り組んでいます。グルタミン代謝を通じた生活習慣病とがんへのアプローチや副腎皮質病変PMAHの病因解析の成果は、内分泌学会や糖尿病学会をはじめ様々な領域で高い評価を得ています。そして何より、自然にご家庭と両立してこれらの仕事を展開されている姿は、内科学におけるダイバーシティのロールモデルだと思います。