診療案内

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肝胆膵外科|診療概要

診療内容

当科は肝臓、胆道、膵臓領域の外科治療を担当しております。これらの領域の疾患は解剖およびその病態が複雑であり、その診療においてきわめて専門的な知識、技術が必要となります。当科は、肝臓、胆道、膵臓疾患の専門施設として、先進の診療技術を取り入れるだけでなく、国内外に新たな情報を発信することで、世界的にも本領域のリーダーの一つとして認められています。

対象疾患としては、まず、悪性腫瘍(癌)があります。この疾患の診断には当院の消化器内科や放射線科をはじめとした他科とも連携しながら早期発見、病態の正確な把握に努めています。悪性肝胆膵疾患は外科切除が唯一の根治的治療であり、血行再建などの高度な技術を駆使して,他の施設では困難な進行癌症例の高難度手術も積極的に施行しております。その一方で、術前・術後化学療法などと外科切除を組み合わせる集学的治療にも取り組み、さらなる治療成績の向上を目指しています。

肝不全、肝硬変、胆汁鬱滞性疾患といった末期肝疾患に対しては、ドナーの安全性に十分配慮して、生体部分肝移植も行っています。また、2014年には千葉県内初の脳死肝移植も施行しています。膵炎、胆石症、胆道狭窄などの良性疾患に対する外科治療も幅広く行っており、良性、低悪性度疾患を中心として腹腔鏡下肝切除、膵切除、胆嚢摘出術も積極的に行い、患者QOLの向上を目指しています。

このように、当科では肝臓、胆道、膵臓疾患における外科診療のエキスパートとして、つねに努力を重ね、技術、知識を研鑽していく一方で、診療に際しては、患者様のお気持ちを十分に反映させた、患者様中心の医療を行うように心がけております。

肝臓

肝細胞癌はB型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎に加え、近年増加傾向にあるNASH (nonalcoholic steatohepatitis )などを背景として発生することが多くみられます。このような慢性肝障害を伴う症例では肝機能がどの程度維持されているかがポイントとなりますが、基本的には、積極的に外科切除を施行する方針としており、再発症例に対しても可能な限り、切除による治療成績の向上を目指しています。一方、切除が困難な場合には肝動脈塞栓療法、肝動脈内抗癌剤注入療法、ラジオ波凝固療法など他の治療法と組み合わせた集学的な治療も行っています。また、転移性肝癌においては大腸癌の肝転移のみならず、胃癌、卵巣癌など異なる原発臓器からの肝転移に対しても積極的な切除により、長期生存例を得ています。大腸癌肝転移の切除にあたっては、切除後再発に対する再切除、再々切除の可能性を考え、実質をできるだけ温存するよう心がけています。一方、両葉多発症例や主要血管浸潤により大量肝切除が必要となる場合もあります。このような症例では切除後の残肝容量をいかに確保するかが治療方針決定のポイントとなりますが、従来の門脈塞栓術、2期的肝切除術、さらには2012年に発表されたALPPS (Associating Liver Partition and Portal vein ligation for Staged hepatectomy)等により残肝容量を術前に増大させることにより切除を試みるようにしています。また、当初切除不能/困難な症例であっても、術前化学療法により腫瘍の縮小を図り切除を行うConversion therapyも行っております。肝細胞癌と同様、再発病変に対しても可能な限り切除を行う方針としており、複数回の切除により長期生存例を得ています。

胆道(胆管,胆嚢,十二指腸乳頭部)

胆道の悪性腫瘍は診断技術の発達した今日においても、進行した状態で診断されることが多く、その解剖学的な特徴から、適切な治療方針の決定にかなり専門的な知識、経験が要求されます。当科は胆道外科治療のhigh volume centerの一つとして、適切な治療戦略と高度な技術により積極的な外科切除を施行しています。広範な肝切除が必要となる高度進行症例においては、術前に門脈塞栓術を行い、術後の致死的な合併症である肝不全を防ぎつつ、手術適応の拡大、治癒切除率の向上を図っています。また初診時には切除不能と判断された進行症例においても、術前・術後化学療法による集学的治療を行い、外科切除率の向上に取り組んでいます。さらに、主要血管に浸潤している症例に対しても積極的に血管合併切除を行うことにより治癒切除を目指しています。その一方で、胆嚢結石症などの良性疾患に対する腹腔鏡下手術などの低侵襲外科治療も行い、患者QOLの向上も図っています。

膵臓

膵臓癌に対する治療には、手術療法、化学療法、放射線療法などがありますが、手術療法が唯一、治癒が見込める治療法です。さらに術後補助化学療法を組み合わせた集学的治療法により治療成績の向上を図っています。一方で、この病気は症状が出にくいため、進行した状態で発見され、切除不能と診断されることも多い疾患です。そのような患者様にも、多施設共同研究による臨床試験などを通じ、新規抗癌剤を効果的に用いることで腫瘍の縮小を図り、さらに血管合併切除などの高度な手術手技を駆使することによる根治的な治療法の開発を目指しており、長期生存例も経験しております。

一方、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)や膵神経内分泌腫瘍(p-NET)などのうち低悪性度の腫瘍に対しては、術後の臓器機能温存を目指した縮小手術や低侵襲な腹腔鏡手術も行っています。

良性疾患である慢性膵炎は内科的治療が中心になりますが、内科的治療に抵抗性の方に対しては、疼痛などの症状改善を目指し、Partington手術やFrey手術などの膵管減圧術や膵切除術を行っています。

肝移植

原発性硬化性胆管炎や原発性胆汁性肝硬変などの進行性肝内胆汁うっ滞症やウイルス性肝硬変などに伴う非代償性肝硬変、劇症肝炎に伴う急性肝不全、肝細胞癌などに対して、生体部分肝移植を施行しています。また、数少ない脳死肝移植認定施設のひとつであり、脳死肝移植にも積極的に取り組んでいます。

腹腔鏡下手術

当院では、患者様の負担の軽減を図る目的で、腹腔鏡手術も積極的に導入しています。腹腔鏡手術とは、お腹に5-12mm大の穴をあけ、腹腔内に挿入した腹腔鏡で観察しながら、病変を切除する方法です。創が小さくて済むので、手術後の回復が早く、また、整容性(見栄え)も良いので、とても患者様に喜ばれる方法です。現在のところ、胆石症などの胆嚢疾患においては、単孔式手術により、これまでの腹腔鏡手術以上に負担の軽い手術術式を積極的に取り入れています。また、腹腔鏡下膵切除、腹腔鏡下肝切除の施設基準認定施設として認められ、膵臓腫瘍(良性、または低悪性度腫瘍)、肝腫瘍の一部に対しても腹腔鏡手術による治療を積極的に行い、患者様の負担軽減に取り組んでいます。

腹腔鏡下膵切除術

当院では、膵臓にできる悪性度の低い膵体尾部の腫瘍に対して腹腔鏡下尾側膵切除を行っております。腹腔鏡下での尾側膵切除は、開腹手術と比べて、体の奥の深い病変での手術操作が行いやすいこと、また、キズが小さく、侵襲を小さくすることができるため、術後の痛みが少ない、術後の回復が早いことから、術後の入院期間が短いというメリットがあります。ただし、高度の肥満、癒着症例など腹腔鏡のみでは不十分な手術になると判断された場合は、必要な分だけ最小限の開腹創を加える腹腔鏡補助下手術を行っています。 これまで18例(2016年3月まで)に行い、合併症では、膵液瘻という膵臓の断端から膵液が流出する合併症(膵液瘻POPF GradeB)を1例(5.5%)に認めましたが、開腹での尾側膵切除の合併症は、一般に10~40%と報告されておりますので、良好な成績であると思われます。また、手術関連死亡は認めておりません。

腹腔鏡下肝切除術

肝細胞癌、転移性肝癌において、一部の術式(肝部分切除、肝外側区域切除)に対して、腹腔鏡下肝切除術を行っております。