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法歯科学(Forensic Odontology)

法歯科学は、歯科学の中でも応用歯科学の社会系学問として位置付けられています。これは医学の中における法医学の位置付けとほぼ同様ですが、法歯科学では、主として法律上の諸問題を歯学の知識を持って解決することや、身元不明死体の個人識別を行うための学問です。

個人識別とは、生体・死体またはその一部分が誰であるのかを識別することです。法歯科学では、歯や骨の形や、歯科治療痕の所見から該当者との異同識別を行ったり、歯に含まれる成分から年齢や性別等を推定したりします。身元判明の意義は警察の捜査上あるいは大規模災害時の事故処理上にあります。変死体や犯罪死体に関しては誰であるのかわからないと捜査が始まりませんし、東日本大震災のように大量の死者が発生した際には、死者数や身元判明率の把握をするためにも身元の確認が必要です。また、法律上の問題として、人が死亡した場合、死亡届を提出し戸籍を抹消する必要があります。しかし、個人識別が必要である最も大きな理由は、死者の尊厳を守るというところにあります。人は誰でも身元不明のまま亡くなるべきではありません。個人を確立することは、その人の、人としての権利を守ることに繋がります。そのために、我々は遺体に残された特徴と、生前の歯科診療録などとを照らし合わせて「その人である」という明確な証拠を探し出し、身元を確定させます。

歯は、人体の中で最も硬い組織ですから、腐敗死体、焼死体、白骨死体など、様々な遺体状況下で長期間残存しているため、歯は個人識別に役立つのです。

法歯科学者の実務としては、上記の個人識別を行うための歯科所見の採取や鑑定書の作成が多くを占めます。また、将来的により確実な個人識別を行うために有用な検査法の研究なども行っています。さらに、現在では数少ない法歯科学者の育成及び大学での教育なども行っています。