病気と検査・治療について

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遺伝性不整脈

QT延長症候群

QT延長とは心電図で認められる異常の一つで、心臓の興奮からの回復期である再分極の異常を反映しています。QT延長があると再分極過程の異常のために多形性心室頻拍を生じることがあり、失神や突然死の原因となりえます。また、QT延長症候群は生まれつきまたは明らかな原因のない先天性QT延長症候群と、薬剤や電解質異常などの何らかの原因によって発症する後天性QT延長症候群に分けられます。先天性QT延長症候群では、病気の発症に関連したいくつかの遺伝子変異が知られており、どの遺伝子に異常があるかによってタイプ分けがされます。そのタイプによって、心室頻拍を生じやすくなる誘因、治療薬、予想されるリスクなどがこれまでに報告されており、治療方針決定の一助となります。遺伝子変異がある場合でもない場合でも、治療の主体は薬物治療ですが、過去に心停止の既往を有している方やハイリスクと考えられる方では、植え込み型除細動器が必要になることもあります。一方、後天性QT延長症候群では、原因となっている因子を除去することが治療になります。

Brugada症候群

Brugada症候群とは、もともと特発性心室細動として考えられていたもののうち、心電図の前胸部誘導でのST上昇とそれに続くT波の陰転を特徴とする心電図波形(その波形をBrugada型心電図と言ったりします)を呈しているもののことを言います。Brugada型心電図は検診でもしばしば見つかることのある心電図変化です。しかし、Brugada型心電図を呈している方の多くは心室細動を生じるわけではなく、実際に心室細動を生じるかどうかのリスク評価が重要になります。不整脈が捉えられていない方では、失神の有無、突然死の家族歴の有無、カテーテル検査で心室細動が誘発されるかなどを参考にリスク評価を行い、治療の必要があるかを決定します。治療は突然死予防のための植え込み型除細動器が主体となりますが、頻繁に心室細動を生じる方では、薬物治療が合わせて必要になることがあります。

特発性心室細動

特発性心室細動とは、上記のような明らかな原因がないのにも関わらず、突然に心室細動を生じるような病気です。原因に対する治療がないため、心停止の既往のある方では、植え込み型除細動器によって突然死を予防することが治療になります。近年、特発性心室細動のうち、心電図にてJ点の上昇(J波)を認める方の割合が多いことが報告されるようになり、J波症候群として注目を集めています。一方で、J波は健常人でもある一定の割合で認められることが知られており、どういった方に心室細動などの致死性不整脈が生じるのかは現在のところ明確にはわかっていません。