留学寄稿

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イギリス留学:バーミンガム大学

宮澤一雄(不整脈研究)

2017年4月より英国ウエストミッドランド州のバーミンガム市にありますUniversity of Birminghamに留学しています宮澤一雄です。留学して1年程度ですが、留学体験記という貴重な機会を頂きましたので、ここに一部ですが紹介させていただきます。

University of Birminghamについて

研究室が併設しているCity Hospital

University of Birminghamは、バーミンガム市の中心に位置し、世界最大の時計塔と言われているチェンバレン記念時計塔を中心に、整備された緑豊かなキャンパスになっています。卒業生または教員から英国首相やノーベル賞受賞者を多数輩出しており、英国でも有数の大学の一つです。私はUniversity of BirminghamのInstitute of Cardiovascular Sciencesに研究員(Research Fellow)として所属しています。この研究室は、NHS (National Health Service) の一つであるCity Hospitalに併設されており、私のような研究員、ポスドク、また大学院生などが在籍しています(NHSはイギリスにおける国営保険サービス (National Health Service) のことで、運営は国費でまかなわれており、原則治療費などは無料です)。

研究室や研究生活ついて

研究室のメンバーで食事会。右手前がLip教授。

私が師事している同研究室のGregory Lip教授は心房細動研究の第一人者で、現在のEuropean Society of Cardiology (ESC) ガイドラインをはじめ、世界中で使用されるようになったCHA2DS2-VASc score (心房細動の脳梗塞発症予測スコア) やHAS-BLED score (心房細動の抗凝固療法における出血リスク評価) を提唱した教授です。研究室には同じようにESCガイドラインの作成者の1人であるKirchhof教授もおり、彼らの名の下に英国のみならず、海外からも多くの研究員や大学院生が集まってきます(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、ポーランド、パキスタン、アラブ首長国連邦、マレーシア、中国、韓国)。私のように年単位で来る研究員以外に、3〜6ヶ月の短期間でも研究に参加しに来る同僚も多く、入れ替わりも激しいです。この研究室ではこれまでに多くの大規模臨床試験が行われており、心房細動に関する研究をはじめ、虚血分野や画像分野での研究も盛んで、有名科学雑誌にその研究成果を多数報告しています。現在、研究室では多施設共同の臨床試験が複数動いており、併設する病院の外来患者や入院患者のリクルートから始まり、その後のフォローアップも研究室にある外来で行っています。臨床研究専任の看護師(リサーチナース)も研究室に所属しており、積極的に外来や病棟でリクルートを行い、研究室はいつも賑やかです。私は、他のフェローと協力して、様々なプロジェクトに参加させていただき、現在はペースメーカなどデバイス植え込みをされている患者さんのデータベース作成に携わっています。日々データの収集と解析を行いながら、Lip教授と議論してどのように研究を進めていくかを決めていきます。また、他にもLip教授からは様々な仕事(論文の査読や、journalのreview articleやeditorial articleの執筆依頼など)の依頼があり、そちらも同時進行で書き進めていきます。慣れておらず時間もかかりますが、たくさんの論文を読むことで自分の研究のヒントにできるので、やりがいを感じながらやっています。日本での生活とは異なり、研究に集中する時間ができたため、研究の進め方や統計を用いた様々な解析、そして論文を書く技術など学ばせてもらっています。週に1回カンファレンスがあり、抄読会や学会発表前の予行が行われ、リサーチグループは月に1回研究の進捗状況を報告します。教授をはじめ研究員も熱心なため、多くの質問が飛び交い、厳しい指摘を受けることもありますが、とても教育的で勉強になります。また、週2回のLip教授の外来に同席させていただき、患者さんの問診や診察などをさせてもらっています。私自身、英語のレベルが高いわけではないため苦労することが多いのですが、とても優しく紳士的な方が多く、周りのスタッフのサポートもありとても有意義な機会となっています。優秀なスタッフや同僚たちに囲まれて、とても貴重な留学体験をさせていただいています。時には研究がうまく進まないこともありますが、フレンドリーな同僚たちが多く、みんなで食事に出かけたり、誕生日パーティーを開いたりして、気分転換をしながら心折れずにやっています。言語の壁や文化の違いなどありますが、このような恵まれた環境のおかげで楽しく日々の生活や研究を進められるのだと感じています。

イギリス、バーミンガムについて

イギリスと言えば、ロンドン、エリザベス女王、サッカーのプレミアリーグ、食事ではフィッシュ&チップスそして、アフタヌーンティーなどがよく知られているかと思います。最近ではEU離脱問題や、ロンドン・マンチェスターでのテロ事件などもあり、心配な出来事もありますが、人々はみんな優しく、特に子供やお年寄り、障害者に対してとても配慮されているのを感じます。食事も最初はあまり期待していなかったのですが、こちらに来てみたらいろんな種類の料理があり、どれもとても美味しくて少し驚いています。
私の来ているバーミンガムは、多くの人にとってあまり馴染みない都市だと思います。産業革命の進展にともない運河と鉄道の交叉点になったこともあり、工業都市として発展した街です。人口や都市の規模からイギリス国内では首都のロンドンにつぐ第二の都市(最近ではマンチェスターも大きくなってきており、第三の都市とされることも)とされており、地理的にはロンドンから北西へ列車で約2時間の距離にあります。中心街は非常にコンパクトにまとまっており生活するには便利な所で、街中に運河が流れているため、天気の良い週末は運河沿いでゆっくり過ごす人もたくさん見かけます。ロンドンほどではないですが、日本人の方も比較的多く住んでおり、家族連れの私としてはいろんな情報を教えていただき、安心して過ごせる環境になっています。国際結婚をして現地で医師として働いている人もいれば、バーミンガム大学に大学院生または研究員として来ている人も多く、様々な業種の人と交流を持てたことも貴重な経験です。バーミンガムの近くにはレスターという街があり、そこのフットボールクラブには日本人の岡崎選手が在籍しており、週末はプレミアリーグを見に出掛けたりすることもあります。またヨーロッパならではかと思いますが、飛行機だけではなく電車でもすぐに隣の国に移動できるので、休みを利用してヨーロッパ観光を楽しもうかと計画しています。

おわりに

まだ留学して1年も経っていないですが、辛いことも楽しいことも色々ありました。留学生活はこれからも続きますが、医師としてだけではなく、1人の人間として多くのことを学び成長できる貴重な機会だと思っています。留学を少しでも考えている方の参考になれば幸いです。

Kazuo Miyazawa, MD, PhD
Institute of Cardiovascular Sciences
University of Birmingham