留学寄稿

ページタイトル画像

アメリカ西海岸留学:OHSU

小澤公哉(イメージングラボ)

2016年4月より米国 オレゴン州ポートランドのOregon Health & Science University (以下OHSU) に留学しており、現在、約7ケ月が経過しました。まだ、短い留学期間ですが、留学記の寄稿という貴重な機会を頂きましたので、一部紹介させていただきます。

OHSUやポートランドについて

Oregon Health & Science Universityの入り口

私の勤務するOHSUは、ポートランドのDowntownに近いSouth Westと呼ばれる地区に位置しております。OHSUには、世界で初めて人工弁(スターエドワーズ弁)を開発したDr.Albert Starrが知られております。現在、OHSUの循環器内科はACC 2012 Distinguished Scientist Awardを受賞したDr. Sanjiv Kaulがトップとなっています。Dr. Sanijv Kaulの専門がコントラスト心臓超音波であるため、同病院では心血管超音波の研究が盛んに行われております。

オレゴン州ポートランドは、人口は約60万人(2013年)で、北米の太平洋岸北西部に位置しており、その中でバンクーバー、シアトルに次ぐ都市であります。「オレゴン州は他州からの転入者の割合が多かった州1位」(United Van Line, 2013年調べ)、「アメリカで住み良い街1位(America’s 10 Best Cities for 2013)」(Movoto Real Estate, 2013年調べ)など、近年全米で注目を集めている都市であります。エコロジー推進のため自転車の愛用者が多く、町全体で自転車に優しい街づくりを進めております。全米最古の広大なバラ園があることから、別名、「ローズ・シティ」と呼ばれ、毎年6月にはローズ・フェスティバルが開催されます。また、消費税がないことも特筆すべき事項です。ダウンタウンでは特に公共交通機関であるバスや路面電車が充実しており、車がなくても生活可能となっております。そして、オレゴン州では法により尊厳死が認められており、同性婚も認められております。

研究室ついて

Jonathan Lindner 教授(写真右)の自宅に招待を受けたときの筆者(左)

私の所属するOHSUのCardiovascular imaging laboratoryではMicrobubbleを用いたmolecular imaging、perfusion imaging、gene deliveryをテーマに、新たな診断や治療の開発を行っており、マウス、ラット、イヌ、サルを用いた基礎研究から臨床試験までの幅広く行っております。私は、研究室のDirectorかつ教授、そしてアメリカ心エコー図学会のVice presidentでもあるDr. Jonathan Lindnerに指導を受け、新規のmolecular imaging、perfusion imagingの評価法の研究を行っております。具体的には、超音波造影剤を用いて、血管内皮細胞、血小板やvon Willebrand factorを標的として動脈硬化や心筋梗塞の分子的な機序解明を目的に実験を行っております。

留学のきっかけは、私は超音波を用いたmolecular imagingは独創的でかつ新規性があり、興味を持っておりました。アメリカ心エコー図学会で私の研究をDr. Jonathan Lindner にWrap-up sessionで取り上げていただき面識を持ちました。その後、コネも無いなか自らアプライをして翌年のアメリカ心エコー図学会で面接を行い新規に受け入れていただくこととなりました。AHA(シカゴ)、Euro Echo Imaging(ウィーン)、ACC(サンディエゴ)などの各種学会でお会いして研究やそれ以外の話をしたことは今でも良い思い出です。日々の実験を行いBossと議論するだけでなく、毎朝7時と12時から行われる循環器内科の教育カンファに出席しております。循環器の基本的な教育内容に加え、私を含めて各フェローは研究内容の発表や抄読会をして指導を頂いております。このように留学先研究室では、日本では体験できない貴重な経験ができております。

留学して苦労したことについて少し述べたいと思います。研究室に所属当初は、動物実験の経験がないこと、英語によるコミュニケーションの壁、さらには大量のオリエンテーションやトレーニングを受けないと実験をできない状況が2ヶ月続き、その間は忍耐の連続でありました。動物実験のトレーニングは予約制ですぐに受講できるわけではなく、テストも実施され合格する必要があり、それをクリアしないと動物の部屋にアクセスできない状況でした。留学4ヶ月目には、Macacaのトレーニングも必要となり、数日間の受講はしたものの英語でのテストが非常に難しくとても辛かったです。そして研究室やOHSUの循環器内科には日本語を話せるスタッフや留学生は誰もいないため、すべて独力の英語で解決しなければなりません。日本人がいればその人を頼ってしまったかもしれないので今思えば、逆に良かったです。

生活について

私の住んでいるところは、ポートランドのDowntownに近いSouth waterfrontと呼ばれている地区にあります。OHSUに行くトラム(ロープウェイ)の駅のすぐそばであり、毎日、トラムに乗って通っております。実験日は朝8時から実験を始めるために、様々な準備が必要であるため5時30分の始発のトラムで出勤することもあります。普段の食生活については、アジア系スーパーで購入できるため、日本食で暮らすことも可能です。ポートランドでの屋外の食事について、値段は1食平均10$程度しますが、大学のCaféや屋台の店などはとても美味しくビックリしました。

おわりに

現時点で、自分の人生プランを総合的に考えた際、留学の機会を得られて本当に良かったと思っております。留学に際して、ご自身の経験をもとにアドバイスをしていただき快く送り出してくださった小林欣夫教授、未熟者の私に手厚い御指導いただいた船橋伸禎先生、そして支えてくださった多くの医局の先輩・同期・後輩、同門会の先生方にこの場をお借りして心から御礼申し上げます。