留学体験記

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カリフォルニア留学:スタンフォード大学

北原 秀喜 (冠動脈疾患治療部)

平成14年卒の北原秀喜です。2011年6月からアメリカ、カリフォルニア州にありますスタンフォード大学医学部循環器内科にポスドクとして研究留学をしております。私が所属しているのはCardiovascular Core Analysis Laboratory(CCAL)とう冠動脈イメージングを中心とした研究室であり、Peter J. Fitzgerald教授と本多康浩先生の下で日々仕事に励んでおります。まだこちらでの生活を初めて5か月あまりですが、留学生活をご紹介させていただきたいと思います。

スタンフォード大学について

スタンフォード大学は、アメリカ合衆国カリフォルニア州スタンフォードにある私立大学であり、サンフランシスコから約60km南東に下った所に位置しています。正式名称はLeland Stanford Jr. Universityといい、大陸横断鉄道の創立者であり元カリフォルニア州知事でもあるLeland Stanfordが、若くして亡くした息子の名を残すため1891年に設立しました。スタンフォード大学は全米1位の敷地面積を誇り、そのエリアはスタンフォード市として学園都市を形成しております。その広さは東京ドーム700個分、千葉大西千葉キャンパスと比較しますと約85個分に相当するとのことであり、規模の大きさには非常に驚かされました。キャンパスには、ロマネスク様式の美しい建築物や教会、大学周辺を一望できるフーバータワー、ロダンの彫刻が立ち並ぶ庭園や美術館、高級ブランド店も軒を連ねるショッピングセンターなどがあり、観光名所としても非常に賑わっております。スタンフォード大学では学問だけでなくスポーツも盛んであり、かつてはタイガーウッズが在学中によくプレーをしていたシリコンバレーでも有数のゴルフコースを備えることでも知られています。また、大学のスタジアムでは秋から冬にかけアメリカンフットボールの大学対抗戦が頻繁に開催され大変盛り上がっております。

大学病院について

スタンフォード大学病院正面玄関

Stanford University Medical Centerは、Stanford Hospital & ClinicとLucile Packard Children's Hospitalからなり、特に循環器・脳神経・臓器移植・癌などの領域で優れた実績を持つ世界的にも有名な病院です。病院の建物は3階建てであり、ベッド数は613床あります。中に入るとホールや待合室、廊下の至るところに絵画や彫刻の美術品が飾ってあり、全体で500点に上るといいます。1階の人通りの多い場所に多くの日本画も飾られており、最初に病院に入った際にそれらを目にした時には驚いたものです。病院の屋上にはヘリポートがあり、救急ヘリコプターが24時間待機をしております。その広い国土のため、ヘリコプターや飛行機を軸とした長距離救急搬送システムが確立しており、救急ヘリはサンフランシスコ湾一帯の半径150マイル(240km)の範囲を担当しているとのことです。実は我々の研究室は3階にあり、その上にヘリポートがあるため、1日に何回も離着陸するのが日々聞こえてくる状況です。
スタンフォード大学は「実学」を重んじる大学と言われており、アメリカにおける死因第1位の心血管死に関わる予防・治療は最も力を入れている領域の一つです。従って循環器内科でも、基礎から臨床における幅広い分野に数多くの研究室が存在しております。病院の2階にあるカテラボには10室の透視室があり、そのうち冠動脈疾患の診断・治療のために通常使用しているのは3室だけですが、循環器内科は年間約800例のインターベンションを行っています。カテーテルチームは、循環器内科の教授でもあるAlan Yeung先生が率いており、日々の診療にあたっております。また、FAME Trialで注目を集めたWilliam Fearon先生を中心として、FFR、CFRなどの冠動脈Physiologyも得意としている分野です。さらに特徴的なのは、心臓移植症例が非常に多いために、移植後Cardiac allograft vasculopathyの評価のため定期的にカテーテル検査を行っており、IVUS・FFR・アセチルコリン負荷などを積極的に行うとともに、それらのデータを利用して多くの臨床研究が進められております。

研究室や病院での仕事ついて

ボスの Peter J. Fitzgerald教授と筆者

1988年に血管内超音波(IVUS)を初めてヒトで臨床応用したPaul G. Yock教授とPeter J. Fitzgerald教授らによって1995年に設立されたのが、私の所属するCCALです。過去に、日本人フェローが数多く在籍してきた経緯があり、出身の先生方は日本全国でご活躍中されております。千葉大同門からはかつて小宮山伸之先生、小泉智三先生も行かれていた研究室です。研究室のメインテーマは冠動脈イメージングデバイスの研究ですが、我々の重要な仕事の1つが、冠動脈ステントに関する臨床試験のIVUS画像を解析するコアラボとしての仕事です。それは臨床使用を始めたばかりのFirst in man試験からFDAの認可が近い比較的大規模な臨床試験まで多岐にわたります。我々の解析結果がそのステントの運命、さらには会社の運命を握っていると言っても過言ではなく、データの管理・報告には最新の注意が払われています。今まで数多くの有名なトライアルの解析に携わっており、例えば近年のDESに関していえば、SIRIUS試験を始め、TAXUS I, II、ENDEAVOR I-IV、SPIRIT IIIなど、4大DESのほとんど全てのIVUS解析を行っております。また、最近ではIVUSだけでなくOCT/FD-OCTを使用した解析も多くなってきておりますし、CTやFFRなどを組み合わせた多角的な研究も行われております。さらには、シリコンでできた人工血管を使ったベンチモデルテストなども行っており、ステント留置に関するさまざまな研究を行っております。
病院での我々の重要な仕事の1つとして、IVUSフェローとしての仕事があります。カテラボでIVUSやOCTを行う際には必ず我々が呼ばれ、画像の記録・保存・ベータベースの作成を行っております。また、さらにPCIの場合はその場で病変の計測・評価をし、オペレーターに的確な情報を伝えなければなりません。治療に直接関わってくるため、責任のある役割を担っていると感じております。医師としてではありませんが、アメリカの実際の医療現場で現地スタッフと混ざって診療の一部に携えることは、非常に刺激的でもあり幸せなことだと思っております。また特殊な例ではありますが、脳外科など他科のインターベンションに呼ばれて、頸静脈のIVUSをやるようなこともありました。画像診断の一部門としてその専門性を生かす機会であり、日本ではなかなかできない経験をさせてもらっております。

シリコンバレーとそこでの生活について

大学周辺は通称シリコンバレーと呼ばれ、アップル、グーグル、ヤフー、ヒューレット・パッカード、インテル、フェイスブックなどの多くのIT関連企業がその本拠を構えております。スタンフォード大学はそれらの企業と強い関連があり、先日アップルの元CEOであるスティーヴ・ジョブズ氏が亡くなられましたが、シリコンバレーも深い悲しみに包まれ、スタンフォード大学では追悼式典が行われました。また、全米のベンチャーカンパニーの半数以上がここシリコンバレーに集まっていると言われております。医療機器会社も例外ではなく、「産学協同」がとても盛んなため、我々の研究室にもさまざまな企業の人が出入りしており、日々新たなデバイスの開発・評価や、臨床研究についての議論が行われております。したがって、そのような新しいテクノロジーを目にする機会も多く、非常に貴重な経験だと思っております。
また、シリコンバレーは日立、富士通、ソニーなどの多くの日系企業も拠点を構える場所です。そのため周辺には日本人も多く住んでおり、いくつかの日系スーパー、ダイソー、紀伊国屋書店などが車で30分以内の場所に点在しており、日本の物はほとんど苦も無く揃えることができます。寿司屋はもちろんのこと、ラーメン屋までが非常に多く存在しているのには驚かされました。またスタンフォードには日本人会があり、さまざまなイベントが催されておりますし、メーリングリストも存在するため、日本人同士で色々な情報を共有することができます。さらにシリコンバレー内の日本人が情報交換をすることができるサイトも存在しています。私も、2台の車、ベッドやソファー、テーブルなどの大型家具は全て日本人からの個人売買で安く調達することができ、生活の立ち上げ時には非常に助かりました。また日本人だけでなく、他のアジアや中南米からの移民が多く、ありとあらゆる場所からさまざまな人が集まってきています。したがって英語が堪能でない人も多く、そのような人たちに対して非常に寛容な雰囲気を受けます。我々日本人にとって最も住みやすい地域の1つといえるのではないでしょうか。

終わりに

こちらで留学生活を経験することによって、自分の専門分野や研究についてだけでなく、日米の医療の違いや文化の違い、言語の壁、家族の大切さなど、さまざまなことを考えたり見つめ直したりするいい機会ではないかと思っております。そしてこの貴重な経験をこれからの自分の人生の糧にしていけたらと考えております。最後になりますが、こちらに留学する際に多大なご助力をいただきました、千葉大学医学部循環病態医科学教授 小林欣夫先生、同門会会長 中村衛先生をはじめ、同医局長 宮内秀行先生、副医局長 舘野馨先生、また留学の際に大変お世話になりました医局の先生方ならびにスタッフの方々にはこの場をお借りいたしまして御礼申し上げます。