研究
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研 究

 

当研究領域では、現在次のような研究に取り組んでいます。

ttl_kenkyuu.jpg行動、代謝、神経可塑性の日周リズムの形成および制御機構

 睡眠・覚醒、運動・休息をはじめとする多くの生命現象は、約24時間周期で増減する時計遺伝子の発現に基づく内在性・自発性の概日リズムを示します。この概日リズムに、明暗サイクル、摂食絶食サイクル、社会的活動等の外的要因が作用して実際の日周リズムが形成されます。行動の概日リズムに異常が見られる遺伝子変異マウスの解析を通じて中枢神経系における概日リズムの統御機構と、学習・記憶等の神経可塑性の日周リズムの形成機構の究明を目ざすとともに、日内摂食時期と摂取栄養素により大きなリズム変動を示す肝臓の代謝系遺伝子の調節機構の解明を目ざします。(担当:岩瀬、有田、玉井、平良、瀧口)

ttl_kenkyuu.jpg神経変性疾患の発症機構の解明

 アルツハイマー病やパーキンソン病などに代表される神経変性疾患は運動機能の低下や記憶障害などを引き起こし、生活の質に大きな影響を及ぼすことが知られています。しかしながらその発症機構には未だ不明な点が多く、有効な治療法が開発されていません。神経変性疾患には危険因子として遺伝因子と環境因子が同定されていることから、それら危険因子の発症機構への関与の解明を目ざし、遺伝子改変ゼブラフィッシュの作成とその解析、また、遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いた環境因子と遺伝因子の相互作用の解析を行っています。(担当:守屋)

ttl_kenkyuu.jpg血管新生制御物質の探索・開発およびその機序の解明

 固形がんは血管新生因子を産生し近傍の血管から毛細血管を生じさせ、これを通して栄養を取り込み増殖します。そのため血管新生の阻害はがんの兵糧攻めによる治療法として、また血管新生の進展により病態の悪化する慢性関節リウマチや糖尿病性網膜症等、血管新生性疾患の治療や予防にも役立つことから近年注目されてます。しかし現在用いられている阻害剤は正常血管の機能維持に重要な血管新生因子VEGFの抗体やその関連分子のみに限られ、障害や副作用が報告されてきていますので、VEGFの抗体とは作用が異なる新たな血管新生阻害剤の探索・開発とその機序解明が急務となっています。そこで血管新生の観察が容易な鶏胚漿尿膜を用い、悪性腫瘍の進展に関わる転写因子および血管新生因子の制御物質を探索しその機序を解析することで、身体に負担の少ない血管新生阻害剤の開発を目ざしています。(担当:芦野)

ttl_kenkyuu.jpg難治性腫瘍である悪性中皮腫に対する遺伝子異常に基づく治療法開発

 胸膜を中心に発生する悪性中皮腫は、外科的切除が困難で抗がん剤に耐性を示す極めて予後不良の疾患です。一方臨床検体を用いた解析によって、同疾患は特徴的な遺伝子変異を示すことが明らかにされました。それはp53遺伝子型が正常ながらINK4A/ARF領域の欠損があることで、その結果p53経路およびpRb分子の機能的消失が悪性中皮腫では生じています。そこで、遺伝子組換え型ウイルスや各種阻害剤等で内因性p53経路を活性化し、同疾患に対する治療効果を得ようとしています。また悪性中皮腫ではHippo経路も遺伝子変異によって亢進しているため、同経路の阻害による抗腫瘍効果やp53経路とのクロストークも検討しております。これらの基礎的研究は、悪性中皮腫の臨床研究に結びついております。(担当:田川、廣島、花園)

ttl_kenkyuu.jpg悪性中皮腫の新たな病理診断法の開発と普及

 中皮腫の診断は臨床情報、放射線画像、生検標本の病理所見、免疫染色の結果を総合して行います。中皮腫と診断された症例には比較的多く非中皮腫例が混入しており、環境省の石綿健康被害救済法による中皮腫の認定率は約90%です。特に、小さな生検標本では病理診断が難しくなります。私たちは、生検標本の免疫染色の結果に細胞の遺伝子異常の検索を加えることにより、正確に診断ができることを明らかにしました。胸水などの細胞診標本でも診断が可能であることを明らかにしました。現在、神奈川県立がんセンターと共同で、新たな中皮マーカーを用いた中皮腫診断法を検討しています。また、中皮腫の診断を普及させるために、「中皮腫瘍取扱い規約」を発行し、環境再生保全機構主催の中皮腫細胞診実習研修会の講師を務めています。(担当:廣島、田川)