千葉大学大学院医学研究院
循環器内科学
千葉大学病院
循環器内科
心アミロイドーシスは、アミロイドが心臓に沈着することで臓器障害を引き起こす疾患です。左室肥大はよく知られていますが、右室・心房・弁も肥厚をきたすことがあります。また心房細動の50%強、大動脈弁狭窄症の約15%、左室駆出率の維持された心不全(HFpEF)の約13%でアミロイドーシス沈着が報告されています1,2。
アミロイドーシスには様々な種類がありますが、ヒトではAL(Amyloid Light chain)アミロイドーシスとATTR(Amyloid Transthyretin)アミロイドーシスが大多数を占めます3。ATTRの主成分であるトランスサイレチンは肝臓で合成されるタンパク質であり、甲状腺ホルモンであるサイロキシンやレチノール(ビタミンA)の輸送を行っています。臨床的には肝の蛋白合成能や栄養状態の指標として使用されます。
このトランスサイレチンは四量体構造を取りますが、それが何らかの原因で単量体へ解離し、更に変性(ミスフォールディング)し凝集することでアミロイドを生じます(図1)。単量体のトランスサイレチンが変性する原因は不明ですが、大きく遺伝性(variant)と加齢性(wild)に分かれ、それぞれ指定難病として認定されています4。
(図1)
2019年にタファミジスがATTR心アミロイドーシス患者のQOLおよび予後を改善させたことが報告され、同疾患は治療可能な疾患として世界的に注目を浴びるようになりました。タファミジスは非進行期の心不全においてより有効と思われることや、本疾患が様々な器質性心疾患の潜在的原因となりうることから、早期診断をめざし国内外でガイドラインやRed Flagが提唱されています3,5,6。
ATTR心アミロイドーシスを疑う端緒は様々ですが、その精査にはストレイン解析を含めた心エコー、心臓MRI、心臓CT検査が有用です。また確定診断には骨シンチグラフィ(probable診断)や組織生検(definite診断)が必要となります。しかしどの病院でどんな検査が可能かは一見しては分かりにくい状況のため、千葉大学病院および関連病院において施行可能な検査の一覧を作成しました(図2, 表1)。皆さまの日常診療において心アミロイドーシスを疑う方がいらっしゃる場合は、このモダリティMAPを御活用いただきつつ、対応可能な病院へ御紹介いただければ幸いです。
(図2)
(表1)
またATTR心アミロイドーシスと診断された場合は、タファミジス適応判断および導入にあたり、千葉県では当院を含めた5施設へ御紹介いただく必要があります(千葉大学医学部附属病院、亀田総合病院、旭中央病院、東京歯科大学市川総合病院、国際医療福祉大学成田病院)。当院ではタファミジス導入医が4名おり、今後更に増員予定です。また心不全専門外来担当医も3-4名おりますため、曜日に関わらず診察が可能です。受診日に関わらず、いつでも当院まで御紹介ください(表2)。
(表2)
1Heart Failure Reviews 2021;26:861–879.
2ESC Heart Failure 2023;10:1896–1906.
3Eur Heart J 2021;42:1554-1568.
4https://www.nanbyou.or.jp/entry/207
5Circulation. 2020;142:e7–e22.
6ESC Heart Fail. 2021;8:2647–2659.
(2024/6/15 文責 岡田)