ご挨拶

発生再生医学教授　斎藤 哲一郎

　私達は、脳がどの様に出来るのかを調べ、再生医学につなげたいと考えています。哺乳類の脳では、ニューロンの再生はほとんど起きませんので、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、それだけにブレイクスルーのチャンスがあると考えています。
　胎児の時、神経幹細胞から多くのニューロンが作り出され、ネットワークが形成されます。その後は、ニューロンを作らない仕組みになっており、損傷などでニューロンが減っても元に戻らず、脳の病気の治癒が困難になっています。このニューロンを作らない仕組みは、神経幹細胞の老化と関係しており、がん化させずに神経幹細胞を若返らせることができれば、新しい治療法に道が拓けます。iPS細胞まで時計を戻さずに神経幹細胞の状態で若返らせる遺伝子の候補がいくつか解ってきました。
　脳は未だに分からないことが多いですが、コネクトームなどの網羅的な解析、オプトジェネティクスやケモジェネティクスなどを用いた新しい手法で膨大なデータが集積しています。機械学習を用い、これらのデータと細胞生物学の手法を統合した新しい研究にも挑戦しています。
　私は、タバコモザイクウイルスという植物RNAウイルスの研究で博士号を取得後、脳の研究を始めました。少し遠回りしましたが、脳を他の人と違う視点で捉えられるのは利点です。多様なバックグランドを持つ皆さんの参加を歓迎いたします。
　今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。