留学だより

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関根亜由美

留学先 フランス国立肺高血圧センター

フランス国立肺高血圧センターへの研究留学を終えて

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私は2016年9月からの2年間をProf.Marc Humbertの下、フランス国立肺高血圧センター/INSERM UMR999の博士研究員として研究留学をさせていただきました。留学先は肺高血圧症の臨床、研究領域では世界を牽引する一大拠点です。現地ではPIであるDr.Christophe Guignabertのラボに配属し、マウスモデルを使用した難治性疾患である特発性肺動脈性肺高血圧症のおもに基礎研究での創薬シーズ探索に従事し、また併せて臨床研究にも携わり忙しくも大変充実した日々を過ごすことができました。

しかし、当初は語学の壁、文化の壁、究極の孤独との闘いなどで大変苦しい毎日でした。滞在していたパリ国際学園都市を中心として世界中から集まる一流の研究者の先生方、現地のフェローや学生達、また同じ日本人の若手ポスドク研究者と出逢う中、公私ともにたくさんの交流を持つことが精神的に大きな支えとなりました。特に、先にご留学されていた神戸大学の谷口悠先生には渡仏直後からご家族ぐるみで大変助けていただきました。また、谷口先生にはその後も当科でのバルーンカテーテル肺動脈形成術治療の立ち上げに深く関わっていただくこととなり、本当に貴重なご縁を結べた出逢いに感謝しております。

滞在2年目に入り、環境に少しずつ慣れ始めた頃からパリでの暮らしを楽しむ余裕を持てるようになりました。現地に住むフランス人との交流も少しずつ広がり、渡仏後にゼロから苦労して学んだフランス語を使って彼らとお互いに励まし合えるようになったことは、今回の留学でのもう一つの成果となったと思います。言語の理解が進み、EU圏内の研究組織体制や医療・社会保障制度から政治経済、哲学・芸術まで、フランス固有の価値観や人々が日々抱えている問題を、実際に現地で暮らして共に体感できたことは大変貴重な経験となりました。

留学が終わりに差し掛かった2018年9月、日仏友好160周年にあたる年でもあり、折しも、史上最大の日本文化の祭典とされた”ジャポニズム2018~響き合う魂~”の開幕にフランス全土が沸き立つ中、ヨーロッパ呼吸器学会の国際学術集会がパリにて開催されました。

日本から参加された医局の先生方を現地でお迎えして皆でディナーを楽しみ、夜のセーヌ川クルーズで輝くエッフェル塔を眺めたこと、田邉信宏先生に留学先の施設でご講演いただいてのディスカッションなど全てが鮮やかに思い起こされます。

この貴重な2年間を通して、日本から常に応援してくださった巽浩一郎先生、田邉信宏先生、当時の医局実務者を担ってくださった寺田二郎先生、伊狩潤先生、川田奈緒子先生、また肺循環グループのすべての先生方に感謝の思いは尽きることはありません。

これまで私を導いてくださった日仏両国の皆様すべてに尊敬と感謝の気持ちを持って「医療と医学の両立ができる千葉大学呼吸器内科」を具現化していけるよう、これからの新しい航海の始まりに喜び勇んで踏み出していきたいと思います。