研修案内

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臨床と研究の基本姿勢

 千葉大学医学部呼吸器内科では新入医局員を随時募集しています。初期研修を終えられた方、呼吸器内科に転向を考えている方など広く入局者を募集しています。高齢化や生活習慣病の増加に伴い、呼吸器疾患は増加の一途を辿っており、呼吸器内科専門医が不足しています。明日の呼吸器診療を担う ScienceとArtの融合を目指す入局者を歓迎します。

Science, Art and Relationshipsを求めて 臨床と研究の基本姿勢

図1. SCIENCE AND HUMAN VALUESの中より
(Bronowski, Jacob. SCIENCE AND HUMAN VALUES .
Harper & Row, New York, 1956.より引用)

 科学ScienceはヒトとヒトとのつながりRelationshipsの下、創造的思考Creative Mindにより造られていくという点では芸術Artです。千葉大学呼吸器内科学教室が創設50周年を迎えられたのは、科学と芸術を大切にしてきたからとも考えられます。
 臨床医学の発展のためには、呼吸器内科の中のみならず、医学部の他講座、日本国内さらに諸外国の人々・文化に対する寛容の心・友好関係 Relationshipsが必要であると考えられます。科学Scienceは人間にのみ可能な特有な創造的過程です(図1)。科学は一つのことが他のこととどのような関係にあるのかを認識する創造的過程であり、この構築のためには友好関係Relationshipsが必要になってきます。

図2. 葛飾北斎のTsunami

 江戸時代の木版画の大家である葛飾北斎 (1760-1849) は、富嶽三十六景の一つとして「神奈川沖浪裏」(View through waves off the coast of Kanagawa:国際語「津波(tsunami)」)(図2)を描いています。ドビュッシーの作曲の題材になるなど海外の芸術家たちに多大な影響を与えた名画であり、単なる風景画の域を超え日本人の心の風景を描き出しているとされています。怒りの大怒濤のさかまく浪の間に、人間の乗る舟のいかに小さく、あぶなげであるか。北斎は逆巻く大浪に対しても、人間の力を強く打ち出そうとしています。それを遠望の富士が静かに見守っているように見えます。それが北斎の心であるとされています。泡立つ大波の白さ、富士の雪の白さ、空の雲の白さ、それらはすべて関係Relationshipsしているのかもしれません。それらに隠されるように表現されている三艘の小舟の漁師は、逆巻く大浪を恐れていないようにも見えます。人間は大自然の中では、不安的なさすらいの旅人であり、本当にちっぽけな存在です。

 千葉大学呼吸器内科学教室は開設以来「不易流行」の精神で運営されてきており、それは継承すべき姿勢と考えています。伝統という精神の中で、時の流れに敏感になり流行を感知し、臨床・研究・教育を継続して来たと認識しています。研究・臨床・教育、どれも一人でできるものではありません。「人の中にありてこそ時は流れる」、非常に良いチームワークRelationshipsで呼吸器病学の中でも広範囲にわたる研究・診療を行ってきました。
 千葉大学呼吸器内科は呼吸器病学ほとんどすべての領域の臨床と研究に関与してきています。今後さらに、「肺循環障害(肺高血圧症など)」、「慢性閉塞性肺疾患COPD」、「アレルギー性疾患(気管支喘息など)」、「睡眠呼吸障害Sleep apnea syndrome(SAS)」、「呼吸不全」、「肺がん」、「びまん性肺疾患(間質性肺疾患)」、「呼吸調節」、「肺感染症」、「漢方医学」の臨床と研究を継続しながら、新たな発展を目指しています。
 呼吸器内科学も内科学の一部であり、その起源はVirchowの細胞病理学が基本的骨格になっています。呼吸器病学のサイエンスとしての始まりは、第二次世界大戦後の呼吸生理学です。この呼吸生理学は、呼吸器の生化学、免疫学、分子生物学へとその領域を拡げてきています。疾患概念の確立、病因の解明、画像診断・肺生検などを駆使した診断学の進歩、治療学の進歩と発展を続けてきており、ポストゲノム医学、再生医学の分野にもさらに拡がりをみせてきています。呼吸器内科学は呼吸生理学を基盤として、その上で生化学・免疫学・分子生物学と発展させていくのが重要と考えています。適切な呼吸器臨床を行っていくためには呼吸生理学の理解が基盤として必要であり、臨床の中での研究としては、その手法として生化学・免疫学・分子生物学を用いるのが望ましいと考えています。

入局後のコース

 呼吸器内科では、伝統的に出身大学による区別は行っていません。入局後(卒後3~5年)は、主に東京都内・千葉県内・神奈川県内・静岡県(関連病院を参照)において、内科研修と並行して呼吸器専門研修を行います。希望によっては、博士課程への進学や海外・国内留学など様々なコースの選択に応じることができます。
 関連施設での研修後は、大学での研修となりますが、多くは大学院へ進学し研究テーマの希望に応じて臨床・研究を行います。大学院へ進学しない場合は、研究生となります。大学での臨床・研究に関しては、診療内容・研究内容を参照して下さい。
 呼吸器内科の医局員は、病院での医療をただ学び実践するだけではなく、学会に参加し発表する、論文を読み自分で考え研究し論文発表する、講演会に参加するなどといった方法で、最新の医療を実践しかつ創造し続けています。
 コースの選択等につきましてはいつでもご相談を受け付けておりますので、気軽に下記までご連絡下さい。

将来展望

 教授挨拶のところにも載っていますが、呼吸器内科専門医は慢性的に不足しているため、関連・関連外施設からの派遣要求が絶え間なくきています。関東の大学では呼吸器内科学教室が少なく、東京都内の病院からも呼吸器内科医派遣依頼が来ております。将来プライマリケア医として総合内科医になる場合も、呼吸器内科を subspecialtyとして持つ内科医は、非常に重宝されます。 また、呼吸器内科領域の研究は日進月歩であり、その研究を押し進めていく人材も必要となっています。

入局のお問合せ

千葉大学医学部 呼吸器内科
千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学
教 授 鈴木 拓児
医局長 重田 文子
TEL. 043-222-7171
内線5471, 5472, 5473