大腸疾患

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炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)

  • クローン病
  • 潰瘍性大腸炎

クローン病

(1) こういう方が手術治療の対象となります

  • 保存的治療(栄養療法、ステロイド、 5-ASA 、免疫抑制剤、モノクローナル抗体治療)によっても小腸、ないし大腸の狭窄症状がよくならない方。
  • 治療に抵抗する(難治性)、瘻孔や膿瘍がある方(図1)
  • 複雑痔ろうやこれによる肛門狭窄のある方
  • 経過中に悪性腫瘍や、悪性腫瘍に近い病変が指摘された方

(2) 手術の基本的方法

  • 狭窄や瘻孔部分のみを切除する小範囲腸切除、ないしは腸を切除しない狭窄の解除術を行います。
    Crohn 病は消化管のいずれの部位でも病変を作る可能性のある疾患ですから、手術治療は狭窄、瘻孔といった症状を取る目的で行うもので、病気そのものを治療するものではありません。病態の再発をふせぐため、手術後も継続的な保存治療が必要となります。
  • 手術前の状態が悪い方や高度の瘻孔形成がみられる方でなければ、手術の傷跡の小さな、腹腔鏡補助下の手術も可能で、有効な方法です。
  • 複雑痔ろうによる直腸、肛門狭窄の強い方では、人工肛門作成が必要になる場合もあります。

(3) 手術の流れ

  • 腸の穿孔による腹膜炎症状がある場合には緊急手術が必要ですが、多くは待機手術となります。したがって、どのような手術を受けるのか、充分に話を聞く時間があります。

(4) 術後の生活や治療は?

  • 狭窄や瘻孔といった症状が再発しないよう、引き続いて保存的治療を行うことになります。日本では栄養療法を中心に行われております。

(5) 手術の安全性は?

  • 年間に10例程度のクローン病に対する手術を行っておりますが、手術による死亡例は当院では過去にありません。

潰瘍性大腸炎の手術治療

(1) こういう方が手術治療の対象となります

  • 潰瘍性大腸炎の重症例(出血、穿孔など)ないしは反復して増悪する方で保存的治療(ステロイドや免疫抑制剤、白血球系細胞除去療法など)に抵抗する病態の方
  • 経過中に悪性腫瘍や、悪性腫瘍に近い病変が指摘された方
  • その他、ステロイドの副作用を持つ方や総投与量が多い方

(2) 手術の基本的方法

大腸の全摘術、ないしは亜全摘術(出来上がりのイメージは図1:回腸 J パウチー肛門(管)吻合)が現在、基本術式ですが、年齢、そして病型によっては直腸を温存する方法(図 2 :回腸―直腸吻合。図 1 より排便機能が温存される可能性がありますが、病変はある程度、残ることになります)を選択することがありえます。稀ですが、これらの方法がとれない場合には、永久的人工肛門となることがありえます。手術前の状態が悪い方でなければ、手術の傷跡の小さな、腹腔鏡補助下の手術も可能です。

(3) 手術の流れ

  • 術前の全身状態にもよりますが、手術は 2 回(ないし 3 回)に分割して行うのが一般的です。手術前の状態のよい患者さんの場合は、1回の手術で終えることが可能です。

(4) 術後の生活や治療は?

  • 多くの方では手術によってステロイドや免疫抑制剤からは開放されます。ただし、肛門のそばにつないだ小腸に、潰瘍性大腸炎に類似した炎症が生じる場合があり(パウチ炎)、その際には薬剤による治療が必要です。
  • 排便機能ですが、直腸をほとんど切除する場合(図1の方法)では、健康なころのように「一日一回の快便」とはなかなかゆきません。大腸が切除された分、便は水様便に近くなります。特に手術して間もないころは、「便意を一定時間、我慢することができない」だとか、特に就眠中の「便の漏れ」を経験する人もいます。術後時間がたつにつれて徐々に軽快しますが、整腸剤などの薬剤を必要とする方は多くおられます。

(5) 手術の安全性は?

  • 年間で10例程度の潰瘍性大腸炎に対する手術が行われていますが、手術による死亡例は過去にありません。