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覚醒剤中毒で認める致死的出血の死後CT所見

現在、国内では死因究明の過程に死後画像(主にCT)を活かす試みが、法医学・臨床領域ともに広く行われております。死後CTにおける死因の検出率は約30%程度と考えられていますが、この30%の中に含まれる脳出血やくも膜下出血の原因が内因死(高血圧や脳動脈瘤破裂)などによるものか、外因死(打撲などによる外傷後の病変)なのかの鑑別は、画像上は時に非常に困難であることはあまり知られていません。日本のように、死後CTをとる際に薬毒物検査を行うことが義務付けられていない国では、こうした外因性の出血死を、内因死として誤診してしまう危険が常にあります。

一方で、覚醒剤中毒などの薬毒物中毒において、ときに致死的な出血性合併症を伴うことが法医学領域では知られていますが、臨床領域ではほとんど知られておりません。さらに覚醒剤中毒でみとめる致死的出血の頻度や全体像、その死後CT所見について調べた研究はこれまでになく、これを調べた結果、当教室の事例においては、非外傷性致死的出血事例の中に無視できない割合(非外傷性致死的出血の90事例中、覚醒剤中毒による致死的出血16事例)の覚醒剤中毒事例が含まれていました。

さらに頭部CT上の所見では、覚醒剤中毒群と非中毒群では、二つの画像所見(正中構造偏位および大動脈弁の石灰化)において差があることが判明し、画像所見上での中毒の有無の判定に有用であると考えられました。

この研究は、死後画像の専門学会である第8回国際法医放射線画像診断学会(ISFRI)において、優秀な研究に与えられる賞(ISFRI Prize)を受賞しました。

担当者:吉田真衣子