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臨床法医学(Clinical Forensic Medicine)

日本において、法医学の主な業務は、亡くなった方の解剖を行い、死因を決定することと考えている方が多いと思います。もちろん死因究明は、法医学の重要な責務の一つですが、広義の法医学は、「法律に関わる医学的諸問題を広く取扱い、これらに対して医学的に公正に判断を下す学問」と定義され、その対象には、我々“生きている人間”も含まれています。

例えば、生きている人間に形成された、ある損傷を巡って、傷害罪などの法的対処が必要となった場合、その損傷が、疑われている成傷器によって本当に形成されたものなのか、形成時期はいつ頃なのか、全治はどの程度なのか、などといったことが争点になる可能性があります。このような裁判などで、問題に成り得る事項に対して、実際に診察を行い、損傷を評価し、医学的根拠に基づく法医学的見地から助言を行うことも、法医学の重要な職務の一つとして挙げられます。そして、その対象は、被虐待児や性的虐待を被った方々の診察、あるいは、車両事故におけるアルコール濃度や、中毒患者における薬毒物濃度の医学的評価など、多岐に亘っています。一方、海外特に欧州などでは、このような臨床法医学は、確立された一つの分野として認識されていますが、日本においては、実務的にも学問的にも、まとまった体系をなしていないのが現状です。

2014年4月より、当部門の設立に際し、我々は、児童相談所と連携し、虐待が疑われる小児の診察を開始しました。さらには、その他の関係機関とも協力・連携しながら、千葉県における体系的な小児虐待診察の確立を目指しています。

今後、これらの活動を通じて臨床法医の実務の確立を図りつつ、学生に対する教育および虐待防止に関する研究などを行い、日本における臨床法医学の礎を築き上げることが、我々の目標です。

(写真は臨床法医模擬診断のようす)