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人体の潜伏感染ウイルスゲノム型を利用した身元不明死体の出身地域推定

身元の特定に至る情報が乏しいために、多数の死体が身元不明のままという問題があります。

日本では年間約1,000体ずつ身元不明死体が発生し、1999年から2008年の間で身元が判明せず身元不明のままだったのは12,853体でした。身元確認は、死体の所持品、顔貌、身体的特徴、指紋、口腔内所見及びヒトDNA型検査などの情報が活用されます。しかし、これらの情報が乏しくて死体が身元不明のままとなることがあります。

そこで、死体の身元特定に繋がる新たな情報収集手段が開発されてきました。これは、人体に長期持続的に潜伏感染するウイルスや細菌のゲノム多型が地理的差異によって違うことを利用した身元不明死体の出身地域推定法です。

これまでに、千葉大学法医学教室では科学警察研究所及び京都府立医科大学法医学教室との共同研究によりJCウイルス、BKウイルス、Epstein-Barr ウイルス、ヘリコバクターピロリ菌、単純ヘルペスウイルス1型、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV) 、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)のゲノム多型を利用した出身地域推定法の開発を行いました。

実際に、VZV、HBV、HCVゲノムを利用した方法を用いて、身元不明死体へ適応したところ、それぞれのゲノム型の地域差による存在比率の違いを計算することで日本か、日本以外の出身者かを区別することができました。

担当者:井之上弘幸