Vol.14 司法解剖に伴う検査経費に関する交渉の顛末と司法解剖の中断
このサイトでも司法解剖に伴う検査経費の件をご報告してまいりましたが、結果から先に述べると、法医学会と警察庁が協議した価格で契約することとなりました。予め提示された価格には明細がないので、価格にあわせて無理やり明細を作ることとなり、多くの矛盾を抱えた契約になってしまいました。特に組織検査については45枚のスライドを作成して1枚5000円程度となる明細なのですが、スライド数の上限を40枚とされるなど矛盾点が多くなっています。
前回、前々回ご紹介したように、千葉県警から数度の打診があり、県警に対して質問状を提出するかたわら、本庁である警察庁に対しても、質問(別紙①)をしました。警察庁からは、衆議院議員事務所を通して文書による回答(別紙②)があり、同時に口頭説明がありました。内容としては、千葉県警の裁量等を認めているものの、事実上、法医学会と合意した内容で契約するよう求めているものです。この回答を承服した訳ではありませんが、これ以上の契約の遅延は、県民の安全にとって好ましくないと判断し、年度内に契約できるよう県警との話を進めました。
しかしながら、土壇場で大学サイドからは、文部科学省からの通達が来ていないとの理由で待ったがかかり、司法解剖は4月1日から4月6日までの間実施困難となり、県内での解剖実施が滞ってしまいました。例年年度末になると、きわめて短い期間で非合理な契約を迫られていますが、今年度末はこのようなことがないようにしてもらいたいものです。
別紙①
警察庁長官
金高 雅仁 様
質 問 状
司法解剖の検査経費等に関する以下の質問について、平成27年3月31日までに文書にてご回答いただくようお願い申し上げます。
- 組織検査については検体数に上限を設ける提案が千葉県警からなされております。鑑定に必要とされる検査等の行為を実施したにも関わらず、それを支払わない場合、余剰に実施した分は大学が負担することになります。これは不法行為となる可能性がありますので、このような上限を設ける提案は本来撤回すべきですが、そのように千葉県警に指導いただけないでしょうか。
- 千葉県警からは警察庁と法医学会で交渉した価格で契約するように要望されております。各法人に一様な価格で契約を締結することについては、独占禁止法などの法律上問題はないのでしょうか。
- 組織検査代は1検体3,000円程度に下げ、解剖基本料に執刀補助などの人件費を入れ十数万円程度に引き上げたほうが合理的と考えられ、千葉大学では、独自に算出根拠を示す準備ができております。法的にもより合理的な契約を結ぶべきと考えますが、そのように千葉県警に指導いただけないでしょうか。
別紙②
司法解剖経費の予算単価等については、日本法医学会との協議に基づき決定し、各都道府県警察に示しているところです。
こうした前提の下、頂いたご質問に対しての当庁の見解は以下のとおりですので、御理解いただきたく存じます。
【1について】
鑑定を行う組織学的検査の標本数については、通常の司法解剖において十分な組織検査が可能と考えられる40枚を目安としておりますが、これを超えて検査する必要がある場合は別途協議することで日本法医学会と合意しており、御質問のように、40枚を超えて実施した鑑定の費用が全て大学側の負担になることはないと考えております。
【2について】
警察庁においては、各都道府県警察が実施する司法解剖経費について、一定の斉一性を確保するため、日本法医学会と協議の上、予算単価等を定め、各都道府県警察に示しておりますが、単にこれらの単価を準用することなく、各機関における検査の実態を考慮した上で適正な価格で契約するよう指導しているところあり、法的な問題は何ら生じないものと考えております。
【3について】
どのような内容の契約を締結するかは千葉県警察の裁量と考えますが、これまでの経緯等を踏まえると、日本法医学会との合意内容と大きく異なる契約は難しいのではないかと考えております。
なお、司法解剖経費の見直しに関する協議は継続して行っており、合理的な方法等があれば、日本法医学会を通じて御提案いただければ検討したいと考えております。