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Vol.19 歯科法医学における歯学教育及び卒後研修等人材育成に関する提言

 私たち「死因究明・個人識別システム研究会」は、去る令和 4年 12 月 18 日、「歯科法 医学における歯学教育及び卒後研修等人材育成の現況について」との表題で第 10 回研究会 を開催しました。その際行われた議論では、死因究明等推進法、及び死因究明等推進基本法 と、それらに基づいて制定された死因究明等推進計画によって、歯科法医学について様々な 前進が図られる一方、いまだに山積する課題は多いとの認識が共有されました。今般、この 研究会から以下の提言を発することといたしましたので、ここに公表します。

  1. 死因究明等推進計画(令和3年6月)において、「歯科法医学の死因究明等に係る分野 を志す者や新たに取組に参画する者を増加させ、その成果の普及を促すこと等」が掲げ られている。文部科学省は、すべての歯科大、歯学部において早急に歯科法医学につい て十分な教育が行えるよう体制の整備をさらに促すこと。
  2. 歯科大、歯学部が存在し、歯科法医学の講座を持つ一定の地域では、学生はもとより、 歯科医に対しても一定の教育が実施されているが、歯科大、歯学部が不在の地域、ある いは、歯科大、歯学部があっても、歯科法医学への取組みが希薄な地域において、歯科 医に対する歯科法医学教育の実態は不明である。死因究明等推進本部及び関係機関は、 これらの現況を調査し、問題があれば直ちに施策を講じること。
  3. ご遺体の歯科所見採取など身元確認の業務は、原則、都道府県警察、警察歯科医及び大 学の関係部署が連携して行っているが、地域によってその取り組みに大きな差異があ る。死因究明等推進本部及び関係機関は、より精度の高い歯科情報の確保に向けて、地 方間格差の是正を図るため、歯科法医学の実務に関する実施状況の調査を行い、必要が あれば施策を講じること。
  4. 歯科法医学教育にせよ、歯科医の行う歯科法医学的実務にせよ、研修による人材育成が 不可欠である。死因究明等推進本部及び関係機関は現在行われている研修を調査し、そ の結果に基づいて歯科法医学研修の指針を定めること。
  5. 予想される大規模災害に備えるため、厚生労働省は、歯科医療機関が保有する歯科診療 情報を身元確認へ活用するための大規模データベースの構築に向けた作業を加速する こと。
以上

令和 5 年 6 月 14 日

死因究明・個人識別システム研究会 会長 岩瀬博太郎
日本法歯科医学会 理事長 山田 良広